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#012 本屋、カツオくんになりたい

Radiotalk『架空の本屋ラジオ』
#012 本屋、カツオくんになりたい ←ここから聞けるよ!

『架空の本屋ラジオ』
第12回をお届けいたします。
いらっしゃいませ、ごきげんよう、えまこです。

今日は早々に本題に入ります。
このあいだもやりましたけど……

3月19日きょうの本屋

仕事の話をしていきます。
今日はPOP(ポップ)に関わることをいっぱいやりました。
POPっていうのは、まぁご存じの方がほとんどじゃないかと思うんですけど。
販売促進のための、手描きの宣伝カードみたいなものです。
これを専用の、なんていうんだろう、クリップみたいなものとか? に挟んで掲示したりとか。
近くに貼りつけてやってお客さんの目を引こうとしている、スタッフの努力の結晶です。
結構頑張って描いているので……
たぶんどこのスタッフさんでも、POPを見て買いましたとか、面白かったですとかっていうようなお話があると、結構嬉しいと思います。
POPを見て回るっていうのも、本屋のひとつの楽しみ方かもと思うので、次、ちょっとお立ち寄りの際には注目してみてはいかがでしょうか。

今日は、パソコンでちょっとエラーが出て、デジタル系の・情報処理系の業務がほぼできなかったということもあって、一生懸命アナログのほうのお仕事をやっていたんですけれども。
それでちょっと、初めてこのお店でPOP描きの仕事をしました。

このあいだラジオで話題にした『夕張再生市長』と、
童話屋さんっていう出版社さんから出ている『日本国憲法』、それから『あたらしい憲法のはなし』。
これらは『政治・経済』のほうの棚に新しく入れた本です。
童話屋さんについては、私出版社さんそのものがとっても好きなところなので。
出してる本もみんな素敵です。
いつか、ちゃんと『童話屋さん回』のラジオを配信できたらいいなぁと、思っています。

それから、一応『自己啓発』というか、そっちのほうに置いてみているんですけど。
幡野広志さんていう写真家さんがいらっしゃいます。
この方の著書を二冊置きました。
『なんで僕に聞くんだろう。』、それから『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』、この二点です。
これもPOPを描いてちょっと貼り付けてみました。

うちのお客さん層にこれらの本がどれぐらい響くのかっていうのはわからないんですけれども……
お客さん層にぴったりこない本でも、切り口によって興味を持たせることはできるだろう、ということの試みがPOP、ていうことでもあります。

これは著者の皆様・出版社さんには申し訳なく、お客様方にも「えっ?」って思われるかもしれないんですけど、出版不況とか言われている昨今でも、一日に200タイトルぐらいは新刊が出ているそうです。
それが全部入荷してくるっていうわけではないけれど、日々入ってくる本を内容まで読んで全部読んで把握してるっていうのは、いち書店員にはものの量的に無理です。
なので、読んでない本のPOPも描く。知らない本もおすすめする。っていうことが、実は本屋の仕事でもあるっていう。
これ、結構むず痒いんですけど。

でも、知らないなりに不誠実なおすすめにならないようにっていうタイプの努力はしています、し、やっぱり、これは読んでから書かなきゃっていうものもあったりすると、自分で購入して読んでみたりっていうこともします。

結構頑張って注文して入れたつもりの棚が、やっぱりまだ歯抜けのスカスカの状態なので……
今POPつけたこれらの本は全部表紙を見せて、要するに本棚で面積を使って展開しているんですけど。
もうちょっと、まだ、だいぶ本が入りそうなので。
またちょっといろいろ、注文してはPOPをつけて展開する、みたいなことをやっていこうと思っています。

今日は私以外のスタッフさんともPOPの話が結構出ました。
今日シフトご一緒だった方は、ご自分で自腹を切ってカラーペンのセットを買ったりとか、イラストの描き方の本とかを買って読んでみたりとか、かなりお勉強されていて。
すごい、まじめで偉いなぁと思って。
私もう、あるものでなんとかする以外の考えがない。
偉い、本当に。
なかなか、すごい、まじめな方ですね、本当にね。尊敬ですわ……

なんかこう、色合わせがちょっと苦手とかっていうお話だったので……
私ちょっと、たまたま通ってきた学歴の中で、カラーコーディネーターの資格の勉強をしなきゃいけなかったっていう時期があったので。
色の知識ってそのときに得たものがあるんですけど。
「こうやって覚えるといいですよ~」とかって、色相環の説明とかしたりしました。

そんなふうに今日は、POPまみれの・POP作業まみれの業務の一日でした。

そして帰り際、店長ともそんな話になりました。
なりましたというか……
POPっていうよりもちょっと大きくて、「吊り看板作れないか」っていう話になったんです。
吊り看板ていうのは、私も言われてやっと「あ、これのことね」ってわかったんですけど。
こう、A4判とかB4判みたいな、そういう定型ではなくて、横に細長い看板で、穴が開いてて、紐をつけて天井からぶら下げてるっていう。
名前の通りなんですけど。
実際に今、お店にひとつ吊り看板があって、あそこにあるあれの、次のフェアのものを作りたいっていう。
それで、吊り看板作れないだろうかっていう質問の意図が、なんとなくわからなくて。
作り方とか、途中経過の作業の様子がどうであれ、あのかたちに落ち着けばいいんだったら、サイズと内容を教えてもらえれば別に誰でもまぁ作れるんじゃない? っていう感じだったんですけど。
わざわざ私にそうやって聞くっていうのは何だろう、と思って。

私は本屋さんの他に家でやってるお仕事があって、それで『illustrator』と『Photoshop』を使うんですね。
で、そのことはWワークにあたるので、面接のときに店長にお話をしてあるんです。
それで、どうもその、家のデザイン設備を使って作れないだろうかっていう意味を含んでいたようなんですね。
「吊り看板作れないか」っていうだけの言葉の中に私も何となくそれを察してしまって。
で、それは趣味でやってるんならまぁいいんですけど。
一応仕事としてやっている以上、そして本屋の業務の時間の外で・家でやる仕事である以上、別料金が発生しますよっていうことを伝えたんです、けれど。
何も私、不当な要求しているわけではない。
一応それを仕事にしている人に頼むっていうことは、プロに仕事を依頼するっていうことにあたるわけで。
なので……プロにタダでやれっていう話って、普通に考えてないわけですよね。
でも、実際に言われて「別料金が発生しますよ」って言うときに、やっぱちょっと冗談めかしてというか、笑いながら「えぇ~っ、別料金かかりますよ~っ」っていうような言い方を、どうもしてしまった。
心の弱いアレですけど。

やっぱ、こう、はっきりと区別をしがたいものですね。
何も私、間違ったこと言ってないと思うんですけど、なんかやっぱり……

でも本屋の拡材を作る・販売促進のための看板を作るっていう作業は本屋の仕事ではあって。
本屋のスタッフなんだからその仕事をするのはまぁ給料の範囲内だよねっていうのはわかるんですけど。
でも、うーん。
だからって持ち帰って、私が別の仕事のために用意している、個人的な設備を使って、その図面作って来いって、その仕事の、プロのクオリティで作って来いっていうことに、まぁ、言葉を無理矢理分解していくとそうなるわけなので。
ちょっとこれは、あの……なんですかね。
私が本屋の仕事を好きだからといって、それを盾にこう、搾取してはいけない。
これがいわゆる、やりがい搾取的なアレですかね。
私ドラマ見てなくて、原作も読んでなくて知らないんですけど。
この、店長に私が悪意をもってそういうふうに今愚痴っているつもりではないんですけど。
たまたま自分の身に実際にこういうことが起きて、「あ、なるほど、これはなかなか言い返しにくい」っていうことを経験したっていう、素直な驚きの話なんですけど。

やっぱ、なかなか……
デザイン職とかイラスト職とかっていうのって、こう、趣味との線引きみたいなものとか……
気軽に頼めてしまう感じっていうのが拭えないんでしょうかね。
気持ちはすごくわかります、料金設定とかもなんか、難しいですからね。
なんかそんなことがあったんですけど、これからまぁ、どうなるんでしょう。
とりあえず設備は持ってますよっていうのと、別料金ですよっていうのは伝えてはきました。
ご理解いただきたいところです。
これが仕事になったら私としては万々歳なんですけど(笑

そして思ったわけですね。

「カツオくんになりたいなぁ~……」って……

カツオくんは、『サザエさん』に出てくる彼ですけど。
もう、あの、自分のやったことに対する対価を率直に求められるあの姿勢とか、ちゃっかりと稼ごうとしても「カツオったら!」って言われておでこコツンとかされたら許されてしまうあの愛嬌とか、本当に羨ましいなと思いました。
でも、今のこの世の中ってこういう事案がいっぱい起きてて。
だから、求めるほうの人は、カツオくん精神を自分の中に持っていればいいんだなぁって。
心の中にひとり、カツオくんを。
そんなふうに思いました。

3月19日のきょうの本屋でした。
ご来店ありがとうございました。
またお会いしましょう。
えまこでした。

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