見出し画像

発言が終わらないメーターについての終わらない会議

この記事は何?

“女性の多い会議”は本当に“時間がかかる”のか?———

2021年2月13日にリリースした「発言が終わらないメーター」
この記事は、それに対する反響をもとに、開発した当時の議論を公開し現在思っていることを記録したものです。

シビックテッカーとしてアクションを

2021年2月、ジェンダーについてのビッグイシューが勃発しました。
それは当時日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で名誉委員の森 喜朗氏による発言に起因するものです。
私たちherstory*のメンバーは、何かアクションを起こせないだろうか?と緊急会議を開きました。

* herstory......Facing the Ocean(台湾・香港・韓国・日本)のなかでジェンダーに関する課題に取り組む活動

さて、シビックテックらしいアクションとは何か——

そこで以下のようなアイディアが出ました。

- Twitterに過去出てきたジェンダーに関する#ハッシュタグアクションのstoryをherstoryとして載せていく
- Twitterのワードクラウド
- 比喩で伝える動画
- データの動画化

しかし、どれもピンとくるものはありませんでした。一目で見てメッセージを伝えるには難解になりそうだと思いました。なにより、ユーモアとウィットに富んだアプローチがしたい。そしてネクストアクションに繋げるにはどうしたらいいか。
するとメンバーの一人が「こういうの作りたい」と提案したのが、発言の時間を測るストップウォッチです。Code for Australiaが3年前に作ったWebアプリを思い出したのです。何人かが「今の日本にこそ、このアプリが必要だ」と発言しました。

そこからは毎晩Zoomで集合し、怒涛の開発を行いました。結果、森氏の発言から10日ほどでリリースに至りました。
リリース前日、森氏は東京五輪組織委員会会長の辞任を発表し、私たちメンバーもニュースを注視していました。しかし「ジェンダーの問題は今回に限ったことではない。私たちは淡々と進むべき。」との考えに至り、翌日言葉通り淡々とリリースしました。

私たちの2月の軌跡を記しておきます。

画像1

企画書

緊急会議を開いた2月4日に mamisada さんが書き上げた企画書が今振り返ってみてもよくできているので掲載します。

画像2

画像3

画像4

画像5

画像6

画像7

画像8

画像9

※実際は「Twitterアカウントでログイン」は実装しなかった

画像10

反響

リリース直後はさまざまな反響をいただきました。その中で代表的な2つの意見について取り上げようと思います。

「男女2択のみの表記でいいのか」

「ノンバイナリーの性別について、性別の押し付けがなされないか」といった意見や、一方で「アウティングや意図しない性に対する問題発言を助長しないか」といった意見がありました。
そこで私たちは代替案を考えてみました。

- 男性 / 女性とノンバイナリー
- 男性(he) /女性など(she,they)
- 漢(おとこ) / 漢以外
- 女性 / 女性以外

これらはCode for Australiaのアプリにある「a dude」「not a dude」(意味合いとしては「野郎 / 野郎以外」)を参考にしています。

特に「女性 / 女性以外」については以下が懸念されました。

- これにはノンバイナリーが男性側に入ってしまう
- 今回においては、女性という表示自体は下げたくはない。
- ただこれだと今回のイシューのみになってしまう懸念
- 森元首相の「女性が喋ると…」に起因するので残してはおきたいけど

また、第3のボタンを追加するとしたら?ということも考えました。英語圏で使われている第3の呼び名としては「they」があります。しかし、第3のボタンを設置することで操作が複雑になるだけでなく、「あなたはtheyですか?」と確認することや、話題を扇動することが適切なのだろうか、という懸念があります。
さらに、日本ではまだ「they」の意味が一般的ではなく、それにあたる適切な日本語がありません。

「性差ではなく“個人”が大事なのでは」

「性別の区別ではなく、個人が大事」という意見、かつ「発言の時間(量)ではなく、内容に重きをおくべき」という意見です。
これについては、まず個人の発言内容を“誰が”判断するのか、という議論になると思っています。結局その判断を下すのが、管理職階級の大多数を占める男性であるなら、そこには間違いなくバイアスがかかるはずです。
「発言が終わらないメーター」はあくまで気づきを得るためのシンプルなツールです。(たぶん、個人の発言を促すツールは別のものとなります。)具体的な施策についてはネクストアクションに移っていきたいところです。

恒常的に続くジェンダー問題

Code for Australiaのアプリは「男性はしゃべりすぎていませんか?」「女性は黙ってしまっていませんか?」という世界共通のジェンダーイシューを動機としています。この3年前のアプリが今でも存在している意義というのはあると思います。
私たちの開発のきっかけは森氏の発言でしたが、もっと恒常的に存在するイシューに立ち向かうきっかけになってほしいと願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?