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2050年の持続可能な日本・そこに求められる事業とは / 人口減少社会のデザイン

・2050年、日本は持続可能か?
・日本の人口減少・少子高齢化の課題は、未婚・晩婚化
・日本の社会保障は、ビジョンがないため、負担を将来に先送りをしているだけ

これらの内容は、「人口減少社会のデザイン(著)広井良典」に書かれている内容です。著者は、京都大学・日立京大ラボで、AIを活用し、2050年に向けて約2万通りのシミュレーションを行い、AIを活用した政策提言を行っています。現在、「財政、あるいは世代間継承性における持続可能性」「格差拡大と人口における持続可能性」「コミュニティないし、「つながり」に関する持続可能性」の課題から「日本社会の持続可能性」が危機的な状況にあるという問題意識があります。

これらは、日本に生きる人にとって、認識しておくべき課題と、重要な論点だと思います。そして、高齢化については、日本だけでなく世界で高齢化という流れになっていきます。そうした中で、これからどういうビジネスを設計していくべきか参考にすべき内容です。

AI が示す日本の未来シナリオ

AIシミュレーションの結果から、日本全体の持続性を図るうえで、①都市集中型、②地方分散型の分岐が、もっとも本質的な選択肢になっているとあります。

1. ) 都市集中型シナリオ
・都市の企業が主導する技術革新により、人口の都市への一極集中が進行し、地方は衰退する。出生率は低下し、格差は拡大する。個人の健康寿命や幸福感は低下する。政府の財政は持ち直す。

2. ) 地方分散シナリオ
・地方へ人口分散することで、出生率が回復し、格差は縮小する。個人の健康寿命や幸福感は増大する。*ただし、政府の財政、環境の悪化する可能性がある(ため、細心の注意が必要)

著者は、持続可能性の高い日本社会には、現在の「都市集中型」から「地方分散型」という、「ヒト・モノ・カネ」が地域で循環する社会システムに転換していくことが大きな意味をもつとあります。

「地方分散型」社会のイメージとして、ドイツ、エアランゲンとい人口10万人の地方都市を紹介しています。その都市イメージは、小さいながらも町の中心部はヒトやモノが溢れておいます。しかし、日本の同規模の地方都市になると、中心部出会ってもシャッター通り化、空き家問題などが発生しています。

同じ人口規模の2つの都市の比較から「人口減少社会」が問題ではなく、どのように町をデザインするかの重要性が見えてきます。

本書では、私たちが、人口減少していく中で、どうありたいかを構想し、実行していくことで、持続可能な人口減少社会を迎えられるイメージを与えてくれます。

日本の人口減少・少子高齢化問題

日本の人口は、2008年の1.28億人をピークに減少し続けています。そして、日本の高齢化率は28.1%(2018年:総務省推計)で、世界一の高齢化社会です。日本は急激に高齢化が進んでいますが、その理由は、長寿が要因ではなく、少子化が大きな要因になっています。

そして、少子化の要因は、イメージでは、結婚しても子どもを産まない人が増えていること(DINKS)、子どもの数が減っていること(一人っ子)などが考えられるが、実際には結婚した子どもの数には大きな変化は見られていません。大きな要因となっているのは、そもそも結婚していない人たちが増加していること、晩婚、未婚の率が高くなっていることが大きな要因になっています。

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未婚率を、年齢階級別にみると、未婚化率が1985年以降急激に増加しており、【女性】25-29歳の未婚化率は1985年で30.6%だったものが、2015年では61.3%と、ほぼ倍増してしまっています。

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広井 良典. 人口減少社会のデザイン (Japanese Edition) (Kindle の位置No.700). Kindle 版.

結婚については、2011年に内閣府が行った調査により、20-30代男性について、年収300万円未満か、以上か。また正規雇用か、非正規雇用かで結婚率に大きな違いがでています。

結婚が、個人の嗜好ではなく、経済的な状況などにより諦めざるをえない状況がでているとしたら、日本社会の持続のためにも支援をしていくことが重要になっていきます。

増加し続ける社会保障費

日本の社会保障給付費は、人口は減少していますが、高齢者数は増加しているため、増加し続けており、2016年度で116.9兆円に達しています。また政府の予算でみると、2019年度の一般歳出62兆円のうち、34.1兆円(55%)を社会保障費に予算が使われており、公共事業が約7兆円、防衛費が約5兆円と考えると、占める割合が大きいのがわかります。

先進国でみてみると、社会保障の規模をGDPに占める割合でみると、ヨーロッパなどは日本よりもさらに社会保障費が手厚く、アメリカなどは日本よりも小さくなります。

先進国諸国の社会保障を比較し、下記の3つのグループにわけることができます。

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広井 良典. 人口減少社会のデザイン (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2212). Kindle 版.

これらは、AとBは、社会保障の内容が福祉サービスか、現金かの違いになり、基本的に税金などで高負担、高福祉という形になります。先程のヨーロッパでは、日本よりも社会保証規模が大きいのは、その分税金などで負担が大きくなっているものがあります。

それに対して、Cは、社会保障は最低限の低福祉となり、その分税金などの負担が小さくなっており、低負担、低福祉となっています。

日本は、社会福祉のモデルを、ヨーロッパを参考(大正から昭和初期にドイツの医療保険や年金を制度など)にしており、中福祉というところになります。しかし、財源については、経済成長すれば社会保障の財源が賄われるという発想だったが、GDPが成長しなくなったいまでは、「中福祉・低負担」といういびつな状態になってしまっています。

作者の下記の文章がとても心に響きました。私たちは、長期的な視点や全体的な視点にたって考えれておらず、自分たちの負担や保証のことばかりに目が行きがちで、結果、現在がどうあるべきかの意思決定を先送りしてしまい、「その場にいない、将来世代に負担を強いる」ことになってしまっています。

これは、日本に生きる人々が向き合わなければならない問題ではないでしょうか。

これは端的に言えば、ヨーロッパ、アメリカのいずれと比べても〝ひどい〟対応の姿ではないか。つまり「高福祉・高負担か、低福祉・低負担か」といった選択を行わず、社会保障の給付に見合った負担を回避し、将来世代にそのツケを回すという姿は、ある意味で率直に「低福祉・低負担」(=社会保障の水準は低いが税負担も低い)という道を選択し、現在の世代の責任において問題への対処を行っているアメリカと比べても、困難な意思決定を先送りして〝その場にいない〟将来世代に負担を強いるという点で、もっとも無責任な対応と言うべきだろう。要するに、先ほど「アメリカ=強い拡大・成長志向・プラス・小さな政府」、「ヨーロッパ=環境志向・プラス・相対的に大きな政府」という対比を行ったが、こうした富の規模とその分配について、どのような理念の下にどのような社会モデルを作っていくのかという、「ビジョンの選択」に関する議論を日本は一刻も早く進めていくべきなのである。

広井 良典. 人口減少社会のデザイン (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2315-2324). Kindle 版.

まとめ

日本で生きていく、少なくともいま日本に住んでいる人たちは向き合うべき課題ではないでしょうか。税金や社会保障、コミュニティなど、様々な問題に対して、どうしても「個人」という視点で考えがちです。それが悪いことというわけではないのですが、ときには30年、50年、100年という時間軸をもって、日本や世界全体の社会としてどうあるべきかを考えるべきだなと思いました。

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