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光熱費にあらわれる「意思あるお金の使い方」

 「家計簿をつけて家族の夢、また家族それぞれの夢を実現する」。家計簿をつけることは、それぞれの家庭らしく、それぞれの人らしい生き方の基盤をつくることにつながります。そうした「意思あるお金の使い方」のほか、家計簿を通して社会とつながりたいという使い方もあるようです。そうした例をふたつご紹介します。

光熱費で、社会とつながるAさん

 働き盛りの夫が、急逝して5年。一人娘は就職して独立、一人になって、今後の人生をどのように送ろうかと考えたAさん。
「私が現在生活できるのは、社会(遺族年金)によって支えられている」と、経済的に安心して生活できることに感謝し、人と自然が共存できる暮らしに少しでも貢献したい。そこで、まず環境に直結している光熱費(電気・ガス代)を見直し、できることを考えました。

環境にやさしい、光熱費軽減を実践

電力会社を選ぶ:原発のない社会を目指して、環境負荷の少ない地元の電力会社を選択。
川を汚さない:普段の洗濯は、重曹やセスキなどでエコ洗濯。食後の食器は油汚れなどを拭き取ってから洗う。
ガス使用量12%削減を目標に:鍋帽子(注)を活用。
近所はなるべく自転車で移動:CO2削減のために自動車から自転車へ(健康にもよい)
電気の使用量を確認:早寝早起き、つけっぱなし、使わないときにプラグを抜くなど
注 鍋帽子は、火からおろしたばかりの熱々の鍋にかぶせる保温調理グッズ

社会のために公共費(寄付)で支援を

 Aさんがお金の使い方を考えたときに思い浮かんだのは、家庭は簡素に 社会は豊富にという羽仁もと子の言葉でした。環境保全や平和に目を向け、社会に貢献したいとの願いから、共感する団体への寄付を公共費の予算にとるほか、以下の活動支援のボランティアをすることにしました。

① 森林、動物などの自然保全活動(会員となるほか、支援ボランティアも)
② セラピー犬普及の募金など
③ ユニセフや、国際協力NGOのマンスリー会員
④ 自然災害の義援金

「自然とつながる生活」を考えるBさん

 自然が好きで、植物について学び、園芸誌の編集の仕事を得たBさん。結婚して、夫の転勤で退職。息子が5カ月のときから、「羽仁もと子案家計簿」をつけ始めました。息子には障害があり、夫は障害を持つ人の働く場が増えることを願い、なんと40歳を前に退職、税理士の資格を取ったのです! 障害者の生活設計の助けとなる仕事を、と考えてのことでした。家計簿で収入1年分の生活準備金を貯蓄していたので、夫に「勉強に集中して」ということができたと、Bさん。それから1年、ほとんど収入がないものの、大きな旅行はやめ、純生活費24万円で3人暮らしました。(2年後に税理士事務所に就職し、開業)

 ある秋のこと、Bさんは強い風の中、マリーゴールドの黄色い花にショウリョウバッタがとまっているのを、スケッチし、思ったことを詩にすると、どんどん楽しくなってきました。家の近くには、田んぼや梨畑、斜面林などがあり、いろいろな植物が見られます。少しずつ絵を描き始め、地元のギャラリーに作品を出すまでになりました。そして、身近な植物を観察し、ペンと色鉛筆とで描いて紹介する「のはら新聞」をつくることを思い立ちました。手書きの新聞を周りの方に手渡すうちに、「のはらくらぶ」の活動も始まりました。月1回くらいのペースで集まり、野原で過ごし、自然を観察し、発見したことを表現(それぞれが見つけたことを話す)しています。

電気代予算は月2500円

 本橋成一さんの「チェルノブイリ・いのちの大地」というスライドを見てから、原子力発電をやめなければという思いで、Bさんは電気使用量を減らす努力をしています。エアコン(風のよく通る家)、電子レンジはありません。地デジ化を機にテレビもやめました。19年間使った冷蔵庫を省エネ型に買い換えたら、使用量はさらに減少し、アンペア契約も30Aから20Aに。
 消耗品は、ラップやアルミホイルは、3〜4年に1本買う程度。使わないでできるかを考えます。野菜が余ったら、切り口を下にしてお皿に伏せたり、おかずが残ったら、蓋付きの小鉢を活用しています。住居用洗剤は重曹とクエン酸、野菜くずは近所の農家で堆肥にしてもらうので、ゴミ袋も減っています。
 食費は、生産者を守りたいという思いから、国産のもの、地元の農家のものを購入。外食はせず、お弁当を持参するようにし、調味料はよいものを選び、できあいのつゆやドレッシング、だしのもと類は使いません。

「家族の衣食住のすべてが、資源や環境に影響をしていると思うとき、予算立てを通して、生活を見直してきたい」とBさん。太陽と共にある生活をしながら、いろいろな生き物がずっと暮らしていける地球であることを願っています。

まとめ お金を「貯める」から「生かす」へ

 光熱費や公共費での「意思あるお金の使い方」のほかに、「市民ファンド」への出資という形での、お金の生かし方も増えているようです。月刊『婦人之友』で、山田厚史氏は、「新しいお金の流れを ーー 投資で社会を変える」として、「そろそろ、お金をためることより、活かすことを考えたい。目先の利益だけを見ずに、いろいろな生き方が出てきて、そういう人たちを地域社会で応援するようにお金を回す仕組みが生まれてもいいはず」と書かれています(2006年12月号「『世界のお金』と『うちのお金』」)。東日本大震災、原発事故以降、自然エネルギー利用が見直されて、地域の自然エネルギーを生かした発電事業のファンドなどもいくつも生まれました。投資ですから、リスクを伴いますが、こうした活動を支援するのも「意思あるお金の使い方」のひとつですね。

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