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04_ゲームモデル作成のプロセス ~ビルドアップ編~

こんにちは。シアター生の加國です。

いつも記事をご覧いただきありがとうございます。今回は少しこれまでとは視点を変えて、私が現在担当している、広島大学体育会サッカー部のBチームのチーム作りについてお話していきます。

なお、今回の記事では、内容を説明するための動画のリンクも掲載しております。ぜひご覧ください!

▶動画のリンク先: https://youtu.be/e8FmbCeNFSs


着任当初のチーム状況


まず初めに、私がBチームの担当になった当初のチーム状況をお話しします。


私が担当する前のBチームのサッカーは、いわゆる「蹴って走る」サッカーでした。ポゼッションを放棄してでも試合に勝ちに行く。難しいことはせず、ロングボールを蹴った後に徹底して2ndボールを拾いに行く。局面、球際をとにかく闘う。

Aチームと比べても、決して技術に秀でた選手が集まるチームではなかったので、ある意味妥当なサッカーだったかもしれません。事実、その年のリーグ戦では過去最高成績を残しています。自分たちに与えられたタスクを愚直に、集中を切らすことなく取り組み続ける姿勢に関しては、今でも確実にチームに根付いている素晴らしいものです。

04_i2集合写真

一方で、選手の成長を考えると、私は物足りない一面があるのではないかと考えました。もちろん、何が成長と捉えるかは人それぞれですが、私は、技術・戦術的な面で成長してほしいと考えました。

技術が足りない、を言い訳にせず、トレーニングからきちんと積み上げていき、その上で、試合の流れや相手の形、特徴を見ながら戦っていけるチーム。

個人としては、いわゆる、サッカーが上手くなっていく感覚を味わってほしい。そんな希望を抱きながら、私のトレーニングは始まりました。


最初に取り組んだこと


着任してからのトレーニング計画は、私の頭の中ではすぐにイメージが固まりました。

まずは、チームとしてどういう戦い方を目指すのかを全体に共有すること。その中でも、特に組織的攻撃・ビルドアップの局面を整備していくことからスタートしようと考えました。


なぜ、組織的攻撃、かつビルドアップの局面をトレーニングすることにしたのか。

1つは、先ほども述べたように、Bチームはそれまでのコーチのもと積み上げてきた守備にある程度の自信を持っていたからです。

リーグ戦においても相手は格上ばかりで、その中でどうやって勝ち点を拾っていくのかを考えた時に、守備を強固にすることが現実的との判断だったのでしょう。守備が計算できることで、ある程度攻撃に偏ったトレーニングをすることができました。私は、組織的な守備を整備してくれた前コーチの方に今でも感謝しています。


そして理由の2つ目は、選手にとって一番成長が感じられやすい局面が、ビルドアップの局面だと判断したからです。

例えば、最初にフィニッシュ・崩しの局面をトレーニングすることもできたと思います。そうすると、その局面にフォーカスしてトレーニングしているのですから、ある程度は成長するとは思います。

しかし、いくらフィニッシュ・崩しのトレーニングをして成長したとしても、そもそもそれを発揮できる場面が訪れなければ、試合でその成果を確認することはできません。

ましてや当時のBチームは、相手にボールを持たせた上で、粘り強く守備をし、カウンターから1点をもぎ取りに行くようなチームでした。そういった当時のチームの状況を踏まえ、まずは自分たちでボールを握ることからチャレンジしようと考えたのです。


たとえミスから失点してもいいから、今まで前線に大きく蹴りだしていたシーンで、勇気をもってパスを繋いでみることにチャレンジする。

ボールを受けることを怖がらず、ボールホルダーに対してきちんと顔を出し、パスコースを作る。まずは、そういったマインド作りから始まりました。



チーム全体にプレーの原則を浸透させる


では、具体的にどのようにビルドアップを整備していったのか。


まずは、チームとしてボールの動かし方のイメージを共有することから考えました。その上で重要だったのは、

「相手の1stラインに対して数的優位を保つこと」
「DFラインから味方の頭上を越えるロングボールの回数を減らすこと」
「門を見つけ、そこにボールの出口を作ること」

の3つの原則です。順番に見ていきます。


まずは1つ目の「相手の1stラインに対して数的優位を保つこと」

この原則を導入したのは、選手の技術レベルを考え、安全確実にボールを動かすことが最優先だと判断したからです。

数的優位の中でビルドアップすれば、万が一ボールを奪われたとしてもすぐさまプレッシャーをかけることができます。

04_ビルドアップ解説①(数的優位)

そういったある種の「保険」をかけつつ、「失っても大丈夫だから、とにかくボールに関ろう!」「チャレンジしよう!」といった声掛けを繰り返し、選手が勇気をもってボールに関われるようにしました。


次に2つ目の、「DFラインから味方の頭上を越えるロングボールの回数を極力減らすこと」。

これに関しては、トップチームに精度の高いロングボールを蹴れるCBがいることで、それを見たBの選手たちが同じようなプレーを選択しがちだった状況を変えたいとの意図で導入しました。

ロングボールを多用することによるデメリットは、思い通りに飛距離が出なかったときに、落下地点付近に味方選手の密度を上げることが難しく、2ndボールを回収した相手選手にプレッシャーをかけられないことです。

すなわち、カウンターを受けるリスクが非常に高いということ。それを避けるために、できるだけ長い距離のパスを減らし、短い距離でパス交換をすることでミスの確率を軽減すると同時に、失った後のリスクを最小限に抑えようと考えました。


最後に3つ目、「門を見つけ、そこにボールの出口を作ること」

これは主に、パスの経路を選手にイメージさせるために導入しました。

「門」とはすなわち、相手選手2人の間のこと門の数だけ、その間に立たせる選手を配置する。そして、ビルドアップの際には門に立つ選手とのパス交換を繰り返す。その意識をひたすら、選手には植え付けました。

04_ビルドアップ解説②(門)


原則を導入した結果とは?


これまで、私が現在のチームを担当するようになって導入した原則を紹介してきました。その原則は基本的に今も変わっていません。むしろ、いくつかの練習試合を経て、より自分たちのチームとしての目指す姿が明確になり、ブラッシュアップされてきている印象があります。


振り返って思うのは、当時は本当に手探りの状態でしたが、すごく選手の現状にも見合っており、それでいて選手を成長させるにはベストな原則だったと思います。原則を導入したことで見えた良い現象をいくつか紹介します。


まず、ビルドアップにチャレンジする過程において、ボールロストの数は特に初期のころは多かったのですが、そこからの失点の数は本当に少なかったです。1つ目の原則を選手が忠実に実行してくれた結果だと思います。


他にも、3つ目の原則である、「門を見つけ、そこにボールの出口を作ること」を導入したことで、「相手を自陣側に引き寄せ、背後にスペースを作るビルドアップ」を意図的にできるようになりました。

これに関しては最初からこの形を狙っていたわけではなく、偶然その形が根付いたといった方が表現としては正しいのかもしれません。ですが今となっては、相手のプレッシングをはがし、相手のDF-MFライン間に縦パスを入れる形はチームとして共通認識が持てるレベルにあると思っています。

04_ビルドアップ解説③(疑似カウンター)

04_ビルドアップ解説③(疑似カウンター②)


そして、ボランチの選手のボールタッチの回数が増えたことで、ボランチの選手の判断力が飛躍的に伸びたと思います。

今まではロングボールのこぼれ球を拾うというタスクをこなすだけで、あまりビルドアップに関わることのなかったボランチの選手が、今となってはビルドアップの中継地点となり、自信をもってボールに関われています。何より、ボールを欲しがるような声が飛び交うようになったのが印象的です。


まとめ


さて、今回は私が現在担当しているチームの、ゲームモデルの作成のプロセスについて、初期段階だけですがお話しさせてもらいました。

最後にこれまでのまとめとして、私のチームの試合でのプレーを交えた、ビルドアップにおける原則の説明動画のリンクを共有します。興味のある方はぜひ、こちらからご覧ください!(冒頭に紹介したものと同様です)

▶動画のリンク先 : https://youtu.be/e8FmbCeNFSs


次回は、組織的守備の局面、その中でもプレッシングについてお話ししようと思います。私の中で、プレッシングをかける時にどのようなことを考えるのか?整理した上で、皆様にお伝えしていこうと思います。ぜひご覧ください!!



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