【猫小説】『メニー・クラシック・モーメンツ』第1章:忌まわしきもの ①
「一緒に暮らそうか?」
有楽町のオイスターバーで、牡蠣をたらふく食べたその帰り道、有季はそんなことをさらりと言った。
「暮らすって、同棲ってこと?」
「そう」
突然の「同棲しようか?」発言に、心の海は波立った。それはもうテトラポッドを乗り越えて、埠頭が海水で水浸しになるほどに。
ゲイにとってパートナーと同棲することは「結婚」とほぼ同義だと言われている。つまり「同棲の誘い」=「プロポーズ」されたようなものなのだ。そんな人生を左右する重大な発言ですら、蘊蓄を話すのと変わらない温度で言ってのける才能が、彼にはあった。
「シュンが乗り気じゃなかったら、無理しなくてもいいんだよ」
「別にしたくない、っていうわけじゃ、ないんだけど…」
正直、戸惑っていた。
なぜならば、以前、付き合っていた男性と同棲(半同棲!?)がきっかけで別れてしまったという、苦々しい過去があったからだ。
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