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【歌舞伎】三人吉三巴白浪

 2023年2月、歌舞伎座にて『三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)』を観ました。メモを残したいと思います。

1.「三人吉三」を観ようと思った理由

 昨年の10月に、渋谷区立松濤美術館に『装いの力 異性装の日本史』という展示を観に行きました。
 その際、「5章 江戸の異性装-物語の登場人物・祭礼ー」というコーナーがあり、その中に、この「三人吉三」をモチーフにした絵が飾られていました。そう、主人公である三人の「吉三」の内、一人は「お嬢吉三」といい、女性の姿(女装)をした男性(!)なのです。
 絵は何枚かあったのですが、特に私の目を惹いたのは、火の見櫓の梯子を三人の吉三が登っている絵でした。その時は、どんな物語なのだろう?と思い、絵を鑑賞しました。

2.簡単なあらすじ(筋書を見ながら書きました)

 和尚吉三(僧侶)、お坊吉三(浪人)、お嬢吉三と同じ「吉三」の名を持つ三人の盗賊と、百両の金を巡る因果話です。三人は庚申塚の前で義兄弟の契りを結びます。そして、血縁よりも義兄弟の関係性の中で物語は進んでいきます。
 最後は、前述した火の見櫓の場で、三人が追い詰められていきます。

3.良かった点①-絵画的な美しさー

 序幕で三人が出会うのですが、お坊吉三とお嬢吉三が斬り合いを始め、そこに和尚吉三が割って入ります。(こういうのも、けんかを仲裁する「留め男」というのでしょうか?)
 ここで和尚吉三を挟んで三人が並び、見得を切ります。型・ポーズを取るとも言えましょうか。これが、浮世絵のように映りました。こうした場面がいくつかあり、河竹黙阿弥の「絵画的な美しさ」と言うように思います。

4.良かった点②-廻り舞台-

 序幕の次の二幕目は、舞台が、「A.巣鴨の吉祥院本堂」→「B.裏手墓地」→「A.元の吉祥院本堂」と移ります。舞台セットの表と裏がAとBになっていて舞台が廻ります。廻り舞台の面白さが実感出来ました。
 大詰でも、同様のつくりとなっていて、木戸を挟んでお嬢吉三とお坊吉三がいます。前半はお嬢吉三と捕手の立ち廻りでしたが、後半は舞台が廻ってお坊吉三と捕手の立ち廻りが描かれます。こちらは180度回転ではなかったように思うのですが、どうでしょうか。

5.良かった点③-その他-

(1)月も朧に

 序幕でのお嬢吉三の台詞「月も朧に白魚の…」は、河竹黙阿弥が得意とする七五調で、見せ場の一つとなっています。節分の夜の設定で、「厄落とし」とも言われるそうです。この台詞は、いつか台本を入手して全文を追記したいです。

(2)八百屋お七

 大詰の「本郷火の見櫓の場」は、八百屋お七の趣向を踏まえたものです。お嬢吉三が櫓に登り、太鼓を打ち鳴らします。(実際は二人とも男性なのですが)お坊吉三と男女の関係のように映ります。

(3)畜生道

 和尚吉三には双子の弟妹がいますが、この双子がお互いの素性を知らずに契りを結んでしまい、「畜生道」に落ちたと表現されます。近親相姦の末に畜生道に落ちるというのは、他の古典でも読んだことがあります。現代では、あまり使われなくなった概念のように思いまが、「地獄」や「六道」については、もう少し勉強してみたいです。

(4)頽廃的な美しさ

 本作は安政七(1860)年1月、市村座で『三人吉三廓初買』という外題で初演されたそうです。幕末の頽廃的な世相を投影していると筋書にもありました。

6.最後に

 本当に最後になって恐縮ですが、和尚吉三は尾上松緑さん、お坊吉三は片岡愛之助さん、お嬢吉三は中村七之助さんでした。またいつか、三人吉三は観てみたいと思わせられる舞台でした。

以上です。



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