タイトル

【1日1冊書評】伝統的な市場をディスラプトするD2Cとは何か / D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略

・伝統的な市場をディスラプトするD2Cとは何か
・D2Cの戦略論とは何か
・急成長した先のD2Cの成長の踊り場とは何か

こちらは、「D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略(著)佐々木康裕」に書かれている内容です。D2Cは、「Direct to Consumer」の略ですが、いわゆる「通販」や「自社サイトでの販売」と何が違うのかというのか、そして、なぜこんなにも注目されているのかがわかります。

結論としては、D2Cとは、「デジタル技術が浸透したマーケティング企業・サービス」のことを指している思います。そして、最終的に企業・サービスに求められるのは、「世界観」ということだと思います。これはメーカーだけではなく、多くの業界にも参考になる「おすすめ本」です。

本書では、D2C の辞書的な定義として、下記が本書の中で紹介されています。

新しい消費の価値観を持つミレニアル世代以下のターゲットに対し、ユニークな世界観を下敷きにしたプロダクトとカスタマーエクスペリエンス、SNSや店舗を通じた顧客とのダイレクトな対話、垂直統合したサプライチェーンを武器に、VCから資金調達を行い、短期間に急成長を目指すデジタル&データドリブンなライフスタイルブランド伝

引用:   佐々木康裕. D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.37-41). Kindle 版.

よりわかりやすい説明として、D2Cブランドと、伝統的ブランドの比較表が提示されています。これは違いが直接販売という点だけでなく、マーケティングの多岐にわたっていることがわかります

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引用:佐々木康裕. D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.43-44). Kindle 版.

<世界観を売る>

本書の中で、とても印象的な言葉があります。「モノからコトへ、そして「コト付きモノ」へ」

D2Cブランドの提供価値は、プロダクトではなく、「世界観」にあります。D2Cブランドは、プロダクトを訴求するのではなく、そのプロダクトを中心とした「世界観」を提供しています。伝統的ブランドは、プロダクト毎にブランド(世界観)が存在します。複数ブランドをもつ企業であれば、ブランドマネジャーは、プロダクト毎に存在しています。しかし、D2Cブランドは、企業が単一で壮大な世界観をもっています。消費者は、プロダクトではなく、「世界観に共感」し購入しています。

世界観に共感して購入するというのは、Apple のような、「Apple」製品を購入する人々のことです。人々が商品が発売される前から購入したくなるのは、プロダクトではなく、「世界観」を提供しているからです。

そして、D2Cブランドは、「世界観」を提供するために、多くのチャネルを通じて発信しています。それは伝統的なブランドのプロモーションのような一時的なものではなく、SNSなどで、動画や写真、テキストでブランドの「世界観」を提供しています。

D2Cブランドは、「世界観(コト)を届け、その中のコンテンツのひとつとして、プロダクト(モノ)を提供している」のです。

<D2Cの戦略論>

D2Cブランドは、伝統的なブランドと違い、「テック企業」であり、データドリブンな意思決定や、素早い改良サイクルなどにより、プロダクトを改善していきます。

またユーザに直接販売することで、顧客の多くのデータを取得することができるため、「テック企業」のような事業を展開することができます。

-データを重視する
-プロダクトを何度もアップデートする
-顧客とIDでつながる
-売上に加えLTVを重視する
-カスタマージャーニーを重視する
-UI/UXへ投資する
-指数関数的な成長を重視する

佐々木康裕. D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1454-1456). Kindle 版.

<急成長した先のD2Cの成長の踊り場とは何か>

D2Cは、東海岸のような伝統的なブランド企業と、西海岸のようなテック系企業をあわせもち、ひとつの完成形のようにも見えます。しかし、D2Cも課題があります。

D2Cは、様々な業界で展開が可能であり、参入した既存の市場をディスラプトしていきます。しかし、ある一定で成長の上限がきます。
その理由は、D2Cの直接販売の中心となるECの上限です。アメリカでもEC化率は約11%、日本では6%程度しかありません。EC化率の上限が成長の上限に近くなります。もう一つの理由として、D2Cのターゲットはミレニアム世代以下が中心となるため、それ以外のX世代へのアプローチができないことです。X世代以上の人々の購買行動は、既存のやり方が重視されるため、D2Cブランドが入り込むことが難しくなっています。結果として、一定のターゲットを獲得した時点で成長が停滞してしまうことになります。

また伝統的なブランドが、D2Cブランドへと変化しています。本書紹介されている「Nike」は、"Nike Direct "という組織が新設され、デジタル施策とリアル店舗をシームレスに統合するように推進していきます。Nikeは、販売チャネルの見直しを図っており、全世界で30,000という流通パートナーを「40」まで絞りこみ直営店と40社のパートナーに厳選しています。そして、実際に「顧客への直接販売の比率は31%」まで増加しています。今後、伝統的なブランドが、D2Cブランドへと変化できれば、さらに競争が厳しくなっていきます。

多くの企業がD2Cブランド化してくと、これからは「世界観」の争いになっていくと思います。各社が顧客と直接つながり、データドリブンで意思決定できるようになると、違いは「世界観」の部分になってくるのではないでしょうか。

NikeはD2Cを含むデジタル施策NikeDirectの2018年第4四半期の売上が約1.2兆円(前年同期比13%増)となった。D2Cと区分できる顧客への直接販売の比率は31%。2010年以降、着実にその比率を増やしており、2017年からの2年間では28%(約2,600億円)増加している。この数字は、2017年からのNike全体の売上成長の約半分を、D2Cビジネスの成長が占めているとも言える。
引用:佐々木康裕. D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2107-2110). Kindle 版.

<まとめ>

D2Cは、直接顧客に販売するという意味から来ていますが、実際には、テック企業のノウハウと、伝統企業のブランディングを意味していました。これはメーカーや小売だけでなく、多くの業界でも同じような変革が起きると感じました。

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