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知らぬが仏

■膵臓の異常


20代の頃一度指摘された膵臓の異常。近所の内科診てもらい何だかはっきりしない軽い炎症があるとかで薬を飲んでいました。その後結婚出産で忙しくなり、自覚症状がなかったため定期的な通院はしなくなりました。

30代後半。夫と娘との3人暮らしにも慣れた頃、今住んでいるところの近所の病院に行った際、若い頃に膵臓に炎症があると言われたことなどを話すと、画像検査を勧められました。以前よりも精密な検査だったため動揺。最初に指摘された時から10年以上経っているので、検査が進化しただけなのか、はたまた何か前より悪い兆候があるのか、それとも病院のお金儲け?など考えをあちこちに飛ばして不安を紛らせました。
検査の結果は、以前別の医師から言われたこととほぼ同じ内容。「これ」といった大きな悪いところがあるわけではないが、膵臓の酵素値が全般に高い(ちょっとずつ)。膵臓の形もぽってりしている(ちょっと小太り)。炎症を大きくしないように薬を処方されました。今も毎日の服薬と定期検診を継続しています。これだけ病院に行かねばならぬのだから何かしら病名があるのだろうと思い質問すると、「うーん。病名…まあ、炎症がねちょっとあるし、ほっとくのもね良くないと思うのよ」とのこと。よくわからないけど、過敏にならず、「体質」の一種だと思って付き合うことにしました。

■新しい画像検査機器


50代になり、同じように服薬、検査を続けていましたが、コロナ禍で少し検査の期間が空き、久しぶりに検査を受けると機器が新調されておりました。ちょっとワクワクしながら、検査を済ませ、医師からの説明を聞く。特に変化は見られないと言われホッとしました。
のもつかの間医師は、その後もなかなか画面から目を離さず、前の画像と見比べたり、拡大したり…。マウスは、せわしなく動きつづける。私からは、先生の横顔しか見えず、画面は見えない(見てもわからないけど)彫りの深いエキゾチックな目元がときどきキッと鋭くなったようにも見える。長い!長すぎる沈黙。なんかぞおおーっとしてきた。この沈黙が続いたら椅子から転げ落ちるかもしれない。
すると医師がやっと口を開いた。「血管腫も大きくなってないし、画像を見てくれた人から子宮筋腫の事も指摘されてるけど、まあ、これも前から変わってないみたいだし……」

し、子宮筋腫!?初耳なんですけど!!

呆然とする私をよそに医師は、また画面を食い入るように見つめ、時折
「ふーん、うーん」と少し高めの声をもらす。
私は、思い切ってきっちりと口に出す(さっきのは心の声)
「子宮筋腫のは、話は、は、初めて聞くんですけどぉ」
すると医師は、画面をこちらに向けて説明してくれました。
「ほら前に撮ったとき、チロッと写ってるのこれがそうなんだけど、今回は、機械が変わって、広く撮ってるからしっかりと写ったみたい…で…」
要約すると、50代ならよく見られる程度のものでごく小さいサイズ。
閉経すれば大きくなるリスクもなくなるので、心配ない。とのこと。
ホッと胸をなで下ろしました。

■最新機器と古びる身体


検査機器が進化すると見えなくてもいいものまで見えてしまう。でも私の身体も医療の知識もこの先進化しないと思います。
これからも最新機器に何かが写る度に医師が口にする様々な恐ろしいワードに一喜一憂し、ドキドキヒヤヒヤするのでしょう。

そんなとき頼りになるのは、やはり人(医師)。
医師がデータや事実だけを淡々と伝えるだけだったら、どんなに不安だったことでしょう。私の担当医は、慎重さと親身になってくれる優しさの持ち主。専門家としての知識と経験から日々の過ごし方や心構えもアドバイスしてくれます。おかげで安心して帰宅できました。
ありがとうございました。

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