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BtoBセールス(大手食品・飲料メーカー向け)について:Vol.2

前回のVol.1では、以下の順番で話を進めました。
1.EC化比率
2.生活者はどこで食品・飲料を買っているのか?
3.TV CMの意義
4.メーカー内の動きとタイミング

今回のVol.2では、こちらの流れで進めます。

5.Case:ある担当者の悩み
6.コンビニ・スーパーに押し寄せる波
7.メーカー担当としての生き残り戦略

※前回に続き、表記上メーカー、流通、バイヤーと敬称を略させて頂いております。

5.Case:ある担当者の悩み

メーカーブランド担当視点では、売上UPの為には、ECでは無く「店舗」が主戦場という現状をお伝えしました。
もう少し具体的なCaseとして、ブランド認知率が高い200円程度の架空のチョコレート「超チョコ」担当という仮定で話しを進めます。

超チョコは全国6万店のコンビニの内、4.2万店で商品が売られています
(配荷率70%)。また、1店舗1日当たり平均10個売れているので、
4.2万店舗×200円×10=84百万円/日、
コンビニのみで年間で約30億円の売上の商品です。

そもそものミッションが前年対比10%成長でしたので、今年はコンビニで33億円売らなければなりません。
直感的にイケると思いますか?

6.コンビニ・スーパーに押し寄せる波

イチ生活者目線でコンビニに行くと、「セブンプレミアム」「ローソンセレクト」という商品を目にすると思います。
これらはPB(Private Brand)と呼ばれ、流通・小売業者よって企画販売される製品ブランドのことです。これに対し、メーカーが自社商品に付けるブランドはNB(National Brand)と呼ばれます。
セブンプレミアムはPBの中でも特に顕著で、お菓子、総菜、パン、そして冷凍食品まで店舗の中でどんどん勢力を拡大しており、食品の約50%に達する勢いです。

そして、その棚には以前までメーカーの商品(NB)が置かれていたのです。

超チョコは昨年は4.2万店(配荷率70%)でしたが、仮にセブンの超チョコ棚が全てPBに変わると配荷が4.2万店→2.8万店に、売上は1日84百万円→56百万円に減少します。

店舗に商品を置いてもらう棚を取る為に棚取営業をメーカーの営業担当が行い、TVCMが棚取商談の最も大きな武器になっているとVol.1で述べました。

TVCMという数億円の「投資」によってコンビニだけで年間30億円の売上を取っていた「超チョコ」ですが、PBによって棚から追い出された場合、その「投資」の合理性は成立しません。

7.メーカー担当としての生き残り戦略
ここで「超チョコ」担当としてのどう戦略の舵を切れば良いでしょうか?

1.大手コンビニのPBとして、店頭に並べてもらう
2.「棚を取る」が主目的のTVCMをやめ、新たな広告・販促手法をとる

1.に関して、メーカーにとってのPB化するメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット:
・大量のロットで安定した売上が見込める(確実に棚が取れる)
デメリット:
・PB商品として採用される確率が低い(倍率が高い)
・PB商品が打ち切りになった場合のダメージが大きい(棚から一斉に消える)

2.に関して、そもそも数億円~数十億円のTVCMが棚取商談で最重要項目である理由は、流通(店舗)バイヤーに「TVCMをするので、これだけ認知が拡がり売れる」ことをアピールする為でした。バイヤーからすれば、「坪当たりの売上」という厳しい目標がある為、売れない商品を並べている余裕はありません。

では、「〇〇をするので、これだけ認知が拡がり売れる」の〇〇は、TVCMだけでしょうか。

最近のタピオカブームもTVCMがあった訳ではありませんし、HIKAKINが大塚家具で大量買いをしYouTubeに投稿したら大塚家具の売上が上がりました。SNSキャンペーンの結果、学生向け炭酸飲料の売上が大きくUPもした事例もあります。

2019年には日本の広告費の内、TVCMをインターネット広告が追い抜くと見られています。

そして現場では、〇〇の手法と売上が上がる事例は沢山生まれています。こういった事例が更に創出され、店舗の若いバイヤーに対して説得力のある指標になった時に「棚取営業にはTVCMが不可欠」という臨界点が突破され、広告の予算投下先にも大きな地殻変動が起きると考えていますし、その変動の中で先頭を走っている会社でいたいと考えています。

最後に、BtoBセールス(大手食品・飲料メーカー向け)について、として架空のメーカー担当者目線で綴ってきました。

セールスにとって最も重要なことは、「お客様のワクワクとヒリツキにシンクロすること」だと考えています。
この商品・ブランド戦略のどこにワクワクしているのか、社内目標や競合、業界構造のどこにヒリついているのか。
ヒリツキ部分は、外からは見えづらく、ネットにも情報として転がっていません。私が様々なメーカー担当の方々から得た一次情報をまとめることで、広告・販促業界で新しい価値・事例の創出と、顧客であるメーカー様の課題解決に1ミリでも貢献できれば良いなーと思い、このnoteを終えます。

長文を最後までお付き合い頂き、有難うございました。




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