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カケラジ#2 子どもに”合わせる”関わり方

この記事は、YouTubeチャンネル「カケルとミチル」で2020.12.30に配信した「カケミチラジオ#2」の内容を抜粋しまとめたものです。

今回は、児童精神科医のオカタク(oktk@筋トレ×児童精神科医)と、小児整形外科医の中川先生(中川将吾 産前産後のケアをやる整形外科医)の対談です。

ーー子どもには高い適応能力があるということですが、それを踏まえて発達を見ていくときに、予防の観点は大切になってくるんですかね?

中川先生
僕ら医者はこれまでがんばって治療してきたんですけど、そういう治療は必ずしも必要なくて、予防だけをしているとその子の生活の質ってあげられるんですよね。

オカタク
僕の分野で予防の文脈が話題になっているのはやはり発達障害ですね。
発達障害に関連して「早期発見・早期療育」という言葉を最近耳にすることもあるかと思うんですが、これは一種の予防の文脈なんです

例えば発達障害の「二次障害」ということばがあります。
このことばは発達障害が元々ある子どもに何かストレス負荷が高まったとき引き起こされる二次的な障害の事を指します。(※ただし、オカタク先生はこの言葉自体はあまり好きではないようです。いつかラジオで話してもらいましょう)
「早期発見・早期療育」はこのような問題を防ぐために、早く子どもの特性に気づいて、早めに周囲のサポートを得ていきましょう、という意図が含まれています。
ただ、現状では、なんとなく本来の意図から離れて、「早期発見・早期療育」というキーワードだけが独り歩きしすぎちゃってる気がするんです。
早く見つけて、早く対策して、「この子の障害そのものを良くしよう」とか、「この子の発達障害の特性が全部よくなるんじゃないか」とか言う感じで捉えられてしまっていることもあります。

これは専門家の間でも理解に差があったり、それを聞いてる親御さんの間でも微妙に差があったりして、予防の意味で思い描かれた「早期発見・早期療育」の考え方と、実際に起きていることが少し食い違ってるところもあるかなと思っています。

ーーオカタク先生の思い描いているものというとどんな感じなんでしょう?

オカタク
「早期発見・早期療育」という言葉が最も使われるのは、発達障害の中でも、特に「自閉症スペクトラム(ASD)」の子ども達に対してです。
代表的な発達障害として、ASDと注意欠如多動症(ADHD)がありますが、ADHDは小学生(学童期)になってから指摘されることが多いのに比べて、ASDは早くて1歳半頃に兆候が見え、就学前(小学校入学前)に指摘されることが多いです。

指摘される時期が異なるのは、ADHDと聞くと「多動」っていうキーワードが浮かぶと思うんですけど、小学校という規則が多く、集団行動やじっとしていることを求められる環境に行くからこそ多動の特性が見えやすくなることもあります。

ーー保育園とか幼稚園の頃は、みんな動き回っていて当たり前の状況ですもんね。

オカタク
一方でASDは、他の人との関わりが始まる1歳半くらいでもコミュニケーションの特徴や感覚の問題が表れてきて、兆候を捉えることができます。

例えばASDの子どもの特徴の一つに視線(アイコンタクト)が合いにくいというものがあります。これは、赤ちゃんの頃からお母さんが気になって気付くこともあります。視線が合いにくいと、コミュニケーションの最初の部分が始まらなかったり、非言語的なコミュニケーション、言葉以外のコミュニケーションを見逃しちゃったりすることもあります。そういった特徴に早く気づいて、関わるようになると、お互いのコミュニケーションが進むきっかけになりますよね。

ーーそういうものなんだと本人も周りも早く認識した方が、合わせていけそうですね

オカタク
合わせていけるというのがすごく大事で、苦手な部分を直すとか、苦手な部分を修正するというのはすごく大変なので、そうじゃなくて、子供のペースに合わせることがすごく大事なんですよね。

だから療育というのを「早く良くする」というイメージで捉えてほしくないなというのはありますね。

体の分野に関しても、中川先生は、子供のペースに合わせるとか子供の環境を整えていくことが運動発達にはすごく重要だっていうことをおっしゃっているので、そういうところが非常にうまが合うんですよね。


ーー早期発見・早期療育の考え方は、小児整形外科の分野にも通じるところはあるんでしょうか?

中川
発見を早くするっていう話に関しては、どれだけ早く発見しても、そこで障害というものができてしまっているので、それでは遅いと僕は思っているんですよね。

心と体、いろいろ僕はつながってると思っているので、もっと発達段階からかかわっていくことがどちらにとっても大切かなと思っています。
赤ちゃんが生まれてからいろいろなことを吸収していく中で、自分の思い通りにならないことだとか、好きじゃないことをやらなきゃいけない経験が出てくるわけじゃないですか。
そこの乗り越え方っていうのを間違えると悪い方向にいっちゃう
んじゃないかなと思ってるんです。

だから、そこのアシスタントというかサポートを私が専門としている運動の方でうまく整えてあげる。
どうやって動きかたを覚えるかとか、こういうときにはこうやって動くんだよとか、もしくは自分の得意なことを見つけたりとか、そういったことを周りがサポートできる体制を作ることが大事かなと思ってます。

オカタク
中川先生も、子どもたちが、できないことや苦手なことをして嫌な経験を積んだ結果、チャレンジする気持ちを見失ってほしくはないという気持ちがきっとあるんですよね。

「嫌だからもうやらない」ってなってしまうと、結局、欠けてる部分があってもその他の部分で補える可能性が失われちゃうんですよね。
他のところが生かせて進んでいけるはずのところが、どうしてもない部分とかできないところに焦点が当たっちゃうと、できるはずのこともできなくなっちゃうというのを一番防ぎたいんですよね、中川先生も。

中川先生
その通りですね。

ーーオカタク先生が中川先生の話全部とっちゃいましたよ笑

オカタク
いやいやこれも補い合いです笑

カケミチラジオ(YouTubeチャンネル「カケルとミチル」)
「生きづらさ」「育てづらさ」などをテーマに、児童精神科医オカタク(oktk@筋トレ/児童精神科医)が様々なゲストを迎えて毎週水曜夜に配信中。
ゲスト:小児整形外科医 中川将吾先生
Twitter 「中川将吾 産前産後のケアをやる整形外科医
note  「ファミリハつくば

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