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【評価・感想】『ATOM RPG』レビュー

本作は、2018年に発売されたポストアポカリプス系RPGです。

あらすじ:1986年、米ソによる核攻撃の応酬により壊滅した世界。その戦争の生存者で、"ATOM"と呼ばれる秘密結社の一員である主人公は、ある使命を胸に荒廃したソビエトの大地を冒険します。


すごくFallout

「初期Falloutをあのままの形でリメイクしたらこんな感じかな」と思えるゲーム。

まず『Fallout』『Fallout 2』は、アイソメトリックなCRPGで、見下ろし視点で行う探索とターンベースの戦闘、豊富なテキストと意味のある選択の数々が特徴のゲームでした。

ただ、それ自体は「Fallout」だけのものではないので、そうしたゲームがすなわち”Fallout的”とは言えないのですが、本作はUIや操作性をそれに寄せた上で、今となれば古く感じる初期「Fallout」の特徴も含めて"再現"している点で、非常に"Falloutっぽい"ゲームになっています。

「初期のステ振りをミスると詰む」「クイックセーブとクイックロードを繰り返して試行錯誤する」「説明は必要最低限で、あとは自分で考えて遊ばないといけない」など、初期「Fallout」と同じシビアさがあります。

もちろん、スムーズなカメラ移動をはじめ、相応にアップデートされている部分もありますが、ゲームの中身は、一貫して"古き良きCRPGを再現する"になっている印象で、基本的には、初期「Fallout」と大きく変わりません。

良くも悪くも、初期「Fallout」を彷彿させるゲームです。

初期「Fallout」が大好物な自分としては、そこも含めて楽しめた方ですが、難しくて、無骨なゲームになるので、遊ぶ場合は、そういう作風だという認識が必要だとも感じる中身になっています。

プレイ部分をもう少し詳しく

ゲームの流れは、基本的には初期「Fallout」と同じです。

ゲーム世界は一枚の大きなワールドマップで表現されており、そこを移動します。移動中はランダムエンカウントが発生し、敵に襲われたり、ユニークな光景を目にしたりなどします。

目的地に到着すると、そのエリアを隅々まで探索していきます。

本作では、ほぼすべての住民と会話することができ、会話して新しい情報を手に入れたり、クエストを受け付けたりなどします。さすがに『Fallout 2』より面白いとは言いませんが、物事の細部まで描写する密度の高い文章は読み応え十分で、かつ他のカルチャーへの言及もあり、読んでいて面白いです。選択肢も充実しており、難しい決断を繰り返してクエストを進めていく緊張感もあります。

次に戦闘は、本作でもターンベースの戦闘が採用されています。

これに関しても、初期「Fallout」とほとんど同じで、アクションポイントを使って、敵を倒していくというシンプルな戦闘です。アクションごとに消費されるアクションポイントは、次のターンでは回復しますが、そのターンの中では回復しないため、残数を意識しながら遊ぶことになります。

もう少し戦術的な戦闘を求める場合は、物足りなく感じると思いますが、初期「Fallout」と同じく、シンプルにまとまっていて、これはこれで悪くないです。ちなみに、部位破壊や少しキツめのゴア表現も存在します。

初期「Fallout」経験者にとっては"見覚えのある"ゲームになっていますし、逆に未経験者は、遊ぶと「初期Falloutはこういうゲームだった」と知ることができる内容になっています。

ちなみに、ゲーム開始時に行う操作キャラクターの作成も、初期「Fallout」とよく似ており、初期「Fallout」経験者は、それの知識が応用できます。

人々が暮らす地下鉄の駅

ただ、「Fallout」とは明確に違うところもあります。

ゲーム世界がソ連的な世界になっていて、キャラクターの描写や台詞の言い回しなどが非常に独特です。分かるような分からないようなソビエトジョークが数多く用意されており、(私にとっては)馴染みのない世界に足を踏み入れる面白さがありました。

また、「S.T.A.L.K.E.R.」や「METRO」などの"東側"を舞台にしたゲームの影響も感じさせる作品でもあり、"西側"を舞台にした「Fallout」の「ウェイストランド」とは、また異なるポストアポカリプスな描写が印象に残ります。

初期「Fallout」が好きで、「S.T.A.L.K.E.R.」や「METRO」も好きな自分としては、両方のいいとこ取りと言えるゲームになっていました。

総評

初期「Fallout」の後に遊ぶゲームを探している人には、ベターな選択となる一作です。

ゲーム的には、初期「Fallout」がほとんどそのままの形で再現されている状態なので、そういうゲームを遊びたいという欲求には、十分答えてくれるであろう作品になっています。

一方で、初期「Fallout」を経由せずに遊んだ場合は、予備知識がない分、手を焼かされる可能性が高いゲームと言えて、そこは注意点として挙げておきます。

もし、どっちを先にプレイするかを迷っているのであれば、私は日本語の攻略情報が充実している「Fallout」を先に遊ぶことをお勧めします。

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