アカデミアの道を歩まないと決めた理由

気がつけば卒業(修了)前日です。
数日前まで普通に(?)研究室を出入りしていたからか、明日で学生最後である実感が未だにありませんが…。

修士院生あるあると思われる、就職活動をしていても、親戚にも、後輩や他研究室の教員からも聞かれる「どうして進学しないのか」問題。
理系は学部4年+修士2年がさも当然みたいな状況で、同じように惑わされる人はきっといるだろうと、自分自身の備忘録的な意味合いも込めて。

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どうして修士課程で学んでいたのか

そもそも修士課程に進学したのは「自分で考えて問いを立てて研究したい」と思っていたことが大きい。
卒業研究では先輩や指導教員に教えてもらいながらでないと進められないことが多く、自分の研究のポジションや意義、研究手法や課題設定のコツがなんとなく見えてきて…というのが精一杯。
あと2年かけて、もうちょっと自分なりに考えて研究を深めたら面白そうじゃないかなーと思って、大学院入試を受けた。

あとは、学生であることへのこだわりもあったのだけど、それは休学中のお話

進学しようと思えなかった=自分にはどうにもできないこと

1.授業料あと3年分は安くない
修士課程の進学にあたっても悩んだ授業料。生活費の自己賄いを学部生のときよりも増やす相談をしながら、修士の2年分は実家にお願いした部分がほとんど。さらに3年(54万×3年:上がるかもしれない情勢でもあり、3年で学位取得できるとは限らないのが博士課程)…というのは、大学院進学経験が親戚一同見回しても、今のところ自分しかない中では頼みづらい。
学ぶにも金がいる(しかも安くない)って不思議だなと思ってしまった。

2.指導教員がいよいよ退官
研究室配属からずっとお世話になってきた指導教員は、数年前に還暦を迎え、教授として延長、さらに特任教授として学生を指導してくれていたのだけれど、いよいよこの春で退職。
今の専門に興味をもったきっかけが、この先生の概論講義を学部2年生で受講したことであり、卒論・修論までお世話になった先生にもう教わる機会がなくなってしまうと思うと、研究を続けるモチベーションとして難しいのが正直なところ。

進学したいと思わなかった=いろいろ考えて選択したこと

1.自分のキャリアを考えたとき、Ph.Dは本当に必要か?
自分なりに研究していく中で、「役に立つかもしれない何かを生み出すより、どうしたら役に立てられるか考える方が好き」だと気づいた。役に立たない研究はないと思っているけれども、修士まで専攻してきたことの専門家として生きるよりも、研究を通じて身につけた物事の見方や応用力を活かして人の役に立つ人生がいいなと思っている。

2.研究室の環境が今のままでは自己成長につながらない
特に最終年度のこの1年で感じてしまったこと。後輩しかいない生活で、いろいろ気にかけてしまうお節介な性格が裏目に出ていたときが多かった。後輩が困り果てる前に教えてしまうし、みんなが嫌がるような雑務を長年の経験からこなしてしまう日々で、自分にとっても後進にとっても、「うまく回っているようでチームとして成長しない」ことになりかねないのが今。
誰かの役に立つことは好きだから、後輩がいない方が楽だということではないけれど、先輩や頼れる同期の存在も後輩同様に自分にとっては重要なのだと思う。教え教えられの環境が、自分の頭と手足で試行錯誤するためにうまく働いていたのではないか、とちょっと前までを思い出しながら感じている。

3.同年代で社会でバリバリの人たちへに憧れる:アカデミアでの時間の流れは待てない
20代半ばになり、学卒で就職した同期はこの春で社会人4年目。メディアを見渡せば、自分と同い年なのに社会に対して積極的に行動している人も少なくない。
彼ら彼女らからは「若いからこそのエネルギー」のようなものを感じて、特にすでに働いている同期たちがワクワクと仕事について話してくれる機会が増えてきたのは、「自分も早く社会に出たい」思いを強くしている。
アカデミアの世界に刺激がないとは思わないけれども、時間の流れは社会のそれに比べれば、ちょっとゆっくりに感じる。悪く言えば、社会的な感覚・常識とズレが(なぜか)ある世界にずっと身を置きたいとは思えなかった。

とはいえ、大学院で学んだことも多い

博士進学したいとは思わなかったけれども、修士の2年間が意味のない時間だったとは思わない。
研究を通じて、自分なりに問いを立てることの難しさや課題解決の核心に気づくおもしろさを身をもって学べた。
研究の世界から社会に触れて、おもしろい社会人やこれからの自分たちだからこそ解決できることにたくさん出会った。

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4月からは研究の世界からは遠ざかるけれども、どんな世界にいようと「社会を向いて生きていくこと」はきっと同じ。
自分の業績・キャリアのためでもなく、会社のためでもなく、よりよい社会をつくるひとりとして生きていきたいからこそ、20代の自分が考えて導き出した今いるべき世界として、新社会人としてのスタートを踏み出したい。

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