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毎日エキサイティング!ベトナムでの海外起業の体験記

はじめまして、かけやと申します。
私はベトナムで、スクーティーというソフトウェア開発の会社を経営しています。

私は2012年にベトナムに渡り、当時は駐在員として日本の会社のベトナム子会社の立ち上げを担当しました。そして2015年に独立し、ベトナムに会社を創りました。

個人的には「起業」も「海外起業」した感覚は全く無いのですが、今後海外起業する方は増えると思いますので、自己紹介がてら自分の足跡を残しておこうかなと思います。

本記事は無駄に長いので、本ページを開いてしまったものの全く興味が無いという方は、いい感じにまとめて頂いたこちらのインタビューを是非御覧ください。

まず、「なぜベトナムで起業したのか」とよく聞かれるのでまとめておこうと思います。その質問を頂いた際にはいつも3つ伝えさせていただいています。

なぜベトナムに来たのか

ご縁です。

ちゃんと説明すると、前職で頂いた辞令です。なので、自分の意思でベトナムを選択したわけでは無いです。ベトナムのハノイに開発拠点を設立するための、立ち上げメンバーとしてお声がけ頂いたのがきっかけです。ずっと海外で働きたいという意思がありましたし、自分にとっては人生の大きなターニングポイントになったので、本当に感謝しています。

ちなみにそれまではベトナムに関する知識0でした。フォーがベトナム料理というのもこっちに来て始めて知ったレベルです。

なぜ日本に帰らなかったのか

海外で働くことがエキサイティングに感じられたからです。もう一つは、前職の駐在だった3年間で築いたキャリアや人脈が完全にベトナムに特化していたので、それを活かしてその後も仕事をしていきたいと思ったからです。

「いやいや、ベトナム人の嫁さんが出来たからでしょ!」ともよく言われるのですが、「仮にそうだったとしても、日本に連れて行って日本で一緒に暮らすということも可能だったはずだが、その選択肢を選ばなかった」というロジックで以って断固否定させていただいております。

なぜ起業したのか

昔から独立志向が強かったからです。ベトナムでは日本人というだけで就職口が山ほどありますし、就職するという手もありましたが、その選択肢は取りませんでした。

よく、起業は手段であってそれを目的化するのは間違っている、的なことを言われますが、やりたかったものはやりたかったので仕方が無いと思います。

私は「みかん」という食べ物が好きなのですが、「なぜみかんが好きなのか」には理由はないです。それと同じだと思っています。

ちなみに「起業」したという意識はあまりありません。仕事をする過程で必要になったので法人登記した、という表現が一番しっくり来ます。


会社設立準備期間中にやったこと

前職を退職したのが2015年6月、会社設立したのが11月なので、少しブランクがあります。この間は、仕事がないときしか出来なさそうなことをやろうと思い、ちょっとフラフラしていました。

あと、ここまで書いたところで思い出したのですが、昔こんなブログを書いていて、それを参考にしつつこの間にやったことを列挙してみたいと思います。

旅をする

「自分探し」などではなく、こういうときしかまとまった時間をとって旅とか出来ないよなと思い、色々計画を立てました。

当初は東南アジア各国を回ろうと思ったのですが、紆余曲折を経て、結果的に行ったのは「日本」でした。。。いつでも行けるじゃん。

まあ、奥さんに自分が育った国を見せられたので良しとします。

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主な目的はまさかのFUJI ROCK参戦

仕事をしなければと思い始める

「何もしない」と言うのは結構苦痛なもので、もっとゆっくりしようと思っていたのですが、だいぶ早い段階で、そろそろ仕事しようかモードになりました。

​また、ウソのような話ですが、「仕事をしないと収入を得られない」ということに今更ながら気づき、急に恐ろしくなり、真面目にどういう仕事をするかを、この頃真剣に考えだしました。

起業家の先輩に会う

私のそれまでのキャリアはずっとエンジニアで、「作る」ことが専門で、商品を自分で売ってお金を稼ぐという仕事をしたことが無いということに、この段階で気づきました。

周りの起業家の先輩方に手当たり次第連絡させていただき、商売の仕方を色々学ばせていただきました。

皆さん本当に忙しい方々ばかりなのですが、時間をとっていただいて本当に感謝しています。あの時の色々な気付きが今のベクトルを決めたと思います。

本を読みまくる

諸先輩方にお話を色々伺い、自分が向かうべき方向性がある程度見えてきたところで、スタートアップそのものと、ファイナンスに関する知識が圧倒的に足りていないことに気づきました。

知識を身につけるときには私は必ず本を読見ます。この時も本を沢山読みました。読むべき本も諸先輩方にご教示頂きました。

今でも「起業のファイナンス」と「起業のエクイティ・ファイナンス」はバイブルです。

コワーキングスペースに行く

ビジネスアイデアのブラッシュアップと、一緒にやってくれるチームメンバーを探そうと思い、いい方法を考えていました。

その時にある方から、コワーキングスペースに行ってみるといいんじゃないかと助言をいただき、行ってみました。

この時たまたまいた、そのコワーキングスペースのファウンダーに、当時やろうと思っていたベトナムの家庭料理のビジネスアイデアを話すと、

「Oh my god...実は俺も似たようなアイデアがあったんだけど、それを形にできる人が見つかってなくてアイデアで止まってたんだ。一緒にやらないか。」

的な話になりました。

「いいよ。」と答えました。

※この文面だけ見ると怪しい人に見えるかもしれませんが、すごくちゃんとした方というか東南アジアのスタートアップ界隈ではかなり顔の広い方です。

昼夜を問わずコードを書く

彼と一緒にサービスを作ることになり、彼がビジネスサイド、私が開発サイドの役割分担で進めることにしました。

メンバーは2人だけなので、私が自分でコードを書くしかありません。なので、この時期はひたすらコードを書いてました。

プログラムを書く人には結構賛同してもらえると思うのですが、プログラミングは意外に夜のほうがテンションあがったりするので、文字通り昼夜問わずコード書いてました。この頃は楽しかったです。

走り込む

生活サイクルが乱れてきたことに恐怖を感じ始めました。

その頃ちょうどある方からベトナム中部のダナンでマラソン大会が開かれることを教えていただき、朝近くの公園を走り、その後仕事を始めるという生活サイクルに切り替えました。結構痩せました。

やっぱり自分でサービスをやることにする

さて、先述のサービスですが、もうひとりの彼が忙しかったのか何なのかわかりませんが、ほとんど仕事してくれず、あまり2人でやっている意味を感じられなかったので、私一人でやらせてもらうことにしました。

これが、昔弊社が提供していたサービスの一つ、Cookstarの始まりになります(マネタイズがうまくいかず、今は閉じています)。

各家庭を訪問する

Cookstarはベトナムの家庭料理にもっと「発見」を届けたいと思ってはじめたサービスなのですが、それまでほとんど外食だったので、ベトナムの家庭料理というものをあまり食べたことが無いことに気づき、家庭訪問をさせていただくことにしました。

その模様はこちらの記事に認めていただいています。是非とも、一生懸命作り込んだ巨大しゃもじをご覧いただければと思います。

知り合いや、知り合いの知り合いのツテで協力してくれる家庭を募ったのですが、みんな本当に温かくフレンドリーに迎えていただき、ベトナムっていい国だなぁとしみじみと感じたのを覚えています。

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Cookstarのニーズがあるかを調査するための家庭訪問。
美味しそうな料理が並びます。

働く場所を転々とする

Cookstarも自分一人では開発しきれなくなり、開発チームメンバーを迎えることにしました。

こうなると、集まって仕事をする場が必要になってきます。ただ、この時点ではまだ法人登記もしておらず、当然オフィスに相当するものもありませんでした。うちのアパートは狭くて使えませんでした。

なのでこの頃はカフェで集まったり、チームメンバーの旦那さんのオフィスを借りたり、知り合いの会社のオフィスに間借りしたりと、職場を転々としていました。

特にオフィスの場所を貸して頂いた皆様、本当に感謝しています。あの時の御恩は一生忘れません。

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ベトナムでビジネスを始めてよかったと思うこと

記憶を一生懸命振り絞り、時系列に並べるとこんな感じだったかなと思います。

だんだんお金がなくなり、チームメンバーで受託開発をやろうと決め、名刺が無いと営業が出来ないということで法人を登記しました。

結果的にベトナムでビジネスを始めて、私はラッキーだったと思っています。

育ち盛りの市場環境で仕事できる

ベトナムで働くことの一番の魅力はやはりこれだと思います。

知り合いの会社もどんどん成長していますし、負けてられないなと、常に刺激を受けます。

街にはどんどんビルが立ち、電車の工事が進み、これから大きく成長する様が目に見えるのが楽しいです。

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ハノイ旧市街の風景。
どの道もこんな感じで賑わっており、エネルギーに満ち溢れています。

とりあえずなんでも安い

経営者にとって、固定費の削減は非常に重要な課題だと思います。

ベトナムは日本に比べて物価水準が1/4程度なのでなんでも安く(例外はありますが)、その点は日本に比べて経費削減は格段に楽だと思います。

また、万が一会社の経営が危なくなったり潰れてド貧乏になったとしても、とりあえず最低限の生活は維持できそうなので、そういう意味でリスクヘッジになります。

エンジニアがたくさんいる

日本ではエンジニアの枯渇が非常に深刻な問題になっています。エンジニア採用に非常に手こずって会社さんも多いのではないかと思います。

一方でベトナムは国策でエンジニアを育てる方針を打ち出しており、若くてハングリー精神のあるエンジニアがどんどん育ってきています。

彼らはまだまだ経験は浅いものの、頭の回転が早く、新しい技術もすぐに習得出来ます。ここ最近のベトナムオフショアブームで採用が難しくなってきてはいますが、ベトナムは日本と違って人口が増えているので状況が違います。

タイムマシーンビジネスをしやすい

日本にあってベトナムに無いサービスはたくさんあります。ベトナムのカルチャーにマッチしうるサービスを上手く選べば、日本ですでに成功しているビジネスモデルをそのままこちらで始めるということも比較的やりやすいです。

これはいわゆる「スタートアップ」ではありませんが、起業という面では日本より選択肢が広いと思います。

パーソナルブランディングしやすい

ベトナムに駐在している日本人はたくさんいますが(参考までに在留邦人は約1.5万人だそうです)、ベトナムで起業している日本人は多くないです。

弊社日本法人は以前福岡にあったのですが、「福岡の会社でベトナムを中心に東南アジアでソフトウェア開発をやっている人」はほとんどいません。

そのような背景から、ありがたいことにベトナム関連で何か話があるとお声がけいただけることが結構多くなりました。

最初からグローバル思考になる

我々はビジネスのベースがベトナムにあり、オフショア開発事業以外は基本的に他国展開する前提で考えています。その主な理由は下記になります。

・ベトナム市場だけでは小さすぎるので、少なくとも他の東南アジア諸国をターゲットに入れる必要がある。
・自分自身が外国人なのでベトナム市場というものを客観的に見ており、自然と他の国に横展開するにはどうすべきかという思考が働く。

メンタルが鍛えられる

ベトナムで働いていると、想像だにしないことがいつも起きます。

当然イライラすることもありますが、人間とは不思議なもので段々そういう環境に慣れてきます。そして、ちょっとしたことでは動じない人間に自然となっていきます。

同調圧力がない

最近気づいたことですが同調圧力が無い、あるいは、感じる必要がない環境であるということも海外で働くメリットの1つだと思います。

これは特にベトナムに限ったことではないかもしれません。

ベトナムで働いている限り自分自身は外国人なので、その時点で周りと一緒である必要がありません。ちょっと変なことをやって周りから何か言われていたとしても、どうせ自分には理解できないので周りの声は気になりません。

海外で働くことの心地よさとは、この点が一番大きいんじゃないかと最近では感じています。

飲みニケーションできる

ベトナムでは普通に仕事後の一杯やったりします(ベトナムの場合一杯では確実に終わりませんが)。

お酒が入ると話も進みます。100%言葉が通じるわけではない環境下、日本人にとってはやりやすいんじゃないかと思います。

なんならメンバーがいつの間にか段取りしてて、「今日は18時にここ」みたいな感じで突然(?)案内が来たりします。


ベトナムで仕事をしていて困ること

ポジショントークとばかりにいいところをたくさん挙げてみましたが、当然大変なこともたくさんあります。

朝令暮改で法律がグレー

ベトナムの法律は頻繁に変わるので、つい先日まで出来たことがいつの間にかできなくなってたりします。

日本だと情報をキャッチしやすいですし、自分で調べることも出来るかもしれません。

しかし、ベトナム(語)では自分で調べるのはハードルが高すぎるのでスタッフに任せるしかありません。ウラを取るために弁護士事務所や会計コンサルなどに確認しても、各々意見が割れるというのはザラにあります。

そのような環境下で、社長として最終的な意思決定を下すのが難しい場面は今まで何回もありました。

資金調達が難しい

色んな意味で資金調達が難しいです。

まず、出来たばかりの会社がベトナムの銀行から借り入れするのはほぼ不可能です。補助金の類もありません。

スタートアップの場合、海外の投資家がベトナムに目を向けてもらえる機会はなかなかありません。最近はスタートアップのイベントが増えてきましたが、それでもまだまだ資金調達にいい環境であるとは言えません。

コミュニティやイベントが少ない

情報収集や人脈形成にはコミュニティやイベントへの参加が重要ですが、ベトナムではまだまだ数が少ないです。

むしろ自分たちでオーガナイズしてしまったほうが早いです。

最近は様々なイベントが開催され、Facebookイベントでシェアされていたりするので、以前に比べると状況は良くなっています。

お互いネイティブではない英語

社員とのコミュニケーションも難しさの一つです。
弊社では社員とのコミュニケーションは全て英語でやり取りしています。

ソフトウェア開発プロジェクト上のコミュニケーションはそこまで問題ないですが、メンバーへのフィードバックや、会社の方針を伝える時など、「熱量」を伝えたい時に苦労します。
というか、伝わらないことの方が多いです。
顔を見ていて明らかに伝わってないときは、同じことを何回も言うようにしています。

最後に

改めて振り返ってみると、全くもっていきあたりばったりだなと感じます。。。よく今まで生きてこれたなと。

それでもこうやってビジネスを続けていられるのは、会社の仲間やお客様を始めとした、私に関わってくださるすべての皆様のおかげです。

そして、お金が必要な結婚の直前という時期に、突如会社を創ってしまった私をそのまま受け入れてくれ、「とりあえず3年は絶対諦めるな」と背中を押してくれた嫁には常に感謝です。

本記事は、私の会社、株式会社スクーティーの公式ブログで過去に公開した、下記記事を焼き直したものになります。



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