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詩のチカラ

たった一言
たった一行
時にそれが何千、何万と費やした文章より胸に響くことがある。
そんな詩に出会った。


ゆめ  
  
                               ぼくのゆめは…… 





あまりに短い一行、一言…

この詩は奈良少年刑務所詩集に収められている57編のうちの1編である。

この詩集には刑務所の更生教育である「社会性涵養プログラム」から生まれた作品が収められている。
強盗、殺人、レイプなどの罪を犯した17歳以上26歳未満の少年たち。
彼らがしたことは決して許されることではない。
しかし、
彼らの心の内、
そのあまりにも繊細な一面にふれ、
こんなにも繊細で感性が豊かな少年たちがなぜ…と思わずにはいられなかった。
繊細過ぎるがゆえに自分を表現できず、周囲とも打ちとけることができなかったのではないか…
だとしたら私たちに責任はないのだろうか…
彼らを犯罪者にしてしまった要因は直接的ではないにしろ間接的にはありうるのではなかろうか。

冒頭の詩を書いた少年は重い罪を犯して服役中。
夢は競艇選手になることだった。
ゆめは……
ゆめはあったのだ。
あったが、
書けなかった。
ゆめを前に絶句する彼の心情が沈黙から伝わってくる。


詩を書くことは自分の心と向き合い、自分の心を開放させる行為でもある。
詩を読むことは他者と自分との心の交流でもある。
詩が、人間を救うと言っては大げさであるが、
人間の心を救う可能性はある、と思う。
それが詩というもの、であり
詩のチカラでもある。
そんな詩の原点を感じた詩集であった。


塀の中、あなたが見ている空と
今私が見ている空
つながっていると伝えたい。

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