Hiroki TAGA

廻窯舎代表。陶芸家。

Hiroki TAGA

廻窯舎代表。陶芸家。

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陶芸進化論ch1:ノイラートの船

土をこね、立ち上げ、潰し、伸ばし、削り、乾かし、焼き、釉薬を施し、また焼く…、いくつもの工程を経て陶磁器は完成を見る。作陶とはなんと手間を取る行為か。繁忙期には、窯から出てきた素焼きを見て、二度も焼いていられるか、なぜ一度で一人前にならないのだと、なじりたくなる。 だから陶芸は面白いと言う方もいれば、伝統的に決まっていることだからと納得する方もいるだろう。しかしながら、ここではあえて、そもそも”何故なのか”と考えてみたい。陶磁器を定義するものは、おおよそ材料とプロセスであろ

    • 植物研究者が「木葉天目」を考える

      1. 木葉天目の魅力と歴史 黒釉が塗布されたおおらかな局面に金色の木葉模様、それは微細な葉脈までが写し取られている。この奇抜なデザインの茶碗は「木葉天目茶碗」と呼ばれている。 木葉天目は中国江西省 吉州窯で焼かれたものである。吉州窯といえば鉄釉の上に灰釉を重ねることによる鼈甲の発色が美しい玳玻天目茶碗を産んだ窯であり、木葉天目もこの玳玻天目の技術の延長線上にあることは想像に難くない。(写真は東洋陶磁美術館収蔵の一品(重要文化財)) 2. 木葉天目の再現 数多の陶芸家が木葉

      • 土・釉の調合 -Excel計算シート公開-

        1.陶芸を科学する難しさ 陶芸を支えているのは文化的要素だけではない。陶磁器が焼きあがるということは化学と物理によって支配される現象であり、陶芸の理解には多かれ少なかれ科学的アプローチが必要になる。  陶芸に関する科学本はいくらか出版されているが、陶芸の実際と基礎科学理論とを按排良く説明してくれるものは意外と少ない。つまり、ゼーゲル式と焼成結果を1:1対応させていくだけのものは実際の調合を知るには良いが、なぜその式が導出されているのかという見方に欠けており応用性が乏しい。逆に

        • 透ける粘土を求めて

          僕が3年ほどの期間で試した『透光粘土』についてご紹介。 1.磁器との違い そもそも透ける焼き物として磁器があります。僕は透光粘土を作るにあたって、磁器との差別化のために二つの条件を課しました。 条件1:基本成分の大部分が粘土(土物)である 条件2:厚さ5mm以上でも透光性がある これらの特性を持つ透光粘土は象嵌や練り込み技法による製品化が容易であり、複雑な形のオブジェ等にも応用できると考えています。 2.土が透ける仕組み まず、なぜ磁器は透けるのでしょうか。磁器は一

        陶芸進化論ch1:ノイラートの船