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「地味で安全で楽しいF1」2022 rd.4 エミリア・ロマーニャGP F1問わず語り #4(無料)

 (全文無料です)

 F1においてもっとも優先されるべきは安全である。イモラは嫌でもF1の安全性について考えさせられるサーキットだ。
 今日のF1の安全性は多くのドライバーの死によって築かれてきた。2015年に導入されたバーチャルセーフティカーも、ジュール・ビアンキの死をもたらした事故を教訓に導入されたものである。バーチャルセーフティカーは、見ていて決して楽しいものではない。このルールが好きな人はほとんどいないだろう。だが、安全のために重要なルールだ。
 コックピット前方に、下駄の鼻緒のように取り付けられるハロも、ドライバーを守るために必要な装備だろう。少しマシンが不格好になりはしたが、ハロによって一つでもドライバーの命が救われるならば、決して大きくない代償だ。
 だが、どこまで安全を追求するかという問題もある。安全性をつきつめるならF1というスポーツがなくなってしまうからである。

 次にサーキットについて。皆さんはグラベルはお好きだろうか?ランオフエリアのグラベルである。近年のサーキットは、舗装されたランオフエリアを広くとることがトレンドになっている。舗装されていた方が安全性が高いそうだ。だが、それによりトラックをはみ出した方が速く走れることになり、トラックリミットをどう取るかという問題が出てきた。四輪が出てるとか出てないとか言いながらスローVTRで観たりするよりも、はみ出したらグラベルにかかってタイムロスをする方が見ていてわかりやすい。
 イモラは新しくないサーキットで、ランオフエリアはグラベルで狭かった。よって、現在の運用方法では、今GPの予選のように、赤旗連発のテンポの悪いセッションとなってしまう。それを考えると、ティルケサーキットの方が良いのか…。でも、グラベルの方がレースが面白くなると思うのだが、どうだろうか。新しく安全性の高いサーキットも、一昔前のサーキットも混在する今のカレンダーは、もしかしたちょうどよい塩梅なのかもしれない。

 さて、前段はこのあたりにして、エミリア・ロマーニャGPについて振り返ってみよう。

 今年最初のスプリントレースが行われたエミリア・ロマーニャGP。スプリントレースは、是非が未だ論じられているところで、まだ落ち着くところに落ち着いていない感もあるが、週末通じて興味深いGPだったことは間違いない。
 金曜日にフリー走行。土曜日に予選。日曜日に決勝。このスケジュールが身体に染みついてしまっているF1ファンの方は非常に多いだろう。筆者もその一人だ。だから、油断しているとスプリントレースのある週末に、金曜の予選を見逃す危険がある。昨シーズンは予選を見逃す失態を犯した。今年も学習せずに失敗を繰り返すかもしれないが、今GPは、しっかりとみることができた。
 慣れれば、金曜、土曜、日曜と真剣勝負のセッションを観られるという意味で、おもしろいフォーマットだと思う。だが、新しいレギュレーション下、少しでもデータを多くとりたいチームにとっては難しい戦いになるに違いない。

予選

 雨模様となった金曜日。赤旗連発の荒れたセッションとなった。

・赤旗①アルボン、炎上

 最初の赤旗は、アルボンのマシンの炎上によってもたらされた。ブレーキ周辺から火の手が上がり、ホイールがひしゃげてしまうほどの火力になった。ブレーキから出火しパーツに燃え移って、タイヤがバーストする、なかなか見ないシーンだった。

 ついでに、今週のラティフィがこちら。

 存在感抜群のドライバーだが、この週は少し影が薄かった。

・アルファタウリの失敗

 路面コンディションが目まぐるしく変わった予選セッション。先ほど述べた通り、観ている側がおもしろいということは、現場にとって非常に難しいということだ。角田・ガスリーは、アタックのタイミングが悪く、最後に連続でアタックをしたハミルトンにかわされ、Q1突破を逃してしまう残念な結果となった

・赤旗②サインツ、クラッシュ

 F1あるある、「契約延長するとクラッシュする」。
 サインツは流れが良くない。チャンピオンを狙えるチームに所属するからこその焦りが出てしまっているように見える。ワールドチャンピオンは諦めた方が良いかもしれない。
 この中断後、Q2ではだれもアタックに出ず、時間をやり過ごすしかなかった。

・赤旗③ヌッセン、コースアウト

 マグヌッセンのコースアウトで、また赤旗。
 でも、コースアウトした後、自分でタイヤバリアの接触していたように見えたのは、私だけだろうか。

・赤旗④ボッタス、クラッシュ

 めったに予選でミスをしないボッタスが、コントロールを失いクラッシュ。

・赤旗⑤ノリスが続く!

 このあと、セッションは再開されず、フェルスタッペンがポールポジションを獲得、ルクレール、ノリスと続いた。そして四番手にヌッセン。え?

スプリント

・フェルスタッペンの見事なオーバーテイク

 ここまで、面白いレースとなった試しのないスプリントだが、21周見ていてよかったと思わせる最高のオーバーテイクをフェルスタッペンが演じてみせた。タイヤに厳しいレースが続いていたレッドブルだが、イモラで持ち込んだアップデートが効いたのか、先行したルクレールをじっくりと追い詰め1コーナーで見事にパス。これぞF1という見ごたえのあるシーンだった。

決勝

・サインツ、アウト!

 F1あるあるは、あえて繰り返す必要はないだろう。アウトからコーナーに侵入したサインツが、リカルドのマシンと接触。グラベルにつかまり、早々にリタイアとなった。砂にはまってリアホイールを空転させるF1マシンというのはなんとも切ないもの。ワールドチャンピオンの夢は遠ざかった。
 現在、チームランキングトップを走るルクレールだが、チャンピオンシップ争いにおける懸念材料はサインツだろう。ペレスという頼れる相棒のいるフェルスタッペンとの一騎打ちになるに違いないが、形勢はあまり良くない。

・今話題のセーフティカー

 世界で最もあおり運転を受けている車はなんだろうか。セーフティカーである。しかも煽ってくるのは、プリウスでもヴェルファイアでもなく、F1マシンである。見たところ「ドライブレコーダー録画中」のステッカーは貼られていないが、間違いなく録画中だ。
 このセーフティカー、特にアストンマーティン・ヴァンティージが遅すぎると評判だ。4リッター535馬力のスーパーカーをつかまえて、遅すぎるとはF1はやはりすごい世界だと思わせられる。確かに、タイヤが冷えればリスタート時の危険は増す。だが、プッシュしすぎてセーフティカーがクラッシュすれば洒落にもならない。セーフティカードライバーも大変な商売だ。

・焦るのはまだ早い

 盤石のレース運びをするフェルスタッペンに対抗する術のないルクレール。ソフトタイヤを履きファステストの1ポイントを奪いに行ったが、オーバードライブでコースアウトをしてしまう。まだまだ先は長い。

・最高のレースをした角田

 表彰台に上がったノリス、4位のラッセルに匹敵する素晴らしいペースを刻んだ角田。そして、パスが難しいイモラで鮮やかなオーバーテイクを披露した。

 ガスリーとの仲がギクシャクし始めてからが勝負である。

 周はこのレース本当に目立たず15位に終わった。そして、セブも本格的に戻ってきた。

 次戦は、マイアミGP。日本時間朝方のレースとなる。

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