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『もうおうちへかえりましょう』穂村弘 「情けないけど笑えるんだ」と、力弱く

このnoteは、本の内容をまだその本を読んでない人に対してカッコよく語っている設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『もうおうちへかえりましょう』穂村弘

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【穂村弘の作品を語る上でのポイント】

①言葉のうまさに言及する

②人間的魅力を褒める

の2点です。

① に関して、穂村弘は歌人として活動しているため、この人の書く文章の言葉選びは光るものがあります。単なるエッセイでもピタッと当てはまる言葉をスラスラと書いていて、読んでいて気持ちが良いです。

② に関して、穂村弘という男は、カッコ良い人になりたいんだけど、平凡な世界から中々抜け出せなくて、背伸びしてて、でもそこに優しい心が一筋ある魅力的な人間です。俳句や詩やエッセイは小説よりも書き手の人となりが反映されやすいので、書いてる人に魅力があれば、その人の文章もまた魅力的になります


○以下会話

■男らしくないエッセイ

 「軽く読めるエッセイか。そうだな、穂村弘の『もうおうちへかえりましょう』がオススメかな。穂村弘は歌人でエッセイストでとっても文章が上手なんだ。この他にも沢山エッセイを出してて、どれも面白いから「この本が1番に面白い」とは言えないんだよね。良い意味でね。このエッセイも、なよなよとしていて、くよくよとしていて、男らしくない、カッコ悪い一面を存分に暴露してるにも関わらず、なんか魅力的で、お近づきになりたくなってしまう、穂村弘の不思議な文章に出会えるんだ。

■生きるのが不器用

このエッセイには、穂村弘の不器用な一面が沢山書かれているんだよ。まずタイトルからしょぼいよね。『もうおうちへかえりましょう』って文化系丸出しだよね。でもこのタイトルがまさに書かれている内容と穂村弘自身をしっかり表現してるんだよ。例えば会社の歓迎会がボーリング大会になった時の話。彼はボーリング大会と聞くと決まって憂鬱になるらしいんだ。理由はボーリングが下手とかそういう問題ではなくて、ストライクが出てしまった時の喜び方が分からないからなんだよ。

その場で飛び上がって手を叩いたり、くるっと振り向いてガッツポーズをしたり、待合い場に駆け戻ってきて同じレーンの人々とぱんぱん手を叩き合ったり、そういうことが私にはできないのである。

気持ちは分からなくはないけど、なんて繊細なんだろうって思うよね。こういった一面は、芸人で作家のピースの又吉直樹とすごい被るんだよね。実際、又吉さんは穂村弘のエッセイが凄い好きらしくて、対談とかもしてるんだ。お互い通じ合うものがあるんだろうね。

■僕もツナ男になりたい

あとこのエッセイで、「ツナ男」という男が出てくるんだ。「ツナ男」は会社の昼休みに、おもむろにツナの缶詰を開けて、その中にマヨネーズをネリネリっと入れて、お箸でグルグルかき混ぜて、食パンの上に乗せて食べる男で、その場違いさと独特なオーラに女性社員から気味悪がられているんだ。穂村弘はこの「ツナ男」の行為が女性に嫌がられている理由が分からず、自分も「ツナ男」のオーラを纏っているんだろう、とその不器用さを嘆くんだ。確かに会社のデスクでやる行為ではなくて、周りが引くのは分かるけど、僕は「ツナ男」がすごい魅力的に思えるんだよね。「だってツナマヨ好きなんだもん」と言わんばかりに、機能性に割り切って考えてるところがとても良い。ツナマヨが食べたいと思っても、普通の感覚だったら他者の目が気になってこんなことはできず、ランチパックを買ってくるしかないし、僕もそうしてしまう。けど彼は堂々と缶詰を開けている。とても独特で、絶対話したら楽しい。是非お友達になりたい。そして僕も「ツナ男」になりたい。

こんな感じで面白い文章が沢山書いてあるんだよ。『君がいない夜のご飯』とか、『絶叫委員会』とか、高クオリティの面白いエッセイ集を沢山出してるから、是非読んでみて。」


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