『死後の恋』の読書感想
著者 夢野久作
1928年発表
青空文庫で楽しめる名作『死後の恋』を読んで、私が感じたことを述べます。
途中からネタバレを含みます。
中編小説で無料版もあるということで、気軽に手に取れる作品です。
ただ、読み手によって解釈が分かれる結末かと思いますので、あくまでも ※個人の感想です ってやつです。
あらすじ
コルニコフと名乗る男が戦友について独白する。
戦友の身の上話を聞き、貴族の出身、それも国(ロシア)の王家に深く関わる人物だと見当をつけた。
兵士として赴いた戦地での出来事から、コルニコフはある確信を得る。
それらを誰かに話して真実だと認めてもらいたい、といったもの。
ここからネタバレ&考察。
↓↓
私が気になったのは、コルニコフが本当のことを言っているのか、ということ。
アナスタシヤのことは知らなかったので、調べた上で考察しています。
ロマノフ家についても、詳しくはありません。
歴史に疎いもので・・・。
大体の流れを検索して知り、私なりの解釈ですが、いくつかの説を立てました。
まず、①アナスタシヤ生存の噂から、“こんな風に過ごしたかもしれない”と描いたファンタジー説。
辛い出来事に落ち込み、誰かに信じてもらいたがっている男。
コルニコフもリヤトニコフも嘘を話していないとすると、悲しい物語です。
次に、②リヤトニコフだけが嘘を話している説。
コルニコフに打ち明けた内容は、自身で作り上げたものだったとしたら。
ロマノフ家に関係している、それもかなり重要な地位にいる人物だと偽って話をする。
ここから得るメリットは私に計り知れないのですが、リヤトニコフが嘘つきでない確証もありませんし。
コルニコフも、妄想を話しているのではと疑っている場面がありますよね。
すぐさま否定したけど。
リヤトニコフの話を信じたコルニコフが、他者に伝えようとしているのでしょうか。
そして、私が最も推している③コルニコフの妄想説。
貴族の出身、宝石の鑑定眼、リヤトニコフに対する反応。
一度疑って見てしまうと、いろいろと嘘っぽく感じます。
リヤトニコフが女性だと判明した後で、コルニコフに都合がいいようにこじつけたのでは・・・。
蹂躙された後に愛情の念など残せるもんかね、と。
そもそも感じ取れるのか、女性だとすら思ってなかったのに、とか。
宝石を手に入れたかったから?
本物かどうかも怪しいところですが。
戦地での体験に、精神的に参ってしまった?
森での出来事がショッキング過ぎたので、誇張して話しているのだろうか。彼なりの理想かなにかを誰かに聞いてもらいたかったのかなあ。
全部が嘘じゃないにしても、事実のみとも限らない。
などと、思いついた解釈を挙げましたが、他の説も考えられるかもしれません。
私の感想は③が優勢で、①もアリかなという結論です。
迷っている時点で結していないけど。
自分なりの結末を持っていることも、楽しみ方のひとつでしょうね。