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【展示】怪談物のつくりかた ー 役者の芸と仕掛けの世界 ー

 2023年4月22日(土)、国立劇場に行く機会があり、裏手にある「伝統芸能情報館」にも入って来ました。ちょうど4月22日から企画展『怪談物のつくりかた ー 役者の芸と仕掛けの世界 ー』が始まっていました。今年の8月20日(日)までの開催です。入場無料。

■はじめに

 展示の監修は、法政大学教授の横山泰子さんでした。Wikipediaなどによると、横山さんは日本文学研究者、日本近世文化学者とあります。江戸時代の怪談などに詳しい方のようです。
 私はこうした舞台ものの展示を見ると、作品(今回は「怪談」)のストーリーに目を向けてしまいがちなのですが、展示の題目にあるように、今回は「つくりかた」に主眼が置かれていました。配布されていたチラシでも「役者の芸」と「仕掛け」について、記載されています。以下、少し気をつけてメモを残したいと思います。

■展示の構成とメモ・感想

◇第1章 舞台をつくる人々 ー 役者と作者

(1)演出について
・観客を怖がらせる夏芝居が成立したのは江戸時代後半の文化文政期 (1804~1830年) ことだそうです。
・役者を上から吊って飛行するように見せる「宙乗り」、舞台で本物の水を使う「本水」 、 同じ場面で短時間の内に替わってみせる 「早替り」 などが例として挙げられていました。
・歌舞伎初心者の私も、「ケレン」と言われる演出方法には関心があり、確かに、怪談物では多そうだなと思いました。

(2)役者と作者について
・初代尾上松助 (松緑)については、『天竺徳兵衛韓噺』(巨大な蝦蟇)、『彩入御伽草』、『阿国御前化粧鏡』などが挙げられていました。
・松助の養子の三代目尾上菊五郎については『東海道四谷怪談』 のお岩、『独道中五十三駅』 の化け猫などが挙げられており、「尾上菊五郎当り狂言合」という絵が展示されていました。
・こうした怪談物を得意とした作者として、四代目鶴屋南北の名前が挙げられていました。
・書きながら思ったのですが、「こういう演目があるのか、観てみたいなぁ。」など、私はやはりストーリーに引っ張られてしまいがちでした。

◇第2章 舞台をつくる道具と仕掛け

(1)大道具について
・大道具師長谷川勘兵衛の名前が挙げられていました。 十一代目長谷川勘兵衛は三代目菊五郎と組んで怪談物の仕掛道具を発明し、その孫の十四代目は明治時代に大道具師の名人と謳われたそうです。

(2)『加賀見山再岩藤』について
・展示パネルに『加賀見山再岩藤』が挙げられていました。
・今年の3月下旬に「よみうりカルチャー」で開かれた中村又五郎さんの講演会でも、「加賀見山」「岩藤」という言葉が出て来ていました。
・『加々見山旧錦絵』でお初に討たれた(悪人の)岩藤が、『加賀見山再岩藤』で幽霊として出て来るようです。これはいつか観てみたいです!
・Wikipediaによると、墓場で討ち捨てられ散乱した遺骨がひとりでに集まって骸骨となり、岩藤が復活する場面があることから「骨寄せの岩藤」の通称があるそうです。

◇第3章 妖怪のつくりかた ー 玉藻前と化け猫を中心に

 妖怪の例として、狐の「玉藻前」、猫の「五十三駅の化け猫」か挙げられ、お面や、ぬいぐるみ?などが展示されていました。

九尾の狐
化け猫の手

◇第4章 幽霊のつくりかた ー 四谷怪談を中心に

 「戸板返し」の場面を描いた錦絵が展示され、「仏壇返し」「提灯抜け」などの仕掛けについて記載されていました。

◇第5章 おばけと遊ぶ、おばけで遊ぶ

 妖怪を描いた双六や、 「緒方奇術文庫」 「山本奇術文庫」 などが展示されていました。

■最後に

 夏といえば怪談。これから夏に向けて、オススメの展示です。
 シアタースペースでは、今回挙げた歌舞伎や文楽の映像を観ることが出来るようでした(「岩藤」の映像も!)。私も時間がある時に、また見に行ってみようと思います。

後半、駆け足になりましたが、以上です。

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