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『ボッコちゃん』星新一 「1話だけでも読んでみて」と、懇願して


このnoteは、まだ本を読んでいない人に対して、その本の内容をカッコよく語る設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『ボッコちゃん』星新一

【星新一の作品を語る上でのポイント】

① 「SFの金字塔だ」と言う

② 「1話2分で読めるよ」と勧める

の2点です。

① に関して、星新一は筒井康隆、小松左京と共に「SF御三家」と呼ばれています。金字塔という日常会話で使わないワードはカッコ良いです。

② に関して、星新一はショートショートという数ページで完結する短い小説のジャンルを築き上げた人です。ツイッターやインスタで短い文章を読み慣れてる現代人が、今こそ読むべき作家です。


○以下会話

■具体性が一切排除された小説

 「電車で読むのに良い小説か。そうだなやっぱり星新一がオススメかな。SFの金字塔の星新一。「ショートショート」という短編小説のジャンルを確立した人で、3ページくらいで終わるお話を1000話以上書いてる人なんだ。

この人の小説の書くスタイルは面白くて、感情とか固有名詞とか具体的なものを全く書かないんだよ。例えば、登場人物は全部エヌさんとかエスさんとかアルファベットで表されてて、悲しいとか楽しいとか感情は一つも出てこないんだ。事実だけがただ書かれていくんだよ。実は、星新一は小学生の頃からそういう具体性がない文章を書いてたらしいんだよ。普通小学生の文章は「〇〇しました。楽しかったです。」って感情ベースで書きがちだけど、遠足の作文も全部事実描写だけだったんだって。そしてこのスタイルによって、具体性を一切排除することで、国や時代や文化に関係なく読めるようになるんだ。主観性のない客観的な文章だから誰もがフラットに受け取れるんだ。だから沢山の言語に翻訳されて、色んな国で今でも読まれ続けてるんだよ。

星新一の文章は、いわゆる最後にオチが明かされるどんでん返しの話がほとんどなんだ。だから電車の中でサクって読んで「あ〜なるほどね」ってスッキリ楽しむのにピッタリなんだ。

沢山作品があるから、おすすめを一冊に絞るのは難しいんだけど、一番代表的なのは『ボッコちゃん』かな。50作品がまとめられてる入門書的な立ち位置なんだ。これを読んでみて面白いなって思ったら、他の作品も読んでみたら良いと思う。1000話以上書いてるから、正直当たり外れはある。だけど面白い作品は凄くクオリティが高いんだ。

■直径1メートルの穴

例えば、『ボッコちゃん』にある「おーい、でてこーい」っていう小説が名作なんだ。この話は、若者がある山に直径1メートルくらいの深い穴を見つけるところから始まるんだ。

まず若者が底の見えない真っ暗な穴に興味を持って「おーい、でてこーい」って穴に向かって叫んでみるんだけど、穴からは何も返ってこないんだ。次に、小石を穴に落としてみると、やっぱり何も反応がないんだ。

そこからその穴は「なんでも吸い込む穴」として有名になって、処理に困っていたあらゆるものが捨てられていくんだよ。動物の死体、機密書類、原子炉のカス。都会の汚染物質が次々とその穴に投げ込まれていくんだ。

それからしばらく経ったある日、突然都会の空から、「おーい、でてこーい」って若者の声が聞こえてきて、ポツンって石が一つ落ちてくる。

これでお話は終わり。意味、分かった?つまり「なんでも吸い込む」と思ってた穴は、実は空に繋がっていて、捨てたものがどんどん落ちてきてしまうっていうことなんだ。

このオチすごいでしょ。実際に今日本はゴミ処理が大きな社会問題になってて、更に福島の原発の汚染処理物質を海に流すかどうかも議題に上がってるよね。自然が全て飲み込んでくれると思って、これまで大量消費を続けてきたけど、最終的には人類にツケが回ってくるっていう話なんだ。

■容姿端麗な宇宙人

他に僕が覚えてる話は、綺麗な宇宙人が乗ったUFOが地球にやってくる話なんだ。

宇宙船から地球に、テレビ電話で交信があって、「私たち『美人星』からやってきた宇宙人は、みんな容姿端麗の美女揃いだ。それに比べて地球の女は容姿のレベルが低い。もし地球の女を全員殺したら、私たちが地球に降りてお前たち地球の男と一緒に生活してあげよう」って言われるんだよ。テレビ越しに宇宙船の中を見ると、確かにめちゃくちゃ綺麗な人が大勢いるんだ。だから地球の男たちは、地球の女たちをみんな殺しちゃうんだよ。それで「美人星の皆さん、地球の女はいなくなったので降りてきてください」って言うと、UFOが着陸して宇宙人が中からでてくるだけど、みんなめっっっちゃでかいんだ。

それで、終わり。ちょっと怖いけど面白いでしょ。

伏線を回収して「なるほどな〜」って思わせる面白い話が多いから試しに読んでみて。」



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