「個別最適な学び」をやってみて雑感 その2

令和5年度に集中して取り組んだ「個別最適な学び」についての雑感その2です。

生徒に学び方を丸投げするのは乱暴すぎる

個別最適な学びっぽいものに、テスト勉強があります。定期テスト前や受験が近づくと、自分がやりたい勉強をやっていいぞ~と生徒に指示を出し、生徒はワークやプリントを好きなように解いていくような授業です。

しかし、これでは学びの孤立化が進み、学校で勉強する利点がありません。もちろん周りの友達が勉強しているので、自分も勉強しやすい雰囲気の中で学習できたり、自分がわからない問題があれば気軽に教師に質問できたりするという利点はありますが、学校でなくてもできます。

そこで大切なのが、学び方を学ぶ場面が大切ということです。ドリル学習をするときは、こんな風にしていったら効率的だよ、やりやすいよ、リスニングの力を高めるためには、こんな風に学習していったらいいよという学習方法をある程度体験させ、その上で生徒が自ら選択して学習するというやり方のほうが、生徒が取り組みやすいのではないかと、今年度何度か個別最適な学びを実践して感じたことです。

ある時、単語を一生懸命練習しているA君が「何回かいても覚えられない・・・」とつぶやいていました。私がたまたまそのつぶやきを耳にして、「どんな感じで覚えられないの?」と掘り下げてみました。この対話がとても大事だと思います。A君は「単語が覚えられない」という問題は抱えていることを自覚をしているものの、どんな練習をしていて、どんな間違いが多いのかといった細部に関しては自己理解していない場合が多いのです。その生徒は「何度も同じ単語を書く」ということを何度も行い、自分でテストしてみるという工夫をしていましたが、定着率が悪くて苦労しているようでした。

すると、その取り組みを周りで聞いていた生徒が、「分かる~俺もそうやってるけど全然覚えらんない!」と私とその生徒との対話に加わってきました。途中で加わってきた生徒はこんなことを言いました。

「でもさ、単語をまずは発音できるようにするとちょっと覚えられたよ」

その発言をきっかけに、他の生徒たちも、自分はこんな感じで単語を覚えているという学習方法の意見交換会のようなものが始まりました。私は司会みたいな役割で、どんどん発言させていきました。単語の学習方法についての授業が自然発生したような形です。

単語を覚えることが苦手なA君は、単語が覚えられないのは自分だけではないという事実を知るとともに、単語を覚えるためにいろんな工夫ができるのだなということを知ることができました。これは学校でないとできないことなのかなと思った出来事でした。

この「学び方を学ぶ」ということについて、教師から意図的に全員に体験させることが大事だし、生徒同士の情報交換をすることが大事なのではないでしょうか。


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