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研究主任って損な役だよな・・・そんなことない!その4(職員研修でジグソーリーディングの巻)

 私が勤務する中学校では、職員会議の後30分程度のミニ研修を行っています。夏休みの職員会議では、前々からやってみたいと思っていた「ジグソーリーディング」をやろうと思い、研修を組んでみました。それが試行錯誤の上、たいへんうまくいったので、覚書します。

ジグソーリーディングについては以下のリンクからどうぞ。

今回研修で読む本は以下のリンクからどうぞ。

1.準備その1


最初の計画ではこのような感じでした。

(1)市の教育委員会の訪問で「教師主導型の授業が多い」という指摘を受けた
(2)じゃあどうしたらいいのか?そもそもなぜ教師主導型はまずいのか?
(3)学習指導要領前文や令和の日本型教育の話を行い、社会が「予測不可能なことにも協同しながら解決を図ることのできる人材」を求めていることを説明
(4)そのためには、協同学習、探求学習、個別最適な学びなどが必要だ
(5)じゃあ、どうすればいい?いい本があるのでジグソーリーディングで読みましょう。
(6)グループは5人グループで、A~Eさんを決め、Aさんはその本の1章を読み、Bさんは2章を読み・・・とする。
(7)もとのグループに戻ったら、Aさんは自分のグループに戻り、1章にどんなことが書かれてあったか、説明をする。以後その繰り返し。
(8)最後に、この本のどんなところが納得できたか、納得できなかったか、新たな問いが生まれたかについて協議

という順番でした。しかし、私が信頼する前研究主任や嫁(大学教員)に「この研修上手くいくと思う?」と聞いてみると、「多分学びは生まれにくい」「あまりうまく行かなさそう」という感想・・・マジか・・・。

問題点は以下の2つ。
(1)時間がなさすぎる
 「ミニ研修は30分程度に収めたい」といつも考えています。今回は夏休み  なので少し長くして45分ぐらいかなと思っていましたが、嫁曰く「これだと90分ぐらいの内容だよね」。
 時間がなくて、駆け足で研修を行い、尻切れトンボになるのは悪い研修の特徴。何とかもっとシンプルにしたい。
 嫁からも、「ジグソー法を紹介して体験してほしいのか、この本を全員で読んで参考にしてほしいのか、新学習指導要領の前文や令和の日本型教育の紹介をしたいのか、もっと焦点化すべき。何でもかんでも盛り込みすぎ」との指摘。たしかに欲張りすぎた。

(2)学びが起きづらい
 (1)と密接にかかわることだけど、あまりにも盛り込みすぎているために、ただ活動を追うだけになりすぎて、受講者の先生方に「考える余裕」がなく、学び取る時間がなさすぎるので、「学び」は起きないのではないかという前研究主任の指摘。むむ・・・たしかにそうかもしれない。

2.準備その2


 というわけで、嫁といろいろ協議した結果、次のように計画を組みなおしました。

(1)市の教育委員会の訪問で「教師主導型の授業が多い」という指摘を受けた
(2)じゃあどうしたらいいのか?そもそもなぜ教師主導型はまずいのか?
(3)教師主導型ではなく、今、協同学習、探求学習、個別最適な学びなどが必要だ
(4)じゃあ、どうすればいい?いい本があるのでジグソーリーディングで読みましょう。
(5)グループは5人グループで、A~Eさんを決め、Aさんはその本の1章を読み、Bさんは2章を読み・・・とする。
(6)もとのグループに戻ったら、Aさんは自分のグループに戻り、1章にどんなことが書かれてあったか、説明をする。以後その繰り返し。
(7)最後に時間が余れば、新学習指導要領の前文や令和の日本型教育を紹介する。

 改善点は以下の通りです。
(1)まず長々とした説明は省き、活動から始める。
 いきなり難しい説明(新学習指導要領の前文や令和の日本型教育の紹介どうたらこうたら)から始めるより、「みなさん、こんないい本があるので読んでみましょう!」とすぐにジグソーリーディングから始める。そもそもこの前に職員会議をしているので、先生方は話を聞くことにうんざりしているはず。

(2)予備知識の共有化
 活動して、本を読むことにより、ある程度「協同学習、探求学習、個別最適な学び」について知っている状態(レディネスが高まっている状態)になります。そうすると、新学習指導要領の前文や令和の日本型教育の説明がもっと腑に落ちるはず。

(3)読む本の量を少なくした
 本来は章を丸ごと読む予定でしたが、時間がなさすぎるので、章の中で特に読んでほしいセクションを2つぐらいに絞り(全部で12ページぐらいでA4裏表で3枚程度)読んでもらうことに。これなら10分で読み、大事な点を拾う活動も無理なくできる。もし、その本に興味をもち、「もっと読んでみたいなあ」となれば儲けものぐらいの気持ちでやりました。

3.研修の実際

 さて、いよいよミニ研修の当日。うまくいくかなあと心配でしたが、予想以上に先生方が研修に意欲的に参加してくださいました。若い世代が多く、また採用試験前だったということもあり、研修意欲の高い状態だったことも、要因かもしれません。時間が余ったらやろうとした「新学習指導要領の前文や令和の日本型教育」の説明もでき、うなずきも見られたので、先生方にもすとんと落ちたようでした。

 気を付けた声かけは以下の2つでした。
(1)説明は自分の言葉で
 本の紹介をするタスクを与えたわけですが、本で使われている専門用語をそのまま使っても伝わりません。少なくとも自分の中でこなれた状態にしなければ、説明は伝わらないでしょう。できるだけ簡単な分かりやすい自分の言葉で説明することを求めました。当然グループで「これってなんて説明したらいいんだ」などのやり取りが生まれ、グループでの話し合いにつながったようです。
(2)説明は自分の思いや体験を添えて
 本に書かれたことにはできるだけ自分の思いや感想、またそれにかかわる自分の体験を添えてもらえるようにとお願いしました。

 私自身「グループ学習」と「協同的な学び」の違いが分からなかったのですが、ある理科の先生がこんな例を挙げて分かりやすく説召してくれました。

「例えば理科の実験で、A君は実験する人、B君は器具を持ってくる人、C君は記録をする人、と分担する。これはグループ学習。でも、いろいろな白い粉末の薬品が混ざった状態になったものを渡して、『これに何の薬品が入っているか知るためにはどんなことをしたらいいだろうか』という発問をする。そのグループがああでもない、こうでもないという知恵を出し合い、問題解決に向かって動き出す。グループになるってことで学びのレベルが一段増すみたいな状態。これが協同的な学びじゃないかな。問いや発問が大事だよね。」

つまり、グループ学習では個々の学びは高まらない、でも協同的な学びでは、話し合いなどをすることによって、一人だけの学習では高まらないような部分で、学びが成立している状態なのかなと感じました。

4.研修後


 研修が終わってみて、多くの先生方から「いつも以上によかったよ、いい研修だった」とのうれしいお言葉をもらいました。前研究主任からも「すごく改善されてたね~」と。やったね!



 2年目の先生が研修中にこんなことを言っていました。「この本に書かれていることは理想論ですよね。自分には難しいかもしれません・・・。」

 すると、同じグループの年配の先生がこんなことをアドバイスしてくれました。

 「今日研修したことは、今すぐはできないかもしれない。でもこれで君の心の中には『フック』ができた。今までは聞き流していた研修や普段の生活のいろいろな経験が、その『フック』に引っ掛かって『あ、これってそういうことなのか』と気付く場面が必ずある。だから今日学んだことで無駄なことはないよ。」

 こんな学びが生まれることも研修を行う醍醐味です。




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