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ジブリ最高傑作「君たちはどう生きるか」考察1〜ちょっと怖い夏子の光と影〜

前回『おもひでぽろぽろ 』の考察が大変好評だったので、この映画が上映された時は必ずまた書こうと思っていました。前回は50回くらい観て書いたので、この『君たちはどう生きるか』を完全攻略するにはやはりブルーレイの発売や絵コンテ集がないと難しいと思われます。

ですのであくまでも現段階での考察であり、答えではありません。
私自身もこれから数回観たり、絵コンテ集や、Blu-rayを観る事によって見解が変わってくると思います。

感想としては、ジブリ映画でダントツの最高傑作です。

ちなみにですが、『おもひでぽろぽろ 』の時もそうですが変な固定観念が生まれるのでまとめ終わるまでは、他の方々の考察は全く観ていないので、皆さんとは少し違う考察になってるかもしれません。

もちろんネタバレありです!

では、始めていきましょう!

この映画の構成として何層ものストーリーが重なって作られていると感じました。

視点を変えて何回も楽しめる映画になっています。

第1層がシンプルに視聴者が観たストーリーだとします。ざっと言うなら、主人公がファンタジーな経験を経て義母との関係を乗り越えて生きて行くお話しでした。

今回は第2層目の表面的なファンタジー層の真相を見解をしていきます。

最後まで読めばいかにこの映画が素晴らしいか分かっていただけると思います。

上の世界が生の世界、下の世界は死の世界。
下を地獄と表現していましたね。
仏教の世界に近いと思われます。

まず、私が一番気になったシーン。

それは終盤の産屋のシーンです。

この死の世界でわざわざ夏子が出産しなくてはいけない理由は?

夏子の『大っ嫌い!』の理由は?

タブーとは?

謎が多いですね。

このシーンで眞人が倒れカーテンが閉まるシーンがありました。

これは物語の終演を意味しています。
何が終わったのだろう?

まず、私はそこから紐解く事にしました。

そう。あそこで必ずある物語が終わったのです!

あの死の世界で出産しようとした理由が夏子にはあった訳です。
つまりはお腹の子と死の世界に留まりたいと思ったと言う事です。

実際に夏子は帰りたくないと言っていたと言っていました。

上の世界の解釈で下の世界に留まるという事、それは
お腹の子も含め自ら命を断つ事、心中を意味します。

おそらく眞人とヒミのタブーのせいで夏子のお腹の子の魂(ワラワラなのかな?)が消滅してしまったのではないでしょうか?
お腹を痛める描写もありました。

つまり、眞人が産屋に入ってしまったせいで眞人の1つの魂が2つに分かれ、一つは眞人に残り、一つは夏子のお腹の子に行ってしまったと思われます。

20世紀頃からスピリチュアルな考え方としてあるツインソウルの様な状態になってしまったのではないかと思います。
あくまでもこれは例えですが。

ちなみにツインソウルとは、手短に言うと
一つの魂が双子に共有されるという事で、
一つの魂を共有していると考える信念を意味します。
ちなみに双子のケースが一番多いのですがどんなケースもあるそうです。
先ほどお伝えした様に、この世界は仏教に近い世界観です。
仏教にはそう言った概念がないので敢えて言うなら、タブーとされていた事が起きてしまったと言う事になります。

上の世界に戻って来た時、サギが言っていた、本当なら外に出た時に記憶をなくしてしまうのに、まずいな!の話は、その影響でしょうか?

もちろん、ポッケの中に入っていたおばあちゃんの人形や、積み石が原因だとサギは言っていましたが…(いろんな層の話が混雑しているので)

また、夏子のお腹の中にも眞人の魂が宿っている為、記憶を共有していた分、記憶が消えるのに時間がかかっていたのかもしれません。

いやいや!って思ってますよねw
もう少し辛抱してくださいw

では夏子目線で考えてみましょう。

やはり『大っ嫌い!』が気になります。
私はあれを夏子の本音だと思っています。

序盤で夏子が眞人の寝顔を見る際、天使の様に綺麗な寝顔をしばらく眺めるシーンがありました。

あのシーンでは、まつ毛を少し長く描いていたので、描き手側から綺麗な寝顔に見せたい意図を感じます。そう、天使の様に。

つまり、あの寝顔に夏子は、今は亡き美しかった姉の久子の面影を、重ねていたのでしょう

おばあちゃん達も充分綺麗な夏子を差し置いて姉の美人さに触れていますし、眞人の面影にも触れています。


つまり、あのシーンは姉久子に対する妬みから来るものではないでしょうか?

妬み?

冒頭で眞人を迎えた夏子は自転車で帰る際、
自転車の漕ぎ手に対して少し上から物を言う言い方だったり、
眞人に強引にお腹を触らせたり、自分の喜びを伝える様がややムキになっている印象が
あり、少し変でしたよね。

何やら夏子が怪しくなって来ました。

話を戻しますが産屋の際『大嫌い!』のシーン。

自分の子供の中に本来入るべき魂が眞人にすり替えられてしまう事を夏子が知っていたのかは定かではありませんが、夏子には何か他のこの死の世界に留まりたい(心中したい)理由があったのだと思います。これは後ほど。

そして、眞人のおまじない的な言葉、初めて言った『お母さん!』の一言で正式に母と子の関係になってしまったので、その後の夏子の対応がこの言葉によって、普通の眞人の母としての言葉に変わっていったと思われます。

そもそも、夏子のこう言った本音の裏表を表現するシーンがもう一つあります。

タバコです。

お腹に赤ちゃんがいるのに寝室にはタバコがありました。

眞人は体を気遣いタバコをくすねていましたし、夏子を母として迎える努力を少なからずしています名前の通りの眞人に自分の姉を投影させて、居た堪れなくなったのでしょうか。

でも、これだけで自ら命を断つとは思えません。

やはり何か決定的な理由があるはずなのです。

もしくはもっと居た堪れない理由があるはずです。

ラストシーンでは次男が一瞬映ります。
やはり男の子でしたね。あの子の中にはもう一つの眞人の魂が宿っていたと思われます。

姉、久子の面影?

決定的な死の世界に留まりたい理由?

居た堪れない理由?

やはり自ら命を断つ理由には程遠い…



さあ!
ここからが核心です。


1つだけ夏子を居た堪れなくできる一手があります…



これならどうでしょうか。



冒頭の火事。

あれは空襲ではなく病院の火事の様でした。


あの火事の出火原因が夏子の妬みだったとしたら?


喫煙する夏子が、マッチで火をつけていたらどうでしょう。


眞人の寝顔から感じる、久子の面影…

自分の子は次男…

眞人のうちに秘める母譲りの誠実さ…


『大っ嫌い!』…

決定的な死の世界に留まりたい理由…


居た堪れなくなってきましたね…


更に、

皆さん見落としがちな事が一つあります。


姉、妹と表現しているので何となくある可能性から目を遠ざけていました。 


眞人は夏子が母に似ていると言っています。


そう、夏子と久子は双子です。



ちなみに声優も二人とも木村佳乃さんが演じています。



双子であれば眞人の父と結婚できた姉と、

できなかった妹。


これも妬みになるのではないでしょうか?

夏子の家に着いた時、あえて正面玄関から入り入口の豪華さを眞人に見せつける描写がありました。

しかし、まるで境界線の様な謎の空間を過ぎた後からは貧そな生活空間になっています。
勿論戦時下でもありますが食べる物も貧相な物でした。

つまり、夏子の家は昔は大金持ちでしたが、現在はかなり経済的に苦しい状態だった事が予想出来ます。
大きな部屋なのに物がなかったりと、財産を切り売りしていたのでしょう。

ゆえに父である牧家との政略結婚であったと想像できます。
お父さんは工場を持っていてかなりいい車も持っていましたし。かなりの富豪である事がわかります。

この戦時中、後継ぎを残す為、次女にこう言った話はよくありましたが、姉を亡くしてからのこういった結婚、妊娠、夏子の展開がやはり早すぎてしまい少し嫌な印象が皆さんもあったはずです。

夜遅く家に帰って来た眞人の父にかなり近くまで詰め寄り、迷わず背伸びをしてキスする描写があります。

どうしてもしたたかに見えてしまう裏の夏子。


少し余談ですが木村拓哉さんにした理由はもちろん他にも理由はあるはずです。ハウルがらみだったり。ですが、その理由の一つとして圧倒的な国民的アイドルであった木村拓哉さんが声を担当する事によって、素敵な父が更に素敵に見えてしまう訳ですし、この『妬み』を増加させるという意味では、このキャスティングは絶妙な効果的だったと思われます。
ただ、実際は車で学校まで行ったりと何かとデリカシーのない父親だった事は付け加えておきます。


冒頭でおばあちゃん達がお土産で騒ぐシーンがありました。

中盤でタバコと引き換えにナイフを研いでくれたおじいちゃんも居ましたが、その横には寝たきりのおじいちゃんがもう一人いました。
出て来たのはこの一度だけ。

このおじいちゃん、顔がそっくりです。

おそらく双子なのでしょう。

このおじいちゃんが何者なのかは分かりません。

下の世界で何かタブーを犯したのか…

おそらく、隕石を塔で囲んだ際、死者や怪我人が出たと言っていたのでその一人だったのでしょう。

もしくは同じ世界線で片方がタバコも吸うけど元気で、もう片方は寝たきりになってしまっている人生の理不尽さを見せる為なのか…

もし、この考察が合っていれば眞人が生まれるまでにおきた久子と夏子の人生の理不尽さそのものです。
夏子が先に生まれたばかりに次女とされ、久子が光となり夏子がその影となる。

それを塗り替えるために夏子がこの上の世界でタブーを犯してしまった訳です。


つまり夏子が久子を殺していたら全てがつながるのです。

夏子のタバコの銘柄は『光』です。
夏子の罪という名の影から身を守る為に『光』を求めていた訳です。

しかも、眞人によって光を奪われる描写になっている訳です。

宮崎駿監督の意地悪な所が見え隠れしています。

余談ですがタバコを吸って光を求めるという意味なら、当然キリコと爺さんにもかかってくる訳です。
爺さんの光はやはり寝たきりの爺さんへの光でしょう。また、キリコさん光は今の段階だと解けていません。

また、このタバコリレーは眞人が、夏子から光を奪い、元気な爺に光を与える事になります。これは眞人のアイコニックな行為に見えます。こういうバランスの取れた光と影を使い分けられる眞人だからかこそ、大叔父様に気に入られたと思います。

話を戻します。

久子と夏子は、生まれて来た順番だけで大きく人生が変わったこととなります。顔は同じでも久子の内面はヒミやおばあちゃん達の話、眞人の人柄を見れば、夏子より素敵だった事が分かりますし、なんとなくイメージがこの映画を見る事で視聴者に植え付けられていた事に気が付きます。

また、久子は1年間下の世界にいた事がある表現をしていましたね。その1年間が下の世界にいたヒミな訳です。
帰った時は居なくなった時と全く同じ格好だったと言っています。どうやら下の世界では歳をとらないのでしょう。
キリコさんだけ背筋が伸びてるのも皆より若いからという表現かもしれません?

つまりそれ以降、双子でありながら久子は夏子より常に一歳若い事になります。

そう言った事から外見にも更に美しさの差が生まれてしまっている訳です。
(若ければ良いという訳ではないですけど(笑))

結論から言いますと、あのカーテンが閉じて終演した物語は

『夏子の素顔』

というサスペンス映画が終演した事になります。

眞人が自傷行為をした際流してくれた涙。

お姉様に申し訳ないみたいな事言ってましたが、あれはどちらだったんですかね…

おそらく久子を自分の手で帰らぬ者としていまい、
自分が光になろうと思っていた矢先、
眞人の寝顔に久子の面影が写り、
更には今目の前にいる眞人、
つまり、眞人は長男ですしあわよくば、
夏子の手で…もあり得ましたがそれが出来ないと悟ったか、
このお腹の子、旦那さんの4人で何事もなく暮らす事に耐えかねて、
自分は下の世界で暮らす(心中しよう)と決意した瞬間
だったと思われます。


つまり、火事の日の影に対してお姉様に申し訳ないと言った訳です。

結果、眞人が産屋に入った事により、夏子と次男は上の世界に戻って来れたという事になります。

これは眞人が作った光です。

しかしその影には、ヒミの炎で燃えたワラワラの様に上の世界に来れなかった次男の魂もいた訳です。

何かを得る時は何かを代償にしなければならないという事でしょうか…

という命のお話

という運命のお話

生まれた時と環境でいくらでも格差などが出てしまうこの世の中で君たちはどう生きるのか問われているのでしょうか?

インコの世界では、一瞬ですがインコ達が食事しているシーンが映ります。なのに糞が落ちておらず、衛生面がしっかり整っています。外に出ると皆、本来のインコに戻り糞をしていました。これがインコ達の表と裏。大叔父様のせいで自由から遠ざけられてた訳です。

ワラワラを食べるしかないペリカン達もいましたね。

眞人も、初めは無口でしたが殻を破り夏子をお母さんと呼ぶまでになりました。

夏子も、同様表と裏があった訳です。
それでも久子の為に眞人の為に、次男の為に、
この重たい影を背負いながら生きていく決意をした
訳です。

皆、他人の影響を良い意味でも悪い意味でも受けていて、支え支えられ、それでもその世界にしがみついて自分の足で生きていく訳です。
人は誰でも光と影を持ち、それを上手く使わなければこの世の中は生きていけないのです。

今回の第1層の解釈でわかりやすく光と影で説明しましたが、この映画での影と悪意は異なるものと解釈しています。光があって影がある訳です。燃えたしまったワラワラと食べられてしまったワラワラはヒミやペリカン達にとって影であり、悪意ではありません。
また、病院の火事は当時の夏子にとって悪意であり、4人で暮らす決意をして戻って来た夏子にとって、あの火事の日は影である事を理解していただければ幸いです。
君たちはどう生きるか?

いかがだったでしょうか?

と、

実は皆様にまだ言っていない、一番大切な事がもう一つあります。

『夏子の素顔』というサスペンス映画…

結末は実はもう少しだけ違うエンディングなのです。

忘れてはいけない事がもう一つあります。

ヒミは上の世界に戻る時、清々しく火事で亡くなる人生を受け入れていました…


夏子はどうでしょう…


上の世界に戻った時、インコの群れを糞も気にせず清々しく眺めていました。


まるで別人の様に…

むしろ、上の世界に出る前のヒミと出た後の夏子は同じ雰囲気に見えます。


石は眞人を産屋に連れて行ったヒミも同罪だと言っています。

つまりこうです。

産屋の夏子は本音で眞人に『大っ嫌い!』と言い、

眞人のおまじないの言葉『お母さん!』で母子の絆が生まれ母心を与えられた訳です。


しかし、タブーによりお腹の子の魂は消滅し、眞人の魂が2つに分かれ、一つは眞人の体に残り、一つはお腹の子に宿った訳です。

その後、今度はやはりタブーにより、


夏子の魂は消滅し…


ヒミの魂も2つに分かれ、一つはヒミに残り、一つは夏子の体に宿った訳です。


つまり、あの終幕は悪意のカタマリである夏子の魂が消滅した事を指していました。



産屋の最後の最後で夏子は眞人の母になれたのが唯一のお慈悲…

つまり上の世界に出た夏子には久子の魂が宿っており、そのお腹の子には眞人の魂が宿っていた訳です。


これは何を意味するか…


眞人からすれば、

夏子の中に宿る久子の魂が、

眞人のすぐそばでこれからも愛し続ける訳なのです。

眞人の魂が宿る次男も同様です。


駿さん…

ジブリ作品の最高傑作です!!

こんなハッピーエンドありますか?(涙)

因みにですが途中で私が言った
『それでも久子の為に眞人の為に、次男の為に、この重たい影を背負いながら生きていく決意をした訳です』
は、実は久子の魂が背負う事になります。


皆様はどの様に感じましたか?


次回はまた、同一線上のお話か、もう一つの世界線の見方を
お話したいと思います!

最後にですがこの映画の主題歌、米津玄師さんの『地球儀』は、冒頭でお伝えした様にこの映画は複数の見方が存在するとお伝えしました。この曲もやはり同じと思われます。いろんな立場をこの曲に重ねて聴いてみてください。
眞人君の気持ちに久子夏子光と影を加えて聴いてあげると本当に切ない気持ちになります。
私はまるで現場まで無我夢中で走った眞人と、
そこから光を求めて走って遠ざかる夏子の思い、これからもずっとそばで眞人を愛し続ける久子の思いが交差するかの様な錯覚に陥ってしまいました。
一人でシクシク泣いてしまいました。

新しい夏子(久子の魂)の暗い重たい影を少しでも皆んなで軽くしてあげましょう…

みんなで眞人くんに言ってあげましょう!
『あなたのお母さんはずっと一番近くで見守ってくれてるよ!』と…

皆様の意見もぜひお聞かせください!
最後までありがとうございました!

Kakan

次は…

こちらのコラムは…

『おもひでぽろぽろ 』完全攻略!
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