タイトル

成功するプロジェクトは一人称で話す人が多い/ひとりの妄想で世界は変わる(著)佐宗 邦威

・イノベーションがメジャーになるなかで、「ゾンビ」のような活動が増えている
・創造のエッセンスは、「人」「場」「意志」「創造」
・うまくいくプロジェクトは一人称で話す人が多い

これらは、「ひとりの妄想で世界は変わる(著)佐宗 邦威」に書かれている内容です。本書は、BIOTOPE CEO/Chief Strategic Designer の佐宗氏が書かれた本になります。本書は、日本企業内での新規事業の立ち上げる方法について詳細に解説してあり、またBIOTOPEが関わってきた数々の大手企業の新規事業担当者とのインタビューが掲載されています。社内起業家 / イントレプレナー や既存の組織のなかで新規事業を立ち上げたい人は必読の内容です。


<イノベーションがメジャーになるなかで、「ゾンビ」のような活動が増えている>

本書の第一章にて、イノベーションがこれだけもてはやされるなかで、惰性で行っているだけのゾンビ化している活動が増えているとあり、下記のような課題があるとあります。

・人の不在ー主人公がだれもいないプロジェクト
・場の不在ー新たに生んだものを育てていく場や仕組みがない
・意志の不在ー出てきたアイデアがまとまらない
・つくり方の不在ー自分たちの課題に合った創造の方法論が使えていない
・組織とのすり合わせができていないー効率性を大事にする既存組織

これらが起こる理由に、既存の事業を運営する「生産する組織」と新規事業を生み出す「創造する組織」の原理がまったく異なるためとあります。この原理をアップデートせずに、生産する組織でイノベーションを起こそうとした結果、上記のような課題が発生し、結果として、イノベーション活動が惰性になっています。

以前、僕は経営企画室のような部署で、事業報告を役員が受ける場に同席していました。

そのなかで、役員や各組織の責任者が新規事業についてフィードバックをしますが、基本的に既存事業の責任者は既存事業の論理で発言をするために、その要望にすべて対応していては、新規事業は立ち上がらなくなります。もしくは立ち上がったとしても、すぐに既存事業のロジックで考えると停止することになってしまいます。

そのなかで、新規事業としてやりきることができるプロジェクトは、事業責任者が既存事業のロジックではなく、新規事業についてのVision などを熱量をもっているプロジェクトでした。(とはいえ、その事業が成功するかどうかは別ですが)

課題人の不在――主人公が誰もいないプロジェクト「イノベーションが必要だから」というようなトップダウンの号令によってプロジェクトが始まり、初対面の人たちが互いの部署の利害を調整しながら進めていくイノベーション活動からは、魂のこもったプロダクトやビジネスは生まれにくい。イノベーションチームのメンバーが、さまざまな部署の利害調整をしながら妥協してつくったものは総花的で分厚い企画書となり、一向にかたちにならず、担当役員の変更とともに立ち消えになってしまいがちだ。一方、そのテーマを自分事化している人は、実践しないと意味がないため、決裁資料をつくることよりも、完璧でなくてもいいから少しでも企画を前に進めようとする。そうした自分事化した主人公がいないイノベーションプロジェクトは、前に進まない
引用:佐宗 邦威. ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION (Japanese Edition) (Kindle の位置No.324-331). Kindle 版.

<創造のエッセンスは、「人」「場」「意志」「創造」>

本書では、創造する組織になるためのエッセンスとして、「人」「場」「意志」「創造」の4つをエッセンスにわけ、「創造の16の智慧」として紹介しています。

<人>
・妄想を引き出し、熱を吹き込む
・ともに企む仲間をつくる
・辺境に眠る妄想を発掘する
・組織外の仲間から自信をもらう

<場>
・場と間を作り出す
・創発を生みやすい土づくり
・情報の全体像を可視化する
・1.5歩先の旗を立てる

<意志>
・ムーンショット型ビジョンをつくる
・過去〜現在〜未来をつないだ新たな文脈作り
・営業と物語によって魂を入れた意志にする
・会社のタイプに合わせて意志をブランドに

<創造>
・独創を最大化する共創
・多様性から未来を創発する共創ファシリテーション
・生んで間引く創発型戦略
・目的に合わせた創造の方法論の使い分け

上記の中で、<場と間を作り出す>について、紹介したいと思います。

まず、イノベーション活動には、「多様な人」が重要であり、イノベーション活動の初期段階において、その人々が集まる「場」を作ることからはじめることが良いとあります。
多様な人々が交わる「場」は、新規事業のアイデアが創出される「泉」となりますが、この「場」を設計する際に重要なことは、「思ったことを即興でしゃべりやってみてから考えることができる空気感を作ること」とあります。

これは、既存のビジネスでは、再現可能なKPIとして分解されたもので意思決定をされアクションをしていきます。しかし、新規事業は、再現可能性もわからず、情報がすべて見えないなかで仮説をたて意思決定をしてすすめる必要があります。

つまり、先程の「思ったことを即興でしゃべりやってみてから考えることができる空気感」というのは、「情報が何もない中で、仮説をたてて推進する」ということが推奨されるような環境を用意しておくということです。

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Photo by Ari He on Unsplash

<うまくいくプロジェクトは一人称で話す人が多い>

また本書を読んでいて、とても刺さった箇所があります。

うまくいくプロジェクトかそうでないかの判断基準として、プロジェクトリーダーやメンバーが「自分は、xxxしたい。なぜなら○○だから」という一人称で話す人が多いプロジェクトは成功し、「部門のミッションがxxxだから、○○する」というプロジェクトは非常に苦戦する

「うまくいくプロジェクトは一人称で話す人が多い」という部分で思い出したのは、成功した新規事業には、何人も「俺が立ち上げた」「立ち上げたに携わった」という人々がいます。たとえば、リクルートの事業など、元リクルートメンバーはこのような発言を聞くことが多いです(笑)

ひとつは、自己主張が強い人たちだったということがあるかもしれません。しかし、リクルートの場合は、事業を「自分ごと化」しているという風にも捉えることができます。自分が考え行動をしているからこそ「俺が立ち上げた」とまで自信をもって言い切れるのではないでしょうか。

<まとめ>

日本企業でのイノベーション活動をする際の具体的な課題とその解決について詳しく書いてあるため、とても参考になります。

既存事業の生産する組織の場合は、効率的な分業やトップダウンで決まる戦略、効率性を改善する改善を良しとし、この考え方を暗黙のうちに「正解」として考えており、「創造する組織」に反する行動や考えをしているということに気がつけました。

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