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脳・神経科学からモチベーション・ストレス・クリエイティビティを理解する / BRAIN DRIVEN

- 神経科学からみた「モチベーション」「ストレス」「クリエイティビティ」
- 辛さのように、苦痛や適度なストレスがモチベーションを強くする
- 自分のやりたいことから受けるストレスは、注意力や記憶定着効率が高まる
- 不確かさや曖昧なものに向き合うことで脳が使われ、クリエイティブになれる

上記は、「BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは(著)青砥瑞人」に書かれている内容です。ビジネスパーソンで、自分のパフォーマンスについて考えたことがある人は、一度は「脳」について考えたことはあるかと思います。本書は、「脳・神経科学レクチャー」という講演内容をもとに執筆された本になります。本書では、ビジネスパーソンからの要望が多かった「モチベーション」「ストレス」「クリエイティビティ」という3つのテーマに、神経科学の観点から「脳の中で何が起こっているのか(WHAT)」「なぜそうなるのか(WHY)」についての知識を深める内容になっています。

神経科学は、学問としては非常に新しく、2010年以降に論文数が急激に増加しているなど、学問に関する動向も本書では知ることができるので、いまだにブラックボックスな部分が多い「脳」が解明されていくというワクワク感も得られる書籍になっています。

自らのパフォーマンスをあげたいビジネスパーソンや、脳や神経科学について興味がある人には、おすすめの書籍だと思います。

*著者の青砥氏は、高校中退からアメリカのUCLAに神経科学部を卒業され、脳 x 教育 x IT をかけあわせた「NeuroEdTech」分野の第一人者とのこと。その生い立ちの記事がありますので、こちらもおすすめです。


モチベーションと痛みの関係

モチベーションに関する章のなかで、気になった項目を紹介します。

「痛み」とモチベーションの関係について、「自分で飛び込んだ苦痛、苦しみは我々を強くする。苦痛時の頑張りは、成長伝達物質のオンパレード。どん底から快へと大きな差分を生み、通常以上のドーパミンを放出、快も増幅する。それが次なる苦難へのモチベーションにつながり、人を大きく成長させる」とあります。

「痛み」に関する事例として、激辛な食べ物やSMを参考に「痛み」を伴うにも関わらず、はまってしまう仕組みについて説明されています。これは、通常時に受けると単なる痛み信号でしかない刺激が、実際の危険がないため脳が安全を学習したうえで、同時に発生する快楽物質と、痛みを和らげる快楽物質の影響で、より快楽性が高まるためはまっていきます。

同様に、(自分でストレスマネジメントができる人であれば、)意識的に自分を適切に追い込むことで、その後の達成という快が想像できるとモチベーション高く取り組むことができます。*脳内で大量に分泌される快楽物質のなかのドーパミンは、学習、記憶定着、効率化を担うため、成長を促してくれます。モチベーションを高く維持したいが、努力が辛い場合には、「この努力は乗り越えられる、そして、達成することで、大きな報酬が得られる」ということを意識することで効果的になるのではないでしょうか。

過去と未来の話がクリエイティビティを高める

クリエイティビティに関する章のなかで、気になった項目を紹介します。

「過去と未来の話」とクリエイティビティへの影響についての興味深い箇所があります。クリエイティビティを発揮する能力を高める実験で、「代替案を示すテスト」があるそうです。たとえば、「帽子をかぶること以外にどのように使うか?」などを聞くテストです。

2014年に行われた実験では、過去の出来事から未来にどのようなことが起こるかを想像してから代替案を示すクリエイティビティテストを行った結果、「想像の詳細さと代替案の数に相関が見られた」とあります。つまり、過去の記憶を思い返して、未来を想像させるとクリエイティビティが高まるという結果がでました。

これは、神経科学の見地からみてもおかしくはないといいます、「記憶をアクティブにする働きかけ」がクリエイティビティを高める方向に作用する可能性があるというのです。

ビジネスの場においては、たとえば、会議などの前にアイスブレーク、雑談をするケースがあると思いますが、そのときに、過去の出来事やこれからの未来の話をすることで、会議がクリエイティビティに行うことができるかもしれません。

本書の目次

本書は、「モチベーション」「ストレス」「クリエイティビティ」をテーマにたくさんの事例が掲載されています。下記目次を見て頂けると、多くの項目があることがわかると思いますので、関心のある項目がある方は、ぜひ読んでみてください。

CHAPTER1 モチベーション
- 01 そもそも、モチベーションとは何か?
- 02 モチベーション世界の構造的理解
- 03 神経科学的欲求五段階説
- 04 分子の世界から捉えるモチベーション
- 05 モチベーションと心理的安全状態
- 06 モチベーションにおけるドーパミンの役割
- 07 モチベーションを高めるための「気づき」
- 08 モチベータを整理する
- 09 モチベーションと痛みの関係
- 10 お金とモチベーションの特殊な関係
- 11 モチベーションをマネジメントする

CHAPTER2 ストレス
- 01 ストレスの原理を理解する
- 02 ストレスを分解して考える
- 03 ストレスを認識する
- 04 成功の前にあるストレスをパターン学習する
- 05 ストレスが起きたときの脳内反応
- 06 適切なストレス
- 07 避けたほうがいいストレス
- 08 慢性的なストレスを避ける
- 09 ストレスとうまく付き合うための15のヒント
- 10 ストレスとうまく付き合うために

CHAPTER3 クリエイティビティ
- 01 神経科学におけるクリエイティビティ
- 02 クリエイティビティを捉えるための前提と複雑性
- 03 人間の脳と人工知能を比較する
- 04 神経科学の知識でクリエイティビティは高まる
- 05 神経科学的にクリエイティビティを捉える
- 06 クリエイティビティを発揮するための大前提
- 07 マクロの視点からクリエイティビティを捉える
- 08 デフォルトモード・ネットワークを起動させる方法
- 09 過去と未来の話がクリエイティビティを高める
- 10 サリエンス・ネットワークをクリエイティビティに活かす
- 11 不確かさへの挑戦の連続がクリエイティビティを育む
- 12 身体イメージと共感がクリエイティビティを後押しする
- 13 クリエイティビティと脳内の情報統合システム
- 14 クリエイティビティと言語・非言語の情報処理
- 15 クリエイティビティでは使われない脳
- 16 クリエイティビティはいまからでも高められる

脳内については、石川善樹氏の「考え続ける力」「フルライフ」でも登場した「デフォルトモード・ネットワーク」「セントラルエグゼクティブ・ネットワーク」「サリエンス・ネットワーク」などの脳のネットワークについても解説されています。書籍を読んでいて、脳や神経科学について興味がでた人には、ぜひおすすめな内容だと思います。


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