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(ホラー短編小説)「霊安室」

とある日の事だった。東京にある総合病院の若い女性看護師・内野山喜美は夜・ナースステーションで勤務をしていた。
内野山は仕事熱心で、患者からはとても愛されている存在。だが幽霊やオカルト系などはあまり信じておらず、病院にいる間も何度か怪奇現象に遭遇したが、何も気にせずに勤務をこなしている。
だが、最近は昼勤務だが同僚の都合により、夜勤勤務が多くなっていた。正直それでも、別に怖くもなんともなかった。幽霊など出てこいって思う、とても強気の性格でもあった。
すると、看護師主任の星田がやってきて

「喜美ちゃん、ちょっとごめん。カルテ作らなきゃいけないから、霊安室巡回に行ってくれる」

「いいですよ」

自分は笑顔で言った。星田もとても仕事熱心で時には厳しいが、優しさは日本一と言ってもいいほど。主任は一番忙しいため、こういう頼まれごとは日常茶飯事だ。それでも特別嫌ではない。逆に喜んでやるほどだ。
霊安室巡回は名前の通り、病院の地下にある霊安室に異常がないか見に行く仕事だ。これは元々前の主任が担当していた仕事だったが、急な都合で辞めてしまったため、今は現主任の星田が担当している。
何故この仕事が出来たのか、それは簡単な話。怪奇現象が多発しているからだ。霊安室のドアを中からノックする音や女性の霊を見たという目撃情報があるため、この仕事が出来たのだ。
自分はエレベーターに乗りながら

「はぁ。何が幽霊よ、バカバカしい」

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