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《その壱 》小説『AP』刊行記念! “テレビ業界のリアルな裏側“プロデューサー対談 角田陽一郎(バラエティプロデューサー)×植田博樹(ドラマプロデューサー)

元TBSプロデューサー・角田陽一郎がテレビ業界に生きる人たちをリアルに描いた青春お仕事小説『AP アシスタントプロデューサー』。その刊行を記念して8月31日に代官山蔦屋書店にて、現役TBSドラマプロデューサー・植田博樹氏を迎えてテレビ業界のリアルな裏側やテレビタレント・俳優・アイドルなどのマル秘エピソード、これからのテレビドラマの可能性などを語り尽くしました。その時の模様を(できる限り頑張って!)掲載致します!

角田)僕の4つ先輩の植田パイセンです。僕は元TBS出身なので。

植田)知ってます(笑)

角田)植田さんよろしくお願いします。植田さんは今までどんな作品を?

植田)『ケイゾク』とか、最近だと『リコカツ』とか、ちょっと前だと『SPEC』とか、北川悦吏子さん(脚本)の『Beautiful Life』『オレンジデイズ』、あと木村拓哉さんの『GOOD LUCK!!』とか。

角田)今、配信されているZoom画面見てたんですけど、植田さんずっと目線が動かないですね。僕きょろきょろしてて、ドラマとバラエティの違いだなと思いました。僕は多動症のようにいろんなところに目が行っちゃってる。

植田)その方が立派だと思う。

角田)でも見てるとなんかかっこ悪いですよ。

植田)いやいや。テレビマンとしてはぼんやりと一点を眺めているのは「終わった人」みたいでよくないよ。死んだ目してたね。

角田)ドラマの巨匠って無口で、いつも何考えてるのかな、みたいな感じの方が多いじゃないですか。

植田)おれ、巨匠じゃないもん(笑)(と短パンと安いTシャツ姿で立ち上がる)

角田)なんで短パンなんですか?(笑)

植田)短パンが最近デフォルトなんです。

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植田PのAP評

角田)話したいことは沢山あるんですけど、まずは、小説『AP』の刊行記念なので・・・。
植田)おもしろかったですよ!本当に!本人を目の前にして言うのは恥ずかしいし、恥ずかしいだろうけど。

角田)恥ずかしいですね(笑)

植田)ドラマのAPさんって職人の人が多いんですよ。年いってる方も多いし、若いAPさんも割と仕事、仕事、仕事という感じで、ノーメイクとか、服も着たきりな感じで。労働環境が良くないのはあるんだけど。でもバラエティのAPさんは、こういうとあれだけど、僕は「かわいい」が売りの人と仕事バリバリの人と二極化してると思ってて。特にドラマ部に番宣担当で来るAPは、何言われても「いいよいいよ」と返しちゃうようなきれいどころが、多い気がするんだよね。

角田)それをバラエティ側は見越してるんじゃないですか?ドラマと違ってバラエティは翌々日のキャスティングも決まってないことがあるじゃないですか。

植田)ゲストのキャスティングってAPさんがやるんだ? 驚き。

角田)APがかわいい女の子だと、マネージャーさんに夜に電話をかけてもゆるされる子もいて、やりやすいんです。そういう人を配置しておくと番組を作りやすいのはありましたね。

植田)僕もめちゃくちゃかわいいAPさん2人とラインを交換してて、その人から深夜に「あの作品の映像使っていいですか?」って来て「いいよいいよ」って返した。そうしたら「メール送りますから映像使用許可にサインして送り返してください」って来て、夜中の2時なのにな、みたいな。

角田)26時ですからね。普通にありますよね。

植田)テンション高くなる。しょうがないな(嬉)みたいな。

角田)レコード会社の局担もかわいい子多いじゃないですか。かわいい子が資料持ってきて「今度新人が出るんです、使ってくださいね」とか言うと、みんな使っちゃうんだと思います。

植田)その場で聴いちゃおうかなー、みたいな。

角田)「いいねこのCD!」みたいな。

植田)チャラいなー。今日はちょっと巨匠感を出そうと思って来たのに、ハラスメント的にはダメなことばかり言ってる。

角田)『AP』はどんなところが良かったですか?

植田)TBSの社内のあの人が、このキャラクターのモデルなのではと思うところもあり、読みながらすごく楽しんだ。もうひとつは、角田君が書いてるのに主人公が女の子で、女の子の生活がすごくディテールに富んでいる。フィクションの部分もスムーズに流れてる。テレビ業界の人がああいう業界のものを書くとだいたい自分の話になるんですよ。なのに、エンタメ性を確保しつつ、リアルな部分をざっくり突き刺してる感じがした。
なぜ角田君は自分を主人公にしなかったの?

角田)自分が主人公だと数字がとれない。若い女の子が主人公のほうがいいかなと。

植田)それさ、やらしいこと聞くけど、ドラマ化とかちょっと考えて女の子にした?

角田)考えてますよ!

植田)考えてる!やらしいなあ。
俺ちょっと原作権取りに行こうかと思った。

角田)本当に!全然大丈夫ですよね? (編集さんに)編集の方が大きく丸を出してますよ。
小説って売れないじゃないですか、今。売れるためにはドラマ化、映像化、アニメ化しなきゃだめだなと思った。そのときに主人公が女の子じゃないとだめだろうなと思ったんです。

植田)イメージキャストはあるんですか?

角田)上米プロデューサー、現実世界ではAさんという…クレイジーな方。

植田)『ぴったんこカン・カン』でかえるの中に入ってた人ですね。

角田)『うたばん』とか作ったり。『うたばん』モー娘。に×××やらせるみたいなヤバい演出をやってた。今はTBSの取締役ですもんね。もう偉くなっちゃたんですけど。

植田)TBSの取締役ってあんなにクレイジーな人がなれるんだなって、驚いたけど。

角田)バラエティで唯一尊敬している師匠なので。

植田)僕もAさんはマジで尊敬してます。本当にクリエイターだなと思ってます。

角田)『AP』というドラマはこういう話題性が作れるし、お互いこういうメリットもあるし、というのをちゃんと作れればいいかな。というのを計算して、一番最初に思ったのが、主人公は女の子。だから女の子は広瀬すずちゃんでも、永野芽郁さんでも、どなたでも。ドラマのプロデューサーが当たると思う方でいい。

植田)主人公魅力的だよね。

角田)嬉しい!

植田)やりたい女優さん多いんじゃないかな?
バラエティーのAPさんという設定のいいところはずっとAPでいることだよね。ドラマのAPってプロデューサーになる人も結構いるから。あとドラマのAPはドラマになるような面白いトラブルとかエピソードがあんなに沢山ない気がするな。

角田)僕は逆にエピソードがまだまだ眠ってて。ロケのときにある俳優さんにモーションかけられて大変だったという僕の後輩のAPのネタとかたくさんある。海外ロケとかもっとあるじゃないですか。だから本当に僕『AP』ってドラマを主人公の女の子が40歳になるくらいまで続けたい。で、海外ロケを映画版にしちゃえばいい。協力してもらえるプロデューサーがいないとできない。

植田)じゃあぜひ!

角田)やった!愛の告白を植田パイセンにするためにここに来てますから。

植田)普通にラインで言ってくればいいじゃん。

角田)年功序列なところで育ってるじゃないですか。大先輩で、大ヒットメーカーなわけですから。

植田)年功序列だけど、角田君は僕にとって『永沢君』というドラマを撮ってもらった監督だから。そういう意味でいうと後輩というよりはむしろ、監督ですよ。『永沢君』をやるってなった時に、それを聞きつけたAさんが会いに来たのかな?こういうのを撮らせるんだったら、角田に撮らせないかという話をしに来てくれた。「Aさんのご推薦だったらぜひお願いします」と言って、どうドラマを作る人か、どうコントを作る人か、そんな実績は何も聞かずに現場に来てもらった。

角田)ちゃんとドラマを撮ったのはあれが初めてだったのでワクワクした。

植田)ものすごく的確な演出をするなと思って、サブの後ろの席で眺めてた記憶があります。

角田)その後緑山でお食事して、植田さんから「ドラマのように撮るんだね。もっとバラエティのように撮るのかと思ってた」と言われたのを覚えてますね。

植田)もっと台本じゃなくて、コントっぽい感じでいろんな仕掛けをしていくのかなと思ったら、さくらももこさんの書いてくれた台本に従って割と適切にというか。

角田)その前に『げんげ』という映画を撮ってるんですよね。それはバラエティっぽく撮ってたんです。ところが実際編集してみると、むしろカット割りをきちんとやって、ちゃんとカメラの位置を決めて台詞をやってもらったほうがおもしろいんです。それをバラエティのときはそんなに気づいてなくて、ちゃんとやっておもしろいのを表現するってこういうことなんだって初めて知った。なので『永沢君』でもそれをやってみたかった。

植田)そのときにこの人はいずれ映画を撮ればいいのにと思った記憶はある。その頃から多岐に渡る活動をしてらっしゃるけれど、角田君と組むとしたらそういう映像なのかなと思っていた。

《その弍へ、つづく。》


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