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【評価・感想】『ATOM RPG Trudograd』レビュー

今作は、2021年に発売されたポストアポカリプス系RPGです。

あらすじ:前作から2年後の世界。主人公は"ATOM"から託された使命を胸に、今度は雪に覆われた巨大都市"トゥルードグラード"への潜入を試みます。


前作の改良版

ゲームとしては、前作『ATOM RPG』の延長線上にある作品です。

今作も、初期「Fallout」のフォロワーとも言える作品になり、見下ろし視点で行う自由な探索とターンベースの戦闘、そして、プレイヤーの選択を尊重するストーリー手法が特徴として挙げられる作品です。

ただ、どの部分も着実に良くなっています。

例えば、インベントリ画面や進行中のクエスト一覧などは、はるかに見やすく、管理しやすくなっていますし、心なしか会話時のレスポンスも良くなっていて、さくさく読み進められます。前作も特に不便なゲームでもなかったのですが、今作を経験すると「それに戻るのは厳しそうだな…」と思うくらいには、色々と改良が行き届いています。

個人的に、もっとも嬉しかったのはワールド移動が簡略化された点です。

単純に移動スピードが上がったことに加えて、「アイコンをクリックするだけで最短ルートで移動してくれる」「都市部が舞台ということで、ブロック間の距離が短くなっている」ことによって、移動の煩わしさがほぼ無くなっています。

もちろん、前作のようにワールドマップを実際に練り歩く方が探索(冒険)の楽しさがあるのですが、簡単なお使いのために長い距離を移動するのは億劫だったので、今作のような作りでも特に不満はないです。

あと、前作経験者的には、前作のデータを引き継げるのも嬉しい点です。

この手のゲームは、特に序盤に苦労することが多く、続けて遊ぶとそこで疲れて来ることがあるのですが、今作に関しては、前作のデータを引き継ぐことでそこをスキップすることができ、非常に遊びやすいです。

単に前作のデータを引き継ぐだけではなく、基本的に再調整不可だった初期ステも振り直すことができ、前作のデータをもとにキャラクターを作り直すこともできます(※再登場するコンパニオンの能力値も引き継ぎ扱い)。

ビルドにもよりますが、前作を終えた流れで遊ぶことができました。

全体的に、残すべきところは残し、直すべきところは直したという印象で、前作ファン的には納得感のある仕上がりです。

屋内の描写が強化されていて、"部屋"がストーリーの背景を語る

今回はソ連版Fallout 2...?

ATOM RPG』と比べて、明らかに面白くなったと感じたのはサイドクエストです。

過保護な親を説得するクエストや呪われた古代の遺物を調査するクエストなど、クエストの切り口が面白いですし、その結末も、こちらの予想を裏切るものが多く、非常に良かったです。サイドクエストは、それなりの数が用意されているにもかかわらず、どれも中身が濃いです。

また、クエストの出来とは別に、クエストをクリアした後に様子を見に行くと、ちゃんと専用の台詞が用意されていたり、変化が感じられたりする点も、手が込んでいて印象が良いです。たとえストーリーには反映されなくても、自分の選択がゲーム世界に確かに影響を与えていることが伝わって来ます。

そして、こうした”ポストアポカリプス”の枠に囚われない多種多様なサイドクエストの存在は、どことなく『Fallout 2』を想起させるところです。

『Fallout 2』も、サイドクエストで扱うテーマが幅広く、ユニークなクエストと独特なユーモアの数々が一作目『Fallout』と差別化する点で、大きな特徴でした。

今作は、サイドクエストもそうですし、際どいジョークが多かったり、フランク・ホリガン戦を連想させる場面があったりなど、遊んでいると「今回は『Fallout 2』を意識した作品なのでは?」と感じる内容になっています。

『Fallout 2』の方向性が好きだった自分としては、今作はかなり好意的に受け取ることができました。

なお、メインクエストの方では、所属する派閥によってストーリーが分岐する仕組みが導入されています。

それぞれに専用クエストが用意されており、二周目を遊ぶ動機が生まれています。ボリューム的に二周遊ぶことを想定していると思われるので、出来れば二周は遊びたいです。

総評

前作ファン的には、最後まで楽しめた一作でした。

今回も、前作『ATOM RPG』と同じ方向性のゲームなので、"古いCRPGを遊ぶ"くらいの気持ちでいた方が良いゲームではあるのですが、その一方で「ATOM RPG」としては、不満点の多くが解消されたことで、非常に洗練された作品になっています。

前作ほど規模が大きくないので、前作をクリアした流れでサクッと遊べるボリューム感なのも嬉しい点でした。

「ATOM RPG」の続編はもちろん、開発元である「ATOM TEAM」の今後にも期待が持てる一作です。

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