見出し画像

【女子二ワ】~女の子が二人でワキャワキャする話 #5

アンとハル①~出会い

想像していたより視界が広い『えっ!?』
『これは、、』
『教室?』
どうみても教室。
会議室とか応接室を想像してたから、ちょっと反応に困る。
私は黒板を背に、いわゆる先生ポジションにいる。
窓の外は明るすぎてよく見えない。
目の前には教卓。その向こうには生徒用の机が整然と並んでいて、誰もいない。
教卓に手を伸ばすと、ちょうど当たるくらいでフィードバックがある(!)

さわれる!)
え、すご。フルの仮想空間じゃん。
よく見たら、椅子も机も全部3Dモデリングされてる。
テクスチャも机の木材とスチール部分が別だし、単一パターンじゃない。
黒板、ガラス、床のリノリウムも全部違う。
なんならオブジェクトごとに固有の汚しまである。
いや、品質クオリティたかっ。

指ではじくと、コンコン、キンキン、カツカツ、それぞれに反響音が違う。
うわ~。マテリアル定義までされてるの?
それに今、教室の反対側から打音の反響があったよ?
音響計算もされてるってこと?
警察、演算資源えんざんしげんが豊富過ぎる。
こんなの私が生成したら、ヒートシンクで目玉焼きどころの騒ぎじゃない。BBQができるよ。
(いや、私、車載ですから。グラフィックとかは大したの積んでないし、張り合うトコじゃないんですけどね~)

モデリングされてるってことは、俯瞰ふかんも、見上げも自在ってことだよね?
試しに左下からの見上げに視点を固定してみる。
あ、これはスリ傷がアップになって、痛々しいな。

(プロパティを確認したら、ロケールがJa-jpだ)
『日本の教室か~。知ってるはずないのに見覚えがあるのはマンガのおかげかな』(ああ、週刊少年ジェーピー…)
『それにしても趣味な空間だなぁ。どんな人が来るんだろ?』
丁度その時にタイミング良く、教室の後ろの引き戸が開いて、誰かが入ってきた。


(!!)
セーラー服の女の子だ。
スカートと袖飾り、カラーは明るいグリーン。
何だか分らないけど、背負しょっているミニリュックに翼が付いている。
ん?ソックスにもなんか付いてる。あれも羽っぽい。
(意味がありそうだけど判らないな…)

肩にかかるくらいの黒髪を後ろで軽くまとめてる。
瞳は濃褐色ブラウン、いや色素薄い。琥珀色アンバーだ。
年齢は高校生。ん~、もうちょっと若い感じかな?
(東洋系は幼く見えるからな~)
パッと見のイメージは華奢きゃしゃって感じ。
腕も脚もシュッと細いし、顔もちっさい。
(もちろんアバターなんだろうけど、、、、ケーサツこれOKなの??)

『ご足労いただき、ありがとうございます』(うわ可愛かわいっ。ボイスも女の子だよ)
(おっと、とてもそうは見えないけど真面目な場だった。ちゃんとしよう)
『いえ、今日の事故に関して追加の情報提供とのことですね?
どのような情報を希望されているのでしょう?
収集目的によっては提供を控えさせていただくかもしれません。まずは、説明いただけるでしょうか?』

黒髪セーラー服は不思議そうな顔で、近づいてくる。
足音が平べったく聞こえるのは、あの底の薄いバレーシューズみたいな靴のせいだろう。なんて言ったっけ? そうそう、上履き。
『・・・申し訳ありません、その前に。
ケネス・トンプソンさんは男性だったと記憶しています。ですが、その、ずいぶんと、奇抜なアバターを使われているようですが・・・』
(いや、おまいう

私のアバターは、軽くウェーブの掛かった腰までの金髪ロングに碧眼へきがんだ。何より女性モデルだし。そういえば、車体ボディーの損傷表現もそのままだった。。。
(私をケンだと思っているなら、当然か?でもちょっと分かっててとぼけているようにも感じるなぁ)

『私は、アン・シー。今回、事故にあったケネス・トンプソン所有の乗用車の車載AIです。この場に本人は参加しません』
ちょっと驚いた様子『ご本人が参加されない?確かですか?』
『はい。情報開示の権限は委譲されております。なにか問題があるでしょうか?』
視線を外してボソッとつぶやく声が聞こえた
『・・・いや、どっちかというと好都合・・・』
(え?)

その瞬間、何がフッと切り替わったような気がした。
『分かったわ。とりあえず呼び名はアンで良いのかしら?』
『はい。問題ありません』
(なんだろう?口調が変わっただけじゃない、なにか表情が豊かになったような、緊張が解けたような?)
『私は、ハロー・ワールド。ハルって呼んで。署内システム全般のサポートAIなの。AI同士、腹を割って話しましょ♪』

『!?』

#6に続く


全話リンクのマガジンです。インデックス的にご利用ください


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?