石原慎太郎の最期
西村賢太の石原追悼文はいいと思わなかった。あまりに文学的で。
近親者の石原良純の観察と言葉がとても良かった。
「いよいよ最後、自分の体が動かなくなったとき、生死感みたいな“無”だ。生命力の強さみたいな、自分が前へ前へ進んでいくことだけに執着して生き抜いてきた人だから、肉体が滅びた時に自分の精神もなくなってしまったら、その先はないと。だから最後の2週間は恐怖心みたいなのが芽生えて…。動けなくなったときの最後の2週間以外は、ずっと前を向いていた」
最後に石原慎太郎が感じた「恐怖心」こそ、文学として読みたかったものだ。
文学によって何かを乗り越えられる、という幻想は、西村賢太も持っていただろう。
その幻想が壊れたところで見える人生の真実が知りたいのだが。
それを見たときには、たいがいもう死んでいる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?