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【ブックレビュー】 『トム・ソーヤーの冒険』 マーク・トウェイン|身近に隠れた冒険の数々に、あなたも気づけるといいな。

今回のブックレビューは、マーク・トウェインの名作『トム・ソーヤーの冒険』です!

普段読書をしないという人でも、題名くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか!

そんなトム・ソーヤーの冒険、僕も名前くらいは知っている勢だったのですが、、

内容はまさかまさかのものでした…!

そんな一冊を今回はご紹介します!

  

『トム・ソーヤーの冒険』のファーストインプレッション

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トム・ソーヤーの冒険を読んで最初に感じた感想は、

こんな話だったのか!

というものでした!

勝手なイメージから、

「トムと愉快な仲間たちの大冒険!」

みたいな内容で、大海原やジャングルを探検するのかと思っていたのですが、、

まぁ、「トムと愉快な仲間たちの大冒険!」ではあったのですが、

読む前のイメージとは随分と違う内容でした。

というのも、

この『トム・ソーヤーの冒険』はもっともっと日常を描いた物語なのです。

1800年代のアメリカの田舎町が舞台で、

そんな"閉ざされた世界"に住むトムが繰り広げる、

"日常の中の非日常"、すなわち"大冒険"を描いた物語なのです!

  

『トム・ソーヤーの冒険』のあらすじ

主人公「トーマス・ソーヤー(トム)」は、ミシシッピ川のほとりの自然豊かな小さな町で弟と叔母と暮らす少年。

『トム・ソーヤーの冒険』はそんなトムが、

時に学校の友達たちといたずらをしかけ、

時に気になる女の子とのやりとりに喜怒哀楽し、

そして時に親友のハックルベリー・フィン(ハック)をはじめとする仲間たちとともにさまざまな冒険を繰り広げる物語です。

この「冒険」という言葉が指すものこそ、

トムたちが暮らす村でのお話や、

村から少し離れた場所での「数日間の家出」や、

たまたま道に迷ってしまい「冒険になった」

というお話が中心であり、

「10歳くらいの子供たちからすれば大冒険なお話」

という“非日常な日常”を描いた物語になっています。

ですが、

今の日本の小学生(のみならず世界中の子供たちも(笑))からしたら相当やんちゃなことをしているのは間違いないので、

この“絶妙な非日常さ具合”が、とてもほほえましく感じられ、

そして現代を生きる僕たちに教訓を与えてくれる内容となっています。

舞台は1840年頃のアメリカ合衆国ミズーリ州セント・ピーターズバーグ(ミシシッピ川流域の架空の町)という設定で、

『トム・ソーヤーの冒険』の大部分は、

作者マーク・トウェイン自身が少年時代に経験した出来事や友人の身に実際に起きたお話。

作中に語られているいくつもの「迷信」は、すべて当時の子供たちが信じていた迷信だそう。

ちなみに主人公のトムは、

トウェインの3人の友人を融合させたキャラクターとしても知られていますよ!

 

『トム・ソーヤーの冒険』の感想

率直な感想は「おもしろかった!」ですね!!

アメリカ文学の名作『ライ麦畑でつかまえて』と『グレート・ギャツビー』は合わなかった僕ですが、、

『トム・ソーヤーの冒険』はとても楽しむことができました!
(村上春樹が訳出してないからかも。(笑)詳しくは『グレート・ギャツビー』のブックレビューにて。。)

トムたちが繰り広げる“小さな大冒険“、ほほえましい日常、そんな日々に刺激を加える事件。

本の厚みからして結構なお話の長さなのですが、

飽きないようさまざまな場面で絶妙に話が展開していくよう組まれていて、

そのどれもが楽しめる、そして伏線になって繋がっている。

量の割にまったく苦を感じず、"スッ"と物語の世界に入り込んで読書を楽しむことができました。

それもこれも、

さすがは元々は少年・少女を対象にした文学、ということなのでしょう。

非常に読みやすい

小難しい言葉や言い回しはほぼ皆無であり、

上述のように日常を描きながらも飽きにくいよう、構成にも工夫がなされているように感じました。

主人公のトムや中心人物であるハック、そしてトムと恋仲のベッキーなど、

良い意味で“10歳くらいの子供たちらしい”、実にイキイキとしたキャラクターたちによって物語が展開しているように感じました。

少年・少女ならではの単純さやヤキモチが実にかわいらしく、懐かしく思える場面さえありましたね!

挿絵の効果もありますが、

そのシーンが頭に思い描きやすい、妙なリアル感も感じました。

このあたりは、作者マーク・トウェインの実体験がもとになっているところの影響かもしれませんね!

  

『トム・ソーヤーの冒険』のメッセージ性

こういう記事を書いているからか、一時期自己啓発本にどハマりしたからか、

どんな本にも"メッセージ性"を求めてしまう傾向にある僕なのですが、、

この『トム・ソーヤーの冒険』はそういうメッセージ性を"主"には置いていません。

ただ、ピンポイントで「おお!」と感じさせてくれるところがいくつかあったので、

ここではその部分を引用とともにご紹介します。

自分でも意識しないうちに、トムは人間の行動原理に関わる重大な法則を発見したのだった。すなわち、大人でも子供でも何かを欲しくてたまらない気持ちにさせるには、それを手に入れにくくしてやりさえすればよい、ということである。(中略)「労働」とは人がやらねばならぬことであり、「遊び」とは人がやらなくてもよいことである。
(中略)
 イギリスでは、夏のあいだ、裕福な紳士たちが四頭立ての乗り合い馬車を駆って、決まった経路を30キロなり50キロなり走らせると聞く。その特権を行使するのに相当な額の金がかかるからである。しかし、もしもこの行為に対して労賃が支払われるとなれば、それは労働ということになり、紳士たちはやめてしまうにちがいない。
 - p46~47より

相応な金額を支払うことで「遊び」として「手に入れにくいもの」と感じさせれば、人はそれが「ほしい」と感じるもの

ということですね。

しかも、

もし同じもの・同じことでも賃金が支払われる「労働」だとしたら、人は本当にそれが欲しいと思うだろうか?(きっと思わないだろう。)

ということも言っているわけで、

これは「まさにその通りだ…!」と思わずにはいられなかったです。

値段が高ければ、それだけ、質はどうあれ「良さそう」と感じるのが人。

あとはその値段に釣り合う魅力があるかどうかですからね。

行動経済学とかにも繋がりそうな部分ですが、、

「物事の価値を本当に自分で決めているのか?」

という事実を突きつけられた気がしました。

口コミ・噂・価格、、

本当にあなたは、ものの価値を自分で決めている、見出していると自信を持って言えるでしょうか。

世の中の評判に靡いていませんか?

  

昔からの習慣というものは、往々にして、正当化の根拠が薄弱なものほど廃止が難しいようである。
 - p89~p90より

「ただ続いてきたから」という習慣は、世の中にはたくさんある。

こと、政治や会社にはなおさら。

そういうものって、冷静に考えれば(考えなくてもわかるものもあるけど)、「いらないでしょ?」ってなるのが多い。

でも、そういうものほど、上の人は残すことに固執する。

まさに現代社会に対する皮肉。

特に、日本社会に対する皮肉に思えて、すごく好きな表現です。

  

(森でのロビン・フットごっこを終えて)
 トムとジョーは元どおりに服を着て、ロビン・フッドの小道具を草むらに隠し、いまの世の中に無法者がいなくなってしまったことを嘆き、失ったものの代わりに現代文明は何を得たと言えるのだろうか、というようなことを論じあいながら森をあとにした。シャーウッドの森で無法者として一年暮す方がアメリカ合衆国大統領として一生暮らすよりずっといいや、というのが二人の一致した意見だった。
 - p148

現代の便利な世の中は、時に息苦しいときもある。

先端技術を得たことで、失ったことはないだろうか?

最先端であることがすべてとは、限らないのではないか?

そんなことを考えさせてくれる一節でした。

  

(トムは団員の制服の格好良さに惹かれて禁酒少年団に入隊した。ここでは酒を飲んではいけないし、タバコは吸ってはいけないし、汚い言葉も使ってはいけなかったのだが、トムは日に日にそれらがしたくてたまらなくなり、結局やめてしまうことになる)
 その結果、新しい発見があった。すなわち、何かをしないと約束することは、まさにそのことをしたくてどうしようもない気持ちにさせる最も確実な方法である、と知ったのである。
(中略)
 もう、酒を飲もうと汚い言葉を吐こうと勝手である。ところが、意外なことに、どっちもやりたくなくなってしまった。要するに、やってよいと言われたら、欲望は萎え、魅力も消失してしまうのである
 - p328~329

一番最初の引用もそうですが、

『トム・ソーヤーの冒険』では、こういう人の行動の真理というか、

人を動かす・動かさないの心の部分についての言及を時々入れているのが、

本当にすごいと思いました。

多分みんな感じている事実なので、わかってはいると思うのです。

実際、「押すなよ押すなよ」は「押せ」のサインになるわけだし、

「〇〇ををするな!」と言われるほどしたくなるというのは、

誰もがわかる感覚なのではないでしょうか。

それをこうして明確に言語化して表現しているのがすごい。

当たり前のことをハッキリと表現するって、

そうそうできることじゃあないと思うのです。

  

(トムとベッキーは鍾乳洞の中で皆とはぐれてしまい、長いあいだ真っ暗な道をさまようことになる)
 こうして、二人はふたたび歩きつづけた。あてもなく、ただやみくもに。とにかく歩くこと、歩きつづけることしかできなかった。少しのあいだ、希望がよみがえったように見えた。なんの根拠があるわけでもない。齢(よわい)を重ね挫折を重ねて心の弾性を失ってしまわないかぎり、希望というものは本来よみがえるようにできているという、それだけのことである。
 - p449

歳を重ねるにつれて、人は諦めやすくなる。

希望を持たなくなる。

夢を持たなくなる。

現実的に物事も進めるのも大切だけど、

それと同じくらい、情熱・夢・アツいものを持つことも大切なのではないか

ちょっと場面的には言いたいことが違うかもしれないけれど、

歳をとって落ち着いてきてしまっていたと感じていた僕にとっては、

耳が痛い一節でした。。

かっこいい大人って結局、

分不相応、どこか子供みたいな心がある人な気がするんですよね。

  

総括

ということで、ここまで今回は『トム・ソーヤーの冒険』をご紹介してきました!

『トム・ソーヤーの冒険』という物語に素直に入り込み、

純粋に物語を楽しむ気持ちがあれば、

どんな人でもおもしろい作品と感じるはずです!

かなり読みやすい作品でもあるので、

本格的な読書に入る前の最後の入門書、

みたいな位置付けにしてもよいのではないかとも思います!

それでいて、

学生、さらには大人が読んでも楽しめるし、どこか懐かしい感じがするし、時には気づきも与えてくれます。

ぜひ『トム・ソーヤーの冒険』、お手にとってみてくださいね! 

★★★★★

  

こんな人にオススメ

・これから読書を習慣にしたいと考えている人

・今までさまざまな本を読んだが飽きてしまったという人

・小さなお子さんに本を読ませたい人

※僕は新潮文庫のものよりも光文社の訳の方が好きでした。多くの出版社から出ている作品なので、本屋で立ち読みして選ぶのも良いと思います!

   

   

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