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【コンテンツ制作Q&A3】漫画の二次創作物を即売会で販売するのはOK?

いわゆる「二次創作」が世の中にはあふれています。こうした流れにのって、自分も好きな漫画をもとにした同人誌、フィギュア、コスプレ衣装などをガンガン作ってしまいました。
これら二次創作によって作られたものを販売することはOKなのでしょうか。

法の解釈を含む説明

同人誌に描かれる漫画、フィギュアの制作、コスプレ衣装の制作、その多くは漫画等原作の「翻案」に該当します。とすると、これらの販売には原作者の許諾が必要となるのが原則です。
ただ、これではおよそ二次創作についての販売が認められないことになってしまいますので、二次創作に関わる人々は様々な工夫をしています。

コミックマーケットでの取り扱い

世界最大の同人誌即売会であるコミックマーケットでは、「著しく知的財産権を侵害するもの」については提供が認められていません。二次創作はただちに「著しく」知的財産権を侵害するものにはならないという考えが背後にあるのかもしれません。同準備会が発行する「コミケットマニュアル」には「頒布・提供禁止物」として次のような明記があります。

頒布・提供禁止物
法令に触れる物。ワイセツ図画および児童ポルノ、著しく知的財産権(著作権、商標権等)を侵害する物。薬事法・食品衛生法に抵触する物(ただし、食品業者が衛生的な環境で製造・包装、密封した、アルコール類以外の物は頒布可能です)。
※こうした法令を把握し、注意をして下さい。また、抵触していなくても製造物責任法や民法に基づき、損害賠償責任を負う場合があります。
(コミックマーケット準備会『コミケットマニュアル』2013年)

イベント開催日のみの許諾・当日版権

原作者や原作メーカーが関与するような場合には、当日版権の仕組みが取られることもあります。
版権許諾というのはアニメや漫画、ゲームや特撮などの商品化を認めるということですが、通常これは企業との正式な契約が必要で、個人を相手にしてくれることはほぼありません。それをイベントの実行委員会を通じて、イベント当日のみ個人に商品化権を正式に与えてくれるというものです。

たとえば、フィギュア等の販売を行っているワンダーフェスティバル(ワンフェス)において、「ディーラー(出展者)のみなさんへの注意事項」として以下のような記載があります。

基本事項
 1  当日版権を取得している商品は、当イベントのみでの展示、販売を許
    可されています。当日版権商品のうち、会場内で受け渡しができない
    商品の売買は一切できません。(通信販売・予約販売を含む)
 2  版権を取得していないキャラクター使用商品は、いかなる場所、事情
    にかかわらず販売できません。これらの商品はすべて違法商品とみな
    され、売る側も買う側も刑事罰の対象となります。
 3  他者による造形作品(ガレージキットや玩具など)の一部、もしくは
    全部を無断で流用して作られた作品を自身による作品として展示・販
    売する行為は、「盗用・模造行為」と呼ばれるものです。上記に該当
    する作品を展示・販売するディーラーは、当イベントへの参加を認め
    られません。
(ワンフェスウェブサイト「ディーラーのみなさんへの注意事項」https://wonfes.jp/safety/fordealer/)

これは、主催者が一括で著作権者からの販売許諾を得て、これを参加者が参加費として支払い利用するものです。こうした仕組みにおいて、個人それぞれが著作権者から許諾を取るというわずらわしさから解放する仕組みを作っています。

原作者・メーカーが許諾不要な範囲を広めに設定する

また、原作者やメーカーが許諾不要な範囲をあらかじめ広めに設定することがあります。こうすることで、利用する側も許諾する側も、煩雑な作業が減り、お互いに容易に著作物を使うことができるようになります。

こうした一例として、「初音ミク」などのキャラクターを生んだクリプトン・フューチャー・メディアでは、同社が独自に定めた「ピアプロ・キャラクター・ライセンス」のもとに、利用許諾の範囲を広げつつあらかじめ設定しておくという試みを行っています。まさに現実と著作権法のギャップを埋めるための試みということができましょう。

ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)について
一般に「版権物」と称されるキャラクターについて、原画をそのままのかたちで、またはみずから描いたイラストなどのかたちにして(いわゆる「二次創作物」)、その権利者の許諾がないままインターネットなどで公表することは、著作権法などの法律によって禁じられています。『初音ミク』などの当社キャラクターも、法律によって同じように扱われます。

一方、クリエイターにとって、自ら汗をかいて制作した作品を、それが二次創作物であってもインターネットなどで公表したいと思うことは自然な願望です。当社も、営利を目的としない利用については、当社のキャラクターをできる限り使っていただきたいと思っています。

そこで当社は、クリエイターと権利者双方の願いと、現行著作権法とのギャップを埋めるため、営利を目的とせず、かつ、対価を受け取らない場合(非営利かつ無償の場合)の当社キャラクターの二次創作物の利用について、ピアプロ・キャラクター・ライセンス(以下、「PCL」といいます)という利用許諾契約を用意いたしました。
(ピアプロウェブサイト「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)について」https://piapro.jp/license/character_guideline)

注意すべきポイント

日本のコンテンツ文化を支えてきたのが二次創作であることには誰も疑いがないでしょう。

たくさんの二次創作に囲まれて生活をしていますし、これからもたくさんの二次創作コンテンツが生まれてくるでしょう。ただ、その生まれてくる二次創作のどれもが権利的には裏付けを得ているものではなく、脆弱な地面の上に乗っかっているようなものであることは理解をし
ておく必要があると思います。

原作へのリスペクトがあれば大丈夫という見解もよく見ますが、法律はそうなっていませんし、実際に問題となっている事例も散見されます。注意深く、でも大胆に創作を進めていくことが非常に大事だと思います。

Answer

NG!
参加するイベントや店舗の扱い、とにかくいったんは細かい規約を読もう!

▼出典
『駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』
(川上大雅・玄光社)
キャラクターデザイン=山内庸資


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