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#4 VSそれ



閑散とした街。

在庫のないスーパー。

咳一つしようものなら周りから白い目が向けられる。

数ヶ月前、誰がこんな世界を想像したであろうか。


それ」は全世界を瞬く間に先の見えぬ闇へと放り込んだ。



毎週月曜
日本時間20時配信
「NOTE×KJR」
今回は特別配信
(誰も待ってない)




私は当時他所の国の出来事だと思い、これから始まる自らの新生活に心を躍らせていた。

渡豪した当初、私は綺麗な街並みと豊かな自然が混在し、そして何より人間味溢れるオーストラリアの人々に心を震わせていた。

1月初旬である。


1ヶ月後、ヨーロッパ諸国にまで「それ」は少しずつその名前を轟かすまでに成長していた。

しかし、日本は勿論。
私自身もその脅威を知ろうともせず、のうのうと暮らしているだけだった。


3月。
それ」はとうとう私の前にも見違えるほどに大きくなってやってきた。
オーストラリアのリーグは今のところ5月31日まで延期。
だが、このままいくと恐らく今年リーグが開催されることはないだろう。
そして3月中旬を過ぎると、レストランやジムといった多くの人が集まる施設はクローズを余儀なくされ、スーパーに並ぶ品も日に日に無くなっていった。
マスクを着用する人など一人も見たことがなかったのに、今では多くの人が着用するほどにオーストラリア人は変わってきている。


そして、本当に沢山の人が職を失った。

しかし、彼らは仕事よりも命が大事だとハッキリと言う。
その意識の高さは凄まじい。
つい最近まで手洗いうがいを知らなかった人達とは到底思えない。


現在のオーストラリアはオーストラリア人の出国と外国人の入国を禁止し、江戸幕府を彷彿とさせる鎖国状態。
さらには州をまたぐことも特別な理由がない限りは禁止されている。
今回ばかりはあのマシュー・ペリーであろうともこの鎖国を解くことは難しいだろう。
黒船が白旗である。


そして、公共の場でのグループ活動は2人までに制限された。
もはや2人以内はグループではないやろとモリソン首相にツッコミを入れたのは私だけではない筈だ。
また、オーストラリアには「social distance」なるものが定められ、1.5m以上人との距離をとらなければならない。
違反した人には罰金が科せられる徹底ぶりである。

日本行きの飛行機も4月24日まで1日1便飛ぶ予定であるシドニーから羽田行きのANAのみ。
つまり日本に帰ることすらも危うい状況なのである。
しかも私の住むメルボルンはシドニーと州が異なるため、シドニーの空港まで辿り着けるかも分からない。

リアル脱出ゲームかよ。




なんだこれ。


率直な感想を言うならこれがピッタリ。
あの数ヶ月前の生活は跡形も無く消え去った。


ここでそんな私の現在の1日を紹介しよう。


①起床&準備 8:30~9:45
起床だけはそこそこ早い。
起きるのが遅いのは一日を無駄にしている感じがしてならない。
朝食に食パンを焼くのだが、トースターが上に飛び出すタイプでたまに飛びすぎて地面に落ちた時のイライラはフリーザーがクリリンを殺した時の悟空のそれに相当し、私は数秒スーパーサイヤ人となる。

②オンラインで英語の授業 10:00~15:00
オンラインで行われている英語の授業を受ける。
ただオンライン授業の質が低すぎるので気が向いた日に受講して、向かない日は自分で勉強している。
私が持っていた「good student」の称号はすぐさま剥奪され、今つけられている呼び名は「lazy ghost」(お怠けゴースト)だ。
すぐに掌を返して最悪な名前をつけるところが好きだよステーキ先生。

③瞑想(睡眠) 15:00~16:00
目を閉じて世界平和を願う時間。

④ランニング 16:15~17:30
最近走ることに取り憑かれているのか10㎞は走る。
陰でシェアメイト達にこっそりプリウスと呼ばれていることを私は知っているがむしろ有り難く頂戴している。
低燃費は環境にも良いから。

⑤シャワー&夕食etc 18:00~20:00
走った後のシャワーは温泉の最初にお湯に浸かる時のあれに相当する。
わかる人にはわかる。
ここで洗濯やら食事やら全てを終わらせる。
私はすべきことをすぐにやるタイプ。
食後に食器などすぐ洗うタイプ。
後でやるタイプの人とは関わりたくない。
(そんなことはない)

⑥YouTube 20:00~22:00
一日の至福の時間。
誰になんと言われようとこの時間は譲れない。
pride of youtube。
動画が少ない時は21:00~勉強する。
割合でいうと50%。
いや、もっとやれよおれ。

⑦シェアメイトとの戯れ 22:00~24:00
シェアハウスに共に住む住人と映画を見たり、ゲームがとり行われる。
テラスハウスをみんなで見る日は「神日」と呼ばれている。
T君というクセ人間がシェアメイトにいるのだが、だいたいこの時間にT君の価値観とシェアメイトO君の価値観のマウントの取り合いが行われる。
まさに彼らは「悟空とベジータ」「ナルトとサスケ」「ルフィと黒ひげ」「竈門炭治郎と鬼舞辻無惨」。
ただ普段は仲が良い。
本当に意味がわからない。
彼らの生態は宇宙くらい謎に包まれている。

⑧フリー 24:00~1:00
この時間は友人に電話したり動画見たり勉強したりとなんの時間にもなり得る。
T君の部屋にノックして逃げるというマイブームもこの時間だ。
そして、寝る。
彼は未だに犯人がO君であると疑っている。


ざっとこんな感じだが、お気づきだろうか。

そう。

ほぼ家の中で1日のスケジュールが消化される。

それ」により仕事もサッカーも何もかもが奪われているので、私の生活、いやオーストラリアに住む人の生活はほぼこんな感じである。

しかし、「それ」と闘うことに必要なことだと皆が受け入れている。


それに比べて日本はどうだろう。

未だに気にせず外出しているという話を聞くと少し心配になる。

オリンピックの延期。
各スポーツやライブイベントなどの中止や延期。
経済へのダメージ。

きっと私が想像する悪影響よりも更なる悪影響がこの先の日本には及ぶのだろう。

ただ今はそんなこと心配する余裕は私にはない。

私は総理大臣でもなければスーパーマンでもない。

今私が心配するのは自らの命と私の大切な人達の命だけだ。

しかし、まず一人一人が自らの行動を見直すことで「それ」との闘いに打ち勝つ打開策が浮かび上がってくるのだ。

人は失ってからその大切さに気付く。

だが失ってからでは遅い。

若者は重篤化しない?

本当にそうだろうか。

自分が大切な人を感染させて死に至らせる可能性は?

本当にないのだろうか。

私達は自分に出来ること、今するべきことをもう一度考え直さなければならない。


政治についての勉強も必要な歳なのだと感じると共に、日本の偉い人達が給料に見合う働きと求心力を見せてくれることを祈るばかりである。




それ」と人類との闘いの火蓋は既に切って落とされている。



P.S.クセ人間T君が住人からの猛烈な引き留めにも負けずに先日「それ」の影響でシェアハウスを出て行った。家の風紀は整うのだが、やっぱり別れは寂しい。春ですね。(オーストラリアは秋)



#海外 #日記 #サッカー #トップの写真は私にとってのそれに値するほど悪影響を及ぼす人のユニフォームです

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