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【著作権の基本6】正しい知識を身につければ創作が楽になる

著作者人格権と著作権」で触れたように、著作権はとても強い権利です。何の登録も必要なく、作ったらすぐに様々な権利が発生するものです。

「それではさすがに困る場合がある」ということで、例外としての使用方法が決められています。例外に定められている使用の場合には、自由に著作物を使うことができます。

日本の著作権法は、都度例外を決めていく建て付けになっているので、とても規定が複雑で、条文もわかりにくくなっています。ここでは覚えておいたほうがよさそうな例外規定を5つくらい触れてみます。いや6つ。

許諾・譲渡

まずは、著作権者に「使っていいよ」と許諾を得ることができれば使えます(第六十三条)。
この許諾を得る場合は、口頭であってもよいことになっています。

ですが、あとから問題が生じないように、できるだけ利用の形態を詳しく説明した上、文書で、その利用の仕方、許諾の範囲、使用料の額と支払い方法などを確認しておくのが望ましいと考えられます。

さらに、著作権を譲り受け自らが著作権者となることもできます(第六十一条)。
譲り受けた権利の範囲内で自由に著作物を利用することはもちろん、他人に著作物を利用させることもできます。なお、著作権のすべての譲渡のほか、支分権ごとの譲渡(たとえば、複製権のみの譲渡)や期間、地域を限定した譲渡などの方法も考えられます。

引用

次に、良くも悪くも一番言葉として使うのが、「引用」という規定です(第三十二条1項)。
引用とは、他の文章や事例を引くことを言います。著作権法的には、「自己の制作の中で他人の著作を副次的に紹介する行為」が引用となります。

たとえば何かの作品の批評をする場合、もととなる作品、つまり他人の著作物を何らかの形で載せられないと批評のしようがありませんよね。

典型例としてはこうした事態を想定して作られた規定です。著作権法第三十二条1項で定められていますが、条文はわかりにくいので、割愛します。後に触れる「パロディ・モンタージュ事件」等の裁判を経て、現在では、引用が認められる要件について、概ね以下のような整理がされています。

a 引用部分が公表された著作物であること
b 引用部分と自己の著作物の区分が明瞭であること
c 自己の著作物が「主」であり、引用部分が「従」であること
d 「引用の目的上正当な範囲内」であること
e 必要な場合に出所を明示すること

どこが引用されているか明確に分かれていて、引用されている部分が、あなたが創作する著作物全体のボリュームに対して量が少なく、作品名と作者の名前がはっきり書いてあれば、まあ大丈夫でしょう。

とはいえ、この引用をしっかりできなくて、インターネット上で炎上した案件もあります。とても気をつけなくてはいけない部分だと思います。次のところでもう少し書きます。

私的使用のための複製

私的使用とは、テレビ番組を録画予約しておいて後日自分で録画した番組を見る場合などのように、家庭内など限られた範囲内で、仕事以外の目的に使用する本人が複製する場合の例外です。

インターネットを通じて得た著作物をダウンロードしたり、プリントアウトしたりすること(いずれも「複製」に該当する)にも、この例外は適用されます。また、学校の児童生徒などが本人の「学習」のために行うコピー(コンピュータ、インターネット等の利用を含む)も、この例外の対象です。

注意しなくてはいけないのは、この「私的使用」の範囲は案外狭いということです。
たとえば、個人的に使うツイッターに他人の著作物を載せる行為は、複製だけではなくて公衆送信(インターネット掲載)を伴うので、この私的使用の範囲外になったりします。

あくまで私的使用のための「複製」だけが例外として認められているということを覚えておきましょう。

次に例外として、認められているものを紹介しておきます。

付随(ふずい)対象著作物の利用(第三十条の二)

写真の撮影、録音、録画などの際に、撮影等の対象とする事物から分離することが困難なため、いわゆる「写り込み」の対象となる他の著作物(付随対象著作物)は、当該創作に伴って複製または翻案することができるという規定です。近年の法改正で入りました。

後で触れますが、著作権法的にはOKでも、個人情報の保護の観点や、プライバシーの観点、また、商標法の観点からこうした著作物についての使用ができない場合もありますので注意が必要です。

営利を目的としない上演等(第三十八条)

営利を目的とせず、観客からも料金をとらず、出演者についても無報酬である場合は、著作物の上演・演奏・上映・口述(朗読)などができるという規定です。観客と出演者のどちらも無報酬であるという必要があります。入場無料のチャリティーコンサートでも、出演者には報酬が支払われることはままあります。この場合は、同条の例外には該当しないので、原則どおり許諾を取る必要があります。

フェアユースという考え方もある

例外についてはまだまだいろいろな規定がありますが、ひょっとすると、「フェアユース」という考え方を聞いたことがあるかもしれません。
アメリカ等の国で認められている概念で「公正な利用」に関しては、著作権の例外とするという考え方です。

何が「公正な利用」に該当するかは、いくつかの要素に従い総合的に判断をしていきますが、日本の著作権法において例外と定められている「引用」であったり、「私的使用目的での複製」などは、この「公正な利用」に該当する場合が多いと考えられます。

日本には「フェアユース」の条項はありませんが、観点として「公正な利用」のために、必要なものは例外を定めているということを知っておくとよいかなと思います。

▼出典
『駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』
(川上大雅・玄光社)
キャラクターデザイン=山内庸資


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