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【詩】逡巡する春

風の騒ぐ 夜のひとときは
早咲きの海棠が ただ優しく 今を過ぎて……
そこに昏い影が ひとつの路として
みすぼらしい春を 僕に繋いだりする

橙色に薄桃色に 薄明の淵から
溢れた夜の ひときわ温かい声が
僕をあやすように ―― あるいは
目の前の 花の間を吹き過ぎる

散って 水溜りのなかを
花のひとひらが くるりと踊るよう……
僕の海棠は夢のなかに 失われたように

僕は暗闇を見据える しかしその奥に
風は轟々として ひとつの街灯が
消えたり 灯ったりした

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