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Amazonはなぜ生成AI領域でここまで遅れを取ってしまったのかの仮説

Amazonがここまで生成AI領域で遅れを取っている理由は何だろうと考えてみると、逆説的に生成AI領域での勝ち筋のヒントが掴めるのではないかと思って徒然に考えてみた。

発明企業を標榜するAmazonがここまで出遅れてしまっている理由としては、以下の3点が大きいのではないだろうか。

1. ファウンダーのコミットの薄さ

Microsoftには、今回のAI革命をGUI以来の衝撃と称するビル・ゲイツが復帰してきていて、OpenAIへの巨額の投資によって自社製品の次世代化やクラウドレイヤーのAzureのシェア拡大を実現するという、リスクも大きいが得られる果実も大きい領域で大胆な動きができている。

Metaも社名にするほど注力していたメタバースからZuckもBozも軽やかにAIにシフトできたのはZuckが陣頭指揮を取っていることが大きいと思われる。

Amazonも一応、Hugging FaceやStabilityAIとの提携によるAWSの収益拡大の動きを取ってはいるが、ミドルリスク・ミドルリターンの動きに留まってしまっている。

2. Creation的なサービスの不在

MicrosoftにはWord・パワポ・メールをはじめとして、人間がなにかをCreateするという行為が多分に含まれる製品を多く抱えている。

Googleも同様。

MetaもFacebookやInstagramへの投稿でCreation要素の多いサービス群を抱えている。

こうした企業は短期的にも自社製品に生成AIを組み込むインセンティブが強い。

一方でAmazonには、意外とCreation要素のあるサービスが少ない。

Amazonのセラーの効率化に一部生成AIは使えるはずだが、現状生成AIで出せる精度は80%前後なのでToBで使うには価値がまだ少し早い段階ではある。

そのため、Amazonは短期的には自社製品に生成AIを組み込むインセンティブが弱く、それによって出遅れてしまっている感は強い。

3. 元々のAI研究費の少なさ

これを言っては元も子もないが、Meta、Google、MSなどと比べると明らかにAmazonはAIへの投資額が少なかった。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN056Q90V00C23A4000000/


ただし、今回のMSのように優秀なLLMをつくる外部のスタートアップのAPIを導入するような動きは十分にできたはず。

ではそれをなぜやらないかというと、ここでもこれまでの投資戦略的にめぼしいスタートアップは既に抑えられてしまっていたことが大きいと思われる。

MSによるOpenAI獲得はいわずもがな、次点で思い浮かぶのはAnthropicだが、これはGoogleが巨額の出資をしてすでに抑えられてしまっている。

以上、こうした現時点での経営者のコミット度合いの違い、製品ポートフォリオ特性上の短期のインセンティブの弱さ、これまでの投資戦略のツケが回ってきた、という3点でAmazonは昨今のAI戦争に乗り遅れてしまっているんだと思う。

さいごに

こんな感じのことをたまに考えて発信したりしているので、興味ある方はぜひフォローしてみて頂けると嬉しいです。


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梶谷健人 / 新著「生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方」
AIやXRなどの先端テック、プロダクト戦略などについてのトレンド解説や考察をTwitterで日々発信しています。 👉 https://twitter.com/kajikent