【こうばを訪ねて vol.7】時代に合った、ものづくり。思いを共にする“駆け込み寺”
金属加工品の一大産地、新潟・燕三条で30社以上の工場と一緒に家事道具をつくる、家事問屋。毎日の暮らしの「ひと手間」を助ける道具をお届けしています。
私たちが大切にしていることは、道具と共に、つくり手の想いもみなさんへ届けること。
そのために日々工場を訪ねて、既存製品の反響を共有しながら、新たな製品づくりを進めています。
今回訪ねたのは、家庭雑貨を中心に製造を行う株式会社オダジマ。深型フライパンの先駆け「レミパン」を始めとする多くの大ヒット製品、ロングセラー製品を手掛けています。
家事問屋でも「ホットパン」「パニーニパン」「フライパンカバー」「ベーコンプレス」など、多くの製品を製造していただいています。
「困ったときは、ご相談」。家事問屋が“駆け込み寺”と呼んでいる株式会社オダジマの2代目社長、小田島智博さんにお話を伺いました。
東京で就職し、Uターンで家業へ
―小田島さんは2代目の社長ということですが、会社へ入られたときのことから教えてください。
高校卒業後に、東京で家庭用品を扱う問屋さんに就職しました。昔から人が好きだったので、営業職に就いて、関東一円を飛び回っていましたね。
でも、私は家業がある家の長男ですから、心のどこかに「いつかは継ぐことになる」という思いは持っていました。
20歳の頃にたまたま帰郷することになり、当時バブル後期で人手不足だったオダジマに入社することにしました。
―(株)オダジマさんは「レミパン」をはじめとするヒット製品・ロングセラー製品が多いですよね。独自性のある製品に定評がありますが、それは創業からですか?
もともと、先代である私の父親の時代から、業界では「雑貨」と呼ばれるキッチン小物の製造を行っていました。燕三条は金属加工の一大産地として発展してきたので、先代の時代から40年以上作り続けています。創業時に販売をはじめたプリン型の小型容器は今も作っていますよ。
下村企販との「独り立ち」初製品が大ヒット。ものづくりの自信に
―(株)オダジマさんと弊社は、家事問屋が生まれる前、先代時代からの長いお付き合いですよね。
はい。下村企販さんとは創業時からの付き合いです。私が若手社員だった頃から下村さんには可愛がってもらいましたね。忘年会や納涼会にもよく呼んでいただきました。
今でこそいろいろな製品開発に携わらせていただいていますが、私が初めて一人で請け負った案件が、下村さんのシステムキッチン対応のガラスのレンジガードでした。
―そうだったのですね。20年近く経った今も売れ続けている、ロングセラー製品です。
その製品が売れてくれたおかげで独り立ちをする自信になりましたから、特別な思いがありますね。家事問屋を立ち上げた久保寺さんも、彼が入社した頃から知っていて、家事問屋の立ち上げ前から下村さんでやりたいことを聞いていました。
家事問屋が立ち上がった後、なぜかドイツの展示会にも同行することになって(笑)。今となってはいい思い出です。
「あんなに苦労したのは初めて」。一度は完成を諦めた、家事問屋のホットパン
―ご協力いただいた「ホットパン」は、「開発ストーリー『ホットパンが生まれるまで』」でも取り上げましたが、小田島さんにとって、あらためてどんな製品でしたか?
後にも先にも、「ホットパン」ほど大変だった製品はないですね(笑)。開発に3年半かかりましたから。開発ストーリーの時にも話しましたが、蝶番の部分に苦戦して。
実は途中で一回、諦めかけたのです。「この程度のものを小泉誠さん(家事問屋に携わってくださっているデザイナーさん)の仕事として出すわけにはいかない」って。
半年後に開発を再開して、なんとか完成にこぎつけたのは良かったですが、次はこだわりすぎて値段がだいぶ高くなってしまったのです。しかも、3年半の間にホットサンドブームも落ち着いてしまった。
「こんな値段で売れるのか?」という不安が押し寄せました。心が休まる暇がなかったですね(笑)。しかし、ふたを開けたら、売れてくれた。ブームで消えないものづくりのスタンスを再確認できたという意味でも、「ホットパン」は私にとって特別な製品です。
出し抜くのは嫌。願うことは、産地の共存共栄
―小田島さんの産地への想いをお聞かせください。
「地域のみんなで共存共栄していきたい」という気持ちは昔から変わらないですね。何事も「持ちつ持たれつ」。出し抜いたりするのも嫌だから、競合するなら譲ってしまいます。
製品の優劣ではなく、「価格」で判断されたくないですね。だから、私も価格で判断しない。協力会社さんには値下げ交渉というのはしません。協力会社さんも大切にしていきたい。
価格で比較されないためには、独自の価値で勝負していかないといけない。
ものづくりを取り巻く環境はどんどん変化していきますが、私たちはこれからもこの価値観を大切にしていける規模で、長く愛されるものづくりをしていきたいですね。地域全体で良くなっていければいいと思っています。
―(株)オダジマさんは3兄弟で会社をうまく経営されていますが、どんなことを意識されていますか?
お互いの領域に口を出さないことです。必ずケンカになりますから(笑)。話し合って役割分担をしたわけではありませんが、自然とうまく分かれていますね。
家事問屋を運営する下村企販と先代社長からのお付き合いで、家事問屋の立ち上げ時から支えていただいているパートナー、(株)オダジマさん。
ブームで消えない、独自の価値を持つ製品づくりを追求するという志を共にする盟友的存在です。
(株)オダジマさんと家事問屋が分かち合うのは、長く愛され、価値あるものづくりによる共存共栄の思い。これからも手を取り合って、共に長く愛される製品づくりに取り組んでいきます。
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〈取材協力〉
株式会社オダジマ
〒959-1228 新潟県燕市佐渡122-2
https://www.odajima.jp/
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