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『コントが始まる』1~3話の“注”

*日々、加筆編集されます。どんどん長くなります。直近に加筆した項目は★にしてあります。

■第1話■

●ラーメンショップ「湯海(ゆかい)」

小ネタ満載の作品らしく、スタートも「愉快」にかけた言葉遊びでスタートする。オーディション(失敗)後に決まって3人が食べるのがラーメン。「いつもラーメン食い終わった後」に大事な話――コント結成と解散の話をする春斗へつながっていく。1話で描かれているのは「中華そば(ポンペイ)」「塩ラーメン(支那そば大和)」「博多ラーメン(峰ちゃん)」。2話の冒頭、中浜姉妹も家でインスタントラーメンを作って食べている(もちろんそばには水がある)。また「湯」は“水”つながりなだけでなく、3話の要となる「シャワーとお風呂」にも接続する。ちなみに、金子茂樹の脚本作品で“ラーメン×コント”の組み合わせが使われるのは『もみ消して冬』以来のこと。ストーリーで重要な役割を果たす「らあめん亀谷」の店長が、コントトリオ03の角田晃広だったのは振り返ると感慨深い。翌朝、スープがカレーに変わる話もあった。さらには前作『俺の話は長い』でも「来々軒」で家族5人揃ってラーメンを注文して、満(生田斗真)の分だけ作り忘れる話も妙に記憶に残る。そうした作品を横断する仕掛け(テーマの連続性)にも注目してみると面白い。

★水のトラブル「777(スリーセブン)」

「777」はラッキーナンバー。とんだ不運・災いに見舞われて絶望しているラーメン店の状況とは真反対。やってきた業者の池山が、ただ直すだけではんく、どんな幸運をもたらすのかが肝か。ちなみに「7」は、2話で大きな意味も持つ【⇒潤平の告白】。また、同じ数字の3つ揃いは、マクベスの3人に重ねたもの。トリオの物語らしく、作中には《3》が頻出する。湯川海太郎の名前が変わった「メロンソーダメロンソーダメロンソーダ太郎」。業者の「池山」も3画+3画+3画のほか。店がオープンして3日目の三日月の夜。3人揃って3回ずつの替え玉(これは3人が誰一人「カエのきかない」存在の暗示でもあって、解散話を深くしている)。解“散”をかけたオーディション結果の「散々」も数字遊びに映る。
「水」はストーリーを通して最重要なモチーフ。大きな所では、1話の「翌朝、水がメロンソーダに変わっている」謎に始まって、3話のコント「奇跡の水」へ展開していく。ちなみに、3人そして中浜家の冷蔵庫には「水のトラブル」業者の広告マグネットがたくさん貼ってある。

●こいつ〔※瞬太〕がテーブルに運ぶ間に……

水を出すは、ファミレスでの中浜の仕事(3人とのつながり)。また、テーブルまでの僅かな時間は、3話のソースとマヨネーズを「すぐに冷蔵子にしまって、また取って食卓へ戻ってくる」潤平のエピソードの下敷きにもなっている。

●マクベス

シェークスピア作の戯曲『マクベス』。関係ないと言うが……。綴りは「makubes」と異なる。

●缶ビール「GREEN GARDEN POP」

登場人物たちが好んで飲む発泡酒。象徴的なのは、瞬太がいつも食べているのが「ポップコーン」であること。〈ポップ〉がかかっている。またデザインにも強調された《緑》もポイント。3人の原点である出身高校は「緑東」(3人の卒業アルバムは大事に部屋にある)。潤平が着ている緑の上のジャージ。座椅子など部屋のアクセントカラーの緑。解散話へ向かう道中は、高速道路の緑の看板の連続。また物語の節目では、緑の溢れる公園がたびたび登場する。

●メイクシラーズ

ファミレスの店名。※伏線不詳

●(ファミレス入口での)霊感強いのかな?

1年半前の公園での、春斗と中浜のやりとりに基づく。また、2話のマルチ霊感商法へもつながっている。

●ホットコーヒー

ファミレスで3人が頼む定番。ちなみに「珈琲」の物語は、喫茶店を舞台にした前作『俺の話は長い』から引き継ぐもの。

●ピンポン

3人の相違だけでなく、3話でタコパのため春斗と潤平が訪ねてくるときの呼び鈴(ピンポン)にもつながる。

●(春斗のネタ帳)

ファミレスシーンで映る。「店長答えは?」「終業式の帰り道」「ガソリンスタンド」のネタのメモがみえる。実際に一時停止をして見ても、どれも到底面白くなりそうにはない(深みがある)。

●隣のマンションの同じ階

3人が住んでいるのは映像上では「3階」にも見える(がどうだろう?2階か?)。それが3人の部屋と同じかは確かではないが、中浜が内見した隣の部屋の間取りは「1SLDK(38.7㎡/1981年築)」。もし同じなら、ルームシェア「二人入室可」とあるのが気にかかる。ベランダ越しのすぐ隣のマンション(の距離感)と微妙な高さの違いは、2話のコント「屋上」の設定に引き継がれている。

●ライブハウス「Miracle Capusle」

店名は、ゲーム『マリオパーティ5』に登場するアイテム名と同じ。3つ集めるとどんでん返しを起こせる。

●マクベスのライブ

ライブ名は「月の満ち欠け」(月は「海」の満潮干潮に関係していて《水》つながりでもある)。今回(4/17)がvol.14。解散公演となる次回6月単独ライブはvol.15の予定。「公演」は劇中度々登場する「公園」にもかかっている。

★スナック「アイビス」

瞬太が常連で通う。後に台詞上でも出てくるが「水商売」で、実際「氷」「水割り」なども頻出して“水”つながり。この店で働いているのはママを含め、マクベスと同じ3人。アイビス(ibis)は、特別天然記念物の鳥「トキ」のこと。トイレにはマクベスのチラシが貼ってあるほか、店内には同じ事務所の演歌歌手・本居いずみ「五月雨の夜に」の新曲ポスターもみえる。瞬太の営業によるものか。

●中浜さん?

「公演後の公園」での再会、という言葉仕掛け。――このときの、ややだらんと力が抜けた風体から深々とするお辞儀。太もも横に揃えられた手と姿勢の良さとともに神妙なテイストで、その短い中に春斗の(浮かれた若者とは違う)「誠実さ」もっと言えば「飄々とした外貌の中にある情の深さ」が雄弁に伝わってくる。

●10年前の約束

※後日記述

●ぷよぷよ(日本一)

※後日記述

●中華料理「ポンペイ」

高校時代に3人が通った店。マクベスを結成した記念の場所。2011年6月19日。最初は春斗と潤平の2人でスタートした。店名はイタリアの世界遺産にちなんだものか。約2000年前に火山噴火によって一夜にして消えた古代都市。18世紀に発掘されるまで火山灰に埋もれていた。火(山)に対する《水》のイメージが強くただよう。この赤い暖簾のかかった庶民的な町の中華屋は、前作『俺の話は長い』でも活用されていた。

●焼き鳥ハウス「ボギーパット」

ゴルフ用語で、各ホールの定められた打数(パー)を1打上回るのをボギーという。それがかかったプレイを指す。

●焼き鳥

基本は4個の具材を串刺しにしたもの。マクベスに瞬太が加わる宴席で、その形状が『ぷよぷよ』を連想させる台詞がある。

●女酒

中浜が会社を辞めた日。一人公園で深酒をしているカップ酒。

●真銘

スナックに並んでいる(ボトルキープ用らしき)お酒の品種。四字熟語「真正真銘」の「真銘」。意味は、起源や経歴に誤りがないこと。転じて、本物であることの喩え。ちなみに、焼き鳥屋に貼られた大きなポスターの品種は清酒「初水」。また3話で春斗の父が晩酌しているのも清酒っぽい。

★早く帰んなね?

公園での初対面のラスト。心配する春斗に対し、泥酔した中浜がグッドを作って返す。時々瞬太が使う「決めポーズ」。まだマクベスも、他のメンバーのことも知らず会ったこともないのに繋がっていて、運命的である。

●(春斗の作る)お好み焼き

潤平がバイト先で作る「焼きうどん」、3話の「たこ焼き」等へつながる。どれも「粉もの」というのがポイント。

●ソースとマヨネーズ

調味料の中でも食材に「かける」もの。この物語は言葉やモノを、他の何かに「かける」「かかる」ギャグや複線によって成り立っている。それゆえの小道具演出でもある。

●青のり

ない(覚えておきたい)。

●ポップコーン

瞬太がいつも食べているスナック菓子。いつも見ているスマホと共に、気になる。

●風呂で食わないで

3話に登場する、中浜家での「お風呂を見られたくない」やりとり、春斗の兄の「シャワーではなく、お風呂に入る」への下敷きになっている。特に後者は、シーンをこえて兄弟のつながりを感じさせて妙。

●首に巻いたタオル

3話の「足洗ったタオル首に巻かないで」(春斗)。長男の再出発の風呂あがりの「オレンジのタオル」へつながる。大将の手ぬぐいも似ている。

●粉末のジュース

ペットボトルのただの「水」が、翌日「メロンソーダ」に変わっていた謎の真相。この挿話を題材にコント「水のトラブル」ができた。3話のマルチ商法の「奇跡の水」、そのラストの「野菜ジュース」へつながっている。

●疫病神

※後日記述

★「水のトラブル777」に電話しましょうか?

コントにかけた台詞。涙する春斗を前に、場を和ませようとする中浜が機転を利かせて発する。2話以降「電話をかける」が大事なテーマになる前フリにもなっている。


■第2話■

★コント「屋上」

高校時代、春斗と潤平が文化祭で披露した人生初のコント。コンビ時代からのネタで、いまはトリオ用に内容や配役が作り直されていると思われる。ちなみに、5年前、瞬太がプロゲーマーを辞めて、マクベスに入ることを志願しようとする日。彼はライブで2人版の「屋上」を観ている(今となってはレアだ)。

●引っ越し祝いのシャンパン

作品を通して出てくる「ビール」と「日本酒」の対比になっている。ちなみに『俺の話は長い』5話にも「シャンパンと合鍵」の回がある。

●ローンもあと35年残ってる

冒頭のコント「屋上」の台詞。ここでは、心配する=自殺をとめる側の言葉。これがひっくり返る形で、物語終盤、心配される=自殺する(と誤解される)側の瞬太の「70歳で満期を迎える保険」へつながる。つまり、彼は保険があと42年も残っている訳だ。

●たまにはごちそうするから

中浜姉妹の会話。語彙は違うが「おごる」「おごらなくていい」の問答。後に出てくる、文化祭後の思い出話。ゲーム大会で優勝した瞬太に「おごれよ」と言った春斗の言葉につながるもの。

●玉子(食べなよ)

1話の中浜の朝食は「玉子サンド」。また焼き鳥屋のおすすめメニューには「アツアツ出汁巻き玉子」。またプロ雀士を目指す恩田が好んで注文するのは「目玉焼きのせ」。金子作品では卵は重要なアイテム。『プロポーズ大作戦』の礼のじいちゃんが作る「玉子焼き」、『SUMMER NUDE』の夏希が作る「目玉焼きのせの焼きそば」、『もみ消して冬』の入れ替わった先の家で出てくる採りたての「卵かけご飯」のほか、『俺の話は長い』は「すき焼きの卵」を描いて始まっていた。

●芸能事務所「パソリブレ」

マクベスの所属事務所。ミュージシャンが多く在籍する。名前は競走馬と同じ。ちなみに、ブラブラしていたつむぎがひきこもりの姉を助けるきっかけの電話を受けるとき(その頃はまっていたように見える)、時間潰しをしていたのがゲームセンターの競馬のコインゲーム。

●楠木さん

中村倫也演じる芸能事務所の担当マネージャー。フルネームは「楠木実籾(くすのき・みもみ)」。苗字は「木南木」で、下の名は「みもみ」。上から読んでも下から読んでも同じ回文風になっている。3話のモチーフである「奇跡(キセキ)」と結びつく。

●潤平が読んでいる新聞記事

決まって『スポーツヨミヨミ』を読んでいる。2話の一面記事は「男子100m決勝/新王者ロイ/9秒88」の見出し。短距離走のモチーフは、長距離ハーフマラソンを扱った『俺の話は長い』最終回や、『プロポーズ大作戦』冒頭でケンゾーを邪魔するマラソン大会と対のようにも映る。

●2人の生徒に声をかけていた(秘密)

3番目の誘い=「第3希望の滑り止め」だったことに春斗が怒る。潤平は彼を「“参”謀」タイプとも話している。ここでも《3》が強調された作り。

●すね当て

奈津美を文化祭のコントに誘ったことを報告する春斗。それに対して「どうせ来ないよ」と愛想のない返事をする瞬太に、ふざけて顔にかぶせる。《足と臭い》モチーフは、10年前からすでに伏線が張られていたことになる。

●奈津美からのメール

潤平がマクベスの誘いを受ける時、テーブル下で受け取る。「6/19 17:00」のこと。この日付は、10話の放送日(近年の連ドラに多い全10回構成であれば最終回)にあたる。

●靴飛ばし

公園のブランコでの潤平と奈津美のやりとり。昔ローファーが「思いっきり真上に飛んじゃって、靴が顔に落ちて来て鼻血出したことがある」という話から、2人が外泊をかけて勝負する。

●小林の披露宴(奈津美の元カレ)行かなかったんだろ?

3話のマクベスを呼んだ春斗の兄の「結婚式」。また4話の猫を「拾う」への言葉の伏線でもある。

★納豆トースト

春斗の朝食。パンに納豆は、いささか「不自然」で「マズそう」にも感じられる組み合わせ(きっと美味しいのだろうが)。それが、口を滑らしてしまって一気に漂う「気まずい雰囲気」と、春斗と潤平に生じる齟齬をうまく盛り立てるアイテムになっている。

●「足どうしたの?骨折?」

実際は、昨夜の靴飛ばしで右のスニーカーだけ失くしたことによる。後の「アキレス腱」、さらに3話の潤平の「臭い足」エピソードへつながる(あの場面、靴下以上に「靴」が印象的に映しだされる)。

★雀荘「赤まむし」

ポスターから「1周年」と分かる。ここに週5で通う恩田は、プロ雀士を目指している。マクベスの3人が追いかける〈夢〉に重なるもの。ちなみに彼女の上がりは「インパチ」(親の跳満18000点)。当たり牌は「“三”萬」。麻雀は《親と子》から成るゲームで、作品が描く「親子の物語」の暗喩にもなっている。

●焼うどん目玉焼きのせ

雀荘で潤平が作る逸品。恩田の好物。「目玉焼きのせ」は『SUMMER NUDE』で朝日(山下智久)と夏希(香里奈)をつなぐキーアイテムとして描かれた。

●車

瞬太が高校在学中『ぷよぷよ』の全国大会で優勝し、その賞金(100万円)で一括購入した赤い車。いまも3人が移動に使って健在。車のナンバーもゲーム名にちなんだ「ふ 24ー24」になっている。担任の真壁も、3人と一緒に一度乗ったことがある。

●遺書

※後日記述

★何かあった時の顔してんじゃん、言えよ

2人が大喧嘩するシーン。①要冷蔵にうるさい潤平が「冷蔵庫」を長く開けっぱなしにして会話が始まる。流れこむ「冷気」が、ここから関係がこじれて冷え込むのを盛り上げている。②作品では珍しく、春斗がいつもと違う銘柄の酒を飲んでいる(潤平はいつもの)。2人の缶が違う。喧嘩の要因である「勘違い」を暗示しているかのよう。

●川の方へ歩いて行っちゃった

瞬太が佇んでいるのは橋の上。つまり川。3話のクライマックス、春斗の兄が再出発を誓う電話をする河川敷へつながる。

●27歳までに死ぬ(というインタビュー記事)

この発言を知っていた中浜は、瞬太が自殺するのではないかと本気で心配する。瞬太がそう決め込んだのは、父が27歳の若さで死んだこと。加えて、父が好きだったミュージシャンや詩人も、同じ年齢で亡くなっていることによる。実際、有名なところ(で、瞬太の父が世代的に影響を受けたと思われるところ)では、ジミ・ヘンドリックス、ジム・モリソン(ドアーズ)、ブライアン・ジョーンズ、カート・コバーン(ニルヴァーナ)などが27歳で他界している。その多さから「27club」なる都市伝説は、長年語り継がれている。これを真正面からドラマに採り入れた事例は珍しい。ちなみにマクベスの3人と中浜は、いずれも28歳(あるいはそれになる)の設定。演じ手の菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀、有村架純も1993年生まれの同い歳組。

★屋上で自殺を考える潤平

春斗は、明日、潤平が奈津美に告白することを引き合いに、自殺してもらっては不都合だと説く。後にある通り、告白が「7月7日」なので、この日は前日の7月6日ということになる。

●あいつ〔潤平〕の計画が水の泡になる

自殺しようとする瞬太を説得する春斗の台詞。《水》つながり。

★アキレス腱

奈津美への告白を前に「入念な準備」する潤平の象徴。だがその想いは届かなかった。それに対し、物語のラストではコントの「アドリブ」で春斗へ想いをしっかり伝えることができる。対比的な伏線。ちなみに、潤平が告白をした日は、直後の教室の黒板から「7月7日」であると分かる。アキレス腱を伸ばしながら「願えば叶う」と呟いているが、彼は“七夕”に願いをかけてこの日に決めたのだ。これでもかというほど、入念だ(笑)。

●潤平のブログ

タイトルは「C級芸人のB級グルメ日記」。2017年6月5日(4年前)の記事が取り上げられる。更新は2年前で止まっている。

★麻婆丼と餃子

中華屋の店主は「お先に」と言って麻婆丼が運ばれてくる。どちらが先か後か。今回のテーマである〈順番〉は重要ではなくて、それを選んだことに意味があることを物語っている。 ブログをグルメ日記の文脈で捉えれば、潤平の「選択は間違えてない」は、①多数のメニューから麻婆丼を注文したこと自体を自賛している、②2つを追加注文して、自分は餃子を選ばなかった。の2つの解釈がありそうだ(にしても、餃子はどこへ行った?)。

●「屋上」でいいよ

瞬太の「遺書」騒動後。翌日のネタを相談された潤平は、春斗への謝罪(想い)を伝えるためにも「屋上」のコントをやることにこだわる。そのとき水道の「水」を2回で飲みほす。これは3話冒頭のコント「奇跡の水」の「1口飲めば~2口飲めば~」の助走でもある。伏線はもう始まっている。


■第3話■

●コント「奇跡の水」

マクベスのコントの中で、中浜の一番のお気に入り。後に登場する、春斗の兄の実話をベースに作られている。

●コンコン

何気ないがコント「奇跡の水」(弟が兄を訪ねるエピソード)」冒頭にあるのが、ドアのノック。あえて兄にドア越しに話す時の「コンコン」。そして物語終盤の「ドアをノックし続けることが大事」という瞬太の台詞へつながる。もう伏線は始まっている。

●建物入ったときからヤベぇにおいしてた

「臭い」のワードは、後の潤平の臭い足のエピソードへつながる。

●洗濯ネットに入れるもの

これをめぐって姉妹が大喧嘩する所から物語がスタートする。これは前回ラストの「選択」エピソードを受けてのもの。もう伏線は始まっている。

●ウィンディー古賀様のコサインパワー

windyは「 口先ばかり。空虚な。実のない。」という意味。コサイン(Cos)は“三”角関数に関係する。その人物は出てきていない(覚えておきたい)。

●つぐみが作るパスタ

塩コショウで味付けをしている。後の春斗の「やきそば」、またソースとマヨネーズの話題と対比されている。

●熱帯魚

3匹にマクベスのメンバーの名前をつけて飼っている。もちろんこれも《水》つながり。また缶をふりかけるように餌を与える身振りが、塩コショウで味付けする直前のパスタ作りと重なっていて、中浜姉妹の性格・境遇の違いが際だたせる演出になっている。ちなみに、水槽で飼う生き物、それに敬愛する人の名前つけるのは『俺の話は長い』の満もそうだった。亀のボルト。

●「安価な価格で~」のラップ曲

脚本家の金子茂樹はこうした劇中歌を作るのも特長。『俺の話は長い』の満(生田斗真)と光司(安田顕)の「ニート・ブラザーズ」や「出世払い」、『ボク、運命の人です』の「手品師の鳩は平和のホロッホー」、『SUMMER NUDE』の「みさき市音頭」等。

●(大将の)双子で還暦でどっちも独身

※伏線不詳

●(春斗の作る)焼きそば

魚肉ソーセージ(?)ともやし入り。彼の自炊はどれも“粉もの”で、ソースとマヨネーズが決め手。後の「たこ焼き」への伏線でもある。そのきっかけは瞬太とつむぎが「粉もの」の話題で盛り上がったことだった。フライパンのまま、漫画を鍋敷代わりに食べるのが恒例。

●一回使ったラップをもう一回洗って使う

中浜さんがヤバい(しっかり者)という一例。アルミホイルと共に「モノを大事にリユースすること」が、この回のテーマである《命・人生の再生》の暗示になっている。また「ラップホイル」はコント内の怪しい「ラップ音楽」と掛け言葉にもなっている。

●白菜の漬けもの

春斗と父が素手でつまんで食べる。家族の好物で、絆の象徴。同時にこの回のクライマックスである、兄が湯船に「漬かる」にもかかっている。

★興神水

春斗の兄が信じている奇蹟を起こす「水」。水神様によって「大きな運を引き寄せる」(チラシ)力があるというが、まがいもの。潤平の実家の酒店に売られている清酒「開運」と対比になっている。

●マルチ(商法)

コントからするに、一種の宗教臭さのある霊感商法。『俺の話は長い』には「カルト宗教の説明会に行きかけた」光司の話があった。そこでの占いも含めて(さすがに奇跡の水は怪しすぎるが)スピリチュアルなものを金子作品はやみくもに否定はしていなくて、そこにどう自分の努力を繋げ結んでいくかを問うている。『プロポーズ大作戦』のハレルヤチャンスはまさにそう。

●トイレに行くぐらい

春斗の兄が唯一部屋を出るとき。

●5分のシャワー

ちょっとの間でも要冷蔵のソースやマヨネーズは、冷蔵庫に戻す潤平。そのため外に出ているのは5分に満たない。その時間に重ねられている。また、中浜が過去を回想する直前、俊太とつむぎが「会うのが5回目」という台詞もさり気なく置かれている。

●(春斗の実家の)冷蔵庫のチラシ

「防災訓練のお知らせ」等の災害関連のものが多い。なぜだ。

●責任

3話の各シーン・台詞だけでなく、1話のコント内の「食品衛生“責任”者のプレート」から続くもの。

●たまには湯船につかったら?

字幕では「浸かる」ではなく「漬かる」表記になっている。「白菜の漬物」にかけた演出。「湯」が「水」と対であるのはもちろん、

★足洗わないとほんと臭いですから

3話ラストのコントの落ち。マルチ商法にはまった兄に、離れる・やめて欲しくて叫ぶ「足洗ってくれよ」の台詞につながる。
このやりとりの段階では、潤平は靴に触れずにそのまま家に上がっている。後から来た2人の靴は反対のまま。にも関わらず、タコパの場面ラストに挟まれた映像ショットでは、潤平の靴の向きは直され、春斗の靴だけが反対のまま残されている。これを伏線とみる考察もあるが、別の解釈(可能性)も幾つか出しておく。――①潤平は風呂場で足を洗ってから、後で一人リビングに入ってくる。家の間取り的に玄関を通っているはず。そのとき彼自信が直した説。行儀悪いと思い自分の靴を揃えた。でもこれでは配慮と優しさに欠ける。却下。②中浜が揃えたとすれば、なぜ潤平の靴だけだったかが疑問。ネタのように話していたが、実際彼の靴を直したら「あまりに臭く」て、手を洗いに行って忘れてしまった。これは笑えるし根拠もあるが、物語的に微妙か。③中浜が揃えたが、彼女は自分のことを「厄病神」と強く思い込んでいる。1話で「私が何かを好きになったり接触したりすると不幸になるんです」と語っている。特に思い入れのある春斗の靴に触ると不幸を招くと思って遠慮した。つまり彼女は彼を好き。これは説得力がある(だがマクベスへの愛という点では足りない気もする。好きが勝っている暗示とも取れるが)。――現時点、謎の1つである。

●2回のカン

8700オールでのあがり。4枚(2枚ずつ裏表)の牌が『ぷよぷよ』を連想させる。

●結構出しっ放し

中浜家の調味料の扱いを語ったもの。物語のラスト(タコパの翌朝)に、テーブルのソースを片づける場面が印象的に描かれている。朝食後なのか、それとも昨夜から出しっ放しだったのか。

●違う人の名前(が出てきて)

中浜が語る失恋話。それを聞いているつむぎが鼻や顔を触ったり、真顔になるカットが何度も挟まれ、訳アリな感じが漂う。その分、誰かが気になる。

●パソコンもスマホも入った鞄

投げ捨てたのが「川」というのがポイント。1~3話、すべての回の局面で「川」が登場している。

●頑張らなくていい方を選択した

中浜の台詞だが、それを聴く菅田将暉の持ち歌『まちがいさがし』の歌詞「まちがいさがしの間違いの方」を想起させる。

●(中浜が仕事を辞めた日の話)

――(1話で描かれたように)中浜が廃人のようだった一端を、春斗は本人から聞いて知っている。それを改めて詳しく聴く間、ずっと彼女の顔を見つめていて、涙をこぼすくだりで目線をそっと外す。その表情が何とも悲哀に満ちて切ない。ただ悲しいためではない。もちろん同情といった浅い感情ゆえでもない。彼は、背景は分からないにしても、あの夜の彼女をウザ絡みする酔っ払いと疑わなかったことを思い直し、あの時(まだあの段階では鞄を捨てていなかった)もっと何か出来たのではないかという、深い反省と後悔に包まれて茫然としてもいるのだ。その見えない“心の劇と葛藤”を、言葉なしに生々しいまでに伝える脚本構成と、菅田将暉の演技は圧巻である。

●無味無臭

1話の「味のない」水を拡張・発展させた作り。コント「奇跡の水」からの引用。自然と出た言葉に、中浜がどれだけマクベスのコントを観ているか。台詞に至る細部が身体に染みついているかがうかがえる。また「無味はおかしいでしょ」のツッコミは、コロナ禍における痛烈な風刺(悲しい過去を語る中浜と、それを聴く仲間が「元気にいまを生きている」象徴/「味がしない・臭いがしない」がネガティヴな形でばかり使われる社会情勢への批判)にもなっている。

★焼き鳥屋を訪れる奈津美

久々に会った大将と交わすのが「グータッチ」。コロナ禍による握手代わり。同時にそれはジャイアンツ・原監督のトレードマークで、金子茂樹得意の(待ってましたと言わんばかりの)野球ネタ。4話になると、瞬太の母が訪ねてくるときの「野球ゲーム」、つぐみの「野球部マネージャー」経歴と続出する。

●マクベスが売れるより先だよ

大丈夫であることを春斗に伝える台詞の一節。「う」の部分で噛む。これが脚本通りか、アドリブなのか分からないが、実にコント的だ。

●どんなに俺を説得しても無駄だ

コント「奇跡の水」の台詞からの引用。

●野菜ジュース

粉から出来たメロンソーダとは違う、ほんもののジュースと思われる。だが一目瞭然ジュースと分かるのに、つむぎの「何だっけそれは」の台詞はやや不自然(覚えておきたい)。何かしらその場の話や感情をごまかしたためか。水=飲み物が、キーになっている物語なだけに気になる。

★奇跡のブレスレット

1話のコント「奇跡の水」ラストの手首をおさえる店員。4話の瞬太が母と最期の別れをするシーンとつながる。

/最終更新:2021.05.11 08:30

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