見出し画像

(超短編小説)「いきつけの喫茶店」(#2000字のドラマ応募作品)

大学生の自分にはいきつけの喫茶店がある。その名は「ポアロとアポロ」。なんともシャレてるのか、それでもないのか分からない店だが、自分はここに4年間通っている。
今日は友人を連れて行こう。ここには行きつけにしか分からないこともあるため、少しいきつけならではの特権を自慢したい。
そう思い、自分はとある日の大学の教室にて

「なぁな。今日空いてるか?」

自分が声を掛けたのは、同期で親友の男性・たくやだった。こいつは俺と話も合うし、趣味も山登りと同じなため、入学したその日から仲良くしている、親友の名に相応しい男だ。
すると、たくやは笑顔で

「なんだよ。また山か?先週富士山登ったばっかりじゃないか」

「いや違うよ。今日腹減ってるだろ?ちょっと行きつけの喫茶店紹介してやるよ」

自分は少しドヤ顔で言った。すると唖然としているたくやは

「そんなカッコつける前に、歯に海苔ついてるぞ?」

自分は少し戸惑いながら

「は?マジで」

するとたくやは笑いながら

「嘘だよ、騙されたなぁ。よしお前の奢りな」

「はぁ?お前・・・まぁいいよ」

最後は少し微笑みながら言った。まぁこいつなら奢ってもいいかなと正直思ったから受け入れたからである。
これはたくやにとって、親友ならではの特権かもしれない。たくやはいつの間にか外で待つと言い、教室を出ていった。
でも行くとするならば、もう一人必要だなと思い、自分は斜め前に座っている女性・みゆに声を掛けることにした。

「あの」

するとみゆはこちらに振り向き、優しそうな笑顔で

「なんですか?」

心が一気に持ってかれた。彼女はこの学校ではマドンナ的な存在で、ファンと言われる男性も多いほどだ。
何故この女性に声を掛けたかと言うと、実は前にたくやの紹介で知り合った女性でもあり、ある意味知り合い関係ではあった。
自分は少し緊張をしながらも

「あ、あの。良かったら一緒に喫茶店とか行きます?自分行きつけの店があるんですけど」

当然断られるものだと思っていた。するとみゆは笑顔で

「はい。私、喫茶店とか大好きなんです。私とかで大丈夫ですか?」

全然大丈夫ですと大声で言いたかったが、こんなデカい教室の中で大声で言うわけにはいかない。そう思い笑顔で

「は、はい。もちろん」

自分はみゆを連れて、教室を出る。
何となくわかった。他の男子が俺を見ている。何せマドンナと一緒に歩いているからだ。下手すれば殴られるかも、何故かそれを思いながら外に出た。
すると先に待っていたたくやが驚きの顔をして

「え?みゆちゃん?」

みゆは笑顔で

「たくやくん久しぶりね」

たくやは自分の方を見て

「なんでみゆちゃんがいるんだよ。超嬉しいんだけど!」

何故俺よりたくやが興奮しているんだと、少し嫉妬が生まれたがそんなこと気にせずに、3人で「ポアロ・アポロ」に行くことにした。

数分歩いた場所に「ポアロ・アポロ」がある。雰囲気は昔ならではの建物で、何本の綺麗なチューリップが前に咲いている。そして看板は「ポアロ・アポロ」と大きくはないがシャレた文字で付いている。
それを見たみゆは笑顔で

「こういう喫茶店、私の好みに合っている」

と何故か見惚れながら、中に入っていく。自分はたくやに

「ねぇ。みゆさんが喫茶店好きだって知ってた?」

「知ってるも何も、有名な話だよ」

と平然と言って中に入っていった。自分は心の中で思った

(知らんかったの。俺だけかい!!)

さっきの興奮を返してくれと思ったが、そんな暇はない。すぐに自分も中に入る。
本当ならここでマスターとシャレた会話をして2人を驚かせたい。
そう思ってマスターを見ると、何故かみゆと笑顔で会話をしており、先に席に座っているたくやの隣に座り

「おい。なんであんなマスターと仲良く話してるの?」

するとたくやが笑顔で

「お前嫉妬してるのか?お前らしいな」

最後は笑いだした。自分は少しキレながらも

「笑い事じゃないよ」

「わりぃ冗談だよ。あのマスター、みゆちゃんの親戚のおじさんらしいぞ。ここに店出しているって知らなかったらしいけど」

「はぁ?!」

自分は思わず目が飛び出しそうだった。まさかの知り合いどころか親戚の店に来てしまった。
これはカッコつけ出来ないし、必ずそんなことしたら失笑されるだけだ。ここが草原なら叫んでいるところだ。
するとマスターの男性が自分に

「おっまさきくん。よく来たね」

するとみゆが自分に

「もしかして、ここがまさきくんの行きつけの店なの?」

「そ、そうだよ」

もはや自慢のじの文字も出ない。これ以降行きつけという言葉をカッコつけて言わないようにしようと心の中で決意した。
思わずため息をつくと、たくやが

「気まずいだろ?あとで2人で映画見に行こうぜ。俺おススメの映画あるからさ」

自分は少し微笑みながら頷いた。
やっぱり親友は心の助けになる、大事な親友ほど捨てるもんじゃねぇなと心の中で思いながらも2人はしばらく滞在してから、みゆと別れて、人気の映画を見に行くことにした。

今日は最高の日になりそうだ。

~終~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?