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【散文詩】宵と灯(序)

朝は来るようです。東の空に赤らんだ雲の、その頬の丸みに、僕は幾何学的な魅力を感じています。やわらかな形は次第に小さな礫になって、それは僕が捨てた宝石の欠片のように綺麗でしょう。まだ薄暗い森の中に、虫の声も葉の音も響き過ぎると、僕は森の入り口に立って、それを〈春の嵐〉と形容しましょう。さて、薄明るい時分の拍動に、僕は耳を浸しています。雪のように白々とした陽射しが、森の奥深いところのひとつの新芽を弾いています。僕は温かい気持ちになって、ゆっくりと、透きとおった風を肺に吸わせると、季節というものが、次第に分からなくなるようです。

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