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「よい着眼点よりする廃物利用は、十分高尚な目的をもっている仕事である」

 「安いから」「特売だから」とか、または「一目惚れして」「ちょっとあると便利かも」などといった理由で、元々の計画もなく何かを買ってしまうことはありませんか?
 そうやって購入したものが、果たして、本当に使われているでしょうか。もしかしたら、家の片隅に眠っているかもしれません。どんなものでも、目的や役割がちゃんと持たせなければ、それは廃物(役に立たなくなったもの、用いられなくなって捨てるもの)になってしまいます。

廃物利用の意味
 ただ倹約の目的をもってのみ、廃物利用に注意するとしたら、もともと廃物のことですから、その利益は知れたものでありましょう。むしろかれこれと気をつかっただけが損になるかもしれません。しかし私どもの家の中は、数多くの無用な道具や品物、一口にいえばすたりものがあちこちに散在しているためにとかく乱れがちになります。もし家内に一つの廃りものもなく、どこのすみにおいてあるものでも、みなそれぞれのたしかな目的のために用意されてあるものばかりなら、そこにおのずから家内の整理が出来ているのです。かかる家は必ず気持ちよく楽しい家です。
 いいかえれば家内の整理は廃物をなくすることです。一足の役に立たない靴下ができたら一日もそのままにしておかないで、すぐその始末を考えなくてはなりません。ひらいて雑巾ぞうきんしんにするときめてしまえば、そのふるい靴下には、雑巾という新しい役目ができたのです。すなわちそれはすたりものではありません。子供の唐縮緬とうちりめんの着物のきられなくなったものは孤児院にやるとか、あるいはよいところを切りとって、必要のあるまできれ箱にとっておき、あとはほそく裂いて障子はたきにつかうとか、敷き物を織るときの横糸にするとかいうふうに、それぞれに処置します。一の薪をほどいたときに、そのくくってあったなわに対する注意をおこたったら、その縄がすぐに役目をもたないもの、すなわち廃物になって、あたりに散らかります。私どもはまずこの縄から、燃やすとかたわしにするとか始末をつけてかからなくてはなりません。中には利用の出来ないものもありましょう。それは早速ごみために運ばれなくてはなりません。私どもが家の中で終日さまざまの仕事をする間に、何ほどこの種の廃物をつくり出すかしれません。そしてこのつくり出した廃物によく気がついて、すぐに新しい役目を見つけてやって、廃物でなくしてしまい、見事に家の中を整理して、しかもまたこの数々の廃物利用の工夫によって、さまざまの重宝なものが得られるならば、たとい金銭上の利益は少なくとも、その楽しみは大きいものであります。ことに子女のしつけの上に、種々の益をなすことを考えると、よい着眼点よりする廃物利用は、いわゆる吝嗇家のすることではなく、十分高尚な目的をもっている仕事であると思います。

羽仁もと子著作集 第9巻『家事家計篇』第9章収録「買いものについて」内「廃物利用の意味」より

 私たちの生活の中には、どれくらいの廃物があるでしょうか。その「廃物」とは、目的や役割がはっきりしないものだと、羽仁もと子は書き記しています。
 本当に必要がなく、ゴミだと言えるものは捨て、包み紙や袋といったものは再利用したり、衣類などは誰か必要な人へ贈ったり、リサイクルショップへ売りに出したり、いろいろ方法はあります。ただ、その物の存在に気づかずに、放置してしまうことで、まだまだ使えるものであっても役目も与えられないままとなり、「廃物」になってしまいます。
 だから、家の中にあるものをしっかりと把握し、役目を持たせることで、家の中が自然に整理できるようになります。そのためには、家に迎え入れるときに、ちゃんと役割を持たせることです。使われなくなった物は、できるだけ早くに判断をして、始末をすることも必要ですね。


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