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モグラを追った、あの夏 #2

モグラの家でモグラに出会い、
モグラを捕獲する、というより
モグラに会いたい思いが募り、
いつしかモグラ愛へと変わった。

モグラの生態についてまとめる自由研究は着々と進み、あとはモグラに出会うことができれば、めでたしめでたし!
だが、なかなか終わりは見えない。
モグラ捕獲器の位置を変えたり、朝晩の見回りを強化するも音沙汰はない…
夜中も起きて懐中電灯を片手に庭を偵察した。

しかし、夏休みは終わりに近づいていた。

研究のまとめは、残念ながらモグラに出会うことができなかった、という不本意な結果としてまとめざるを得なかった…

だが、ついに、その時が、来た!
(プロジェクトX風)

夏休み明け、始業式の朝、庭に出た母の声
「いた!いた!いたよ!!モグラ!!!」

なんと、モグラ捕獲器に入っていたのだ。

感動の御対面であった。

母の手により捕獲器から救出

つぶらな瞳、ヒクヒク動く鼻、立派な手

ツルすべな毛並みはまるでミンクの毛皮の様、とも言われ、ミンクの毛皮は触ったことがないが、とにかく極上の手触りであった。

スルリと逃げてしまう

衣装ケースの中に土と筒を入れるとすぐさま筒の中へ

就寝中…やっぱりココが落ち着くわ〜


娘は学校へ連れて行く!と張り切るも、モグラは本来土の中の日に当たらない場所に暮らし、人目にさらすことで弱ってしまう恐れがあった。しかし、他の子供たちにもモグラを見せてあげたい。モグラの生態と注意事項をまとめ、先生に確認の上、衣装ケースごと一日学校へ出張した。

無事出張を終え、研究のまとめもできた。

さて、どうするか、モグちゃん…

しばし衣装ケースの中で飼ってみることにした。

まずはエサを調達せねばならない。モグラのエサはミミズである。公園の湿った場所や落ち葉を溜めておく場所の土を掘り返すと、出るわ出るわミミズがわんさか!大量のミミズを調達し、これでしばし安泰だ!など大間違いであった。食べるわ食べるわわんさか食べるわ…あっという間にミミズは尽きる。毎朝5時起きして娘と共に公園へミミズ調達が日課となった。しかし、わんさかいたミミズも乏しくなってくる。日照り続きで湿地も見つからない…公園の土を掘り返して穴だらけにしてはモグラと一緒である。やむなくミールワームを買ってくるもあっという間に終わってしまう。

「モグちゃん、やっぱり自然に帰してあげよう。」

娘は意地になってミミズを探す!と言い張った。(私に似て頑固だ…)

飼い続けられない事はわかっていたはずだが、すぐに手放す事も出来ない、その気持ちも分からなくない。

私は待つことにした。娘の口からモグちゃんを帰してあげようという言葉が出るまで。

だから毎朝まだ寝ている娘を起こし、ミミズ調達へ出かけた。

それから数日後、娘は言った。

「やっぱり、帰してあげようと思う。」

音を上げた、という方が正しいのだろう。確かに毎朝早起きして蚊に刺されながらミミズ探しに汗を流すのは大変だ。でも、生きていくには食べなければならない、食べるためには働かなければならない、そのことをわかってほしかった。身をもって体験できたのではないだろうか。

さて、モグちゃん、どこへ放したらよいのか…

多摩動物公園で飼育してもらいたいが、そうもいかない。近所の公園や畑、というわけにもいかない。山はどうか、どこの? 獣が少ない安全な山…

スキー場は?

自宅から30分の所にあるスキー場へ向かった。斜面一面に草が生い茂る夏のスキー場、その一角に穴を掘り、そっと土の上へ下ろす。あっという間だった。モグラは土の中へ帰っていった。


***


あれから3年。モグラの寿命は3~5年と言われる。飼育下であればもう少し長生きできるようだが、自然界は厳しい。

あの夏、モグラと出会った、あの夏の思い出

夏が来るたびに思い出す。

娘が大きくなるにつれ、こうした体験もなかなかできなくなる。寂しいが、娘がいて、モグラがいたからこそ体験できたことだ。娘とモグラに感謝である。

今年の夏はどんな夏になるだろうか。

夏は毎年やってくるが、今年の夏は今年だけのものだ。

夏はただ暑いだけでなく、熱い。

人を成長させてくれる、そんな気がする。

原案はほぼ私、娘は言われるがままに執筆(笑)

多摩動物公園で買ったモグちゃん

モグちゃん、と言いながら、モグくんだったかもしれない…


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