見出し画像

Vol.2 飛ぶ宝石

 アオサギの大きな翼と優雅な姿に心奪われた幼少期の私。小学校に上がり、人生を変えるきっかけの一つとなるひとりの先生と出会った……。

画像1

 小学校に上がった頃、滑舌が良くなかった私は発音を教えてもらえるところに、学校終わりにちょくちょく通うようになった。最初は恥ずかしくもあり、行くのが嫌だと思っていた。しかし、行ってすぐにその場所が好きになった。なぜなら教えてくださったT岡先生が素晴らしく気が合うのだ。なんせ生き物が大好きで写真も撮る。行けば虫かごに入ったチョウセンカマキリなどという、北海道では目にすることのない虫までいるではないか。こんな場所が自然が好きで育った鳥好き少年にとって楽しくないわけがない。ある時、壁に鳥の写真が貼られていた。それがはじめて認識したカワセミの姿である。エメラルドグリーンの姿は飛ぶ宝石と言われるだけあって止まり木に美しい緑色の鳥がいて、背中からはサファイアブルーの羽根がちらりと姿をのぞかせている。すぐさま目を輝かせ、先生に話を聞いたものである。他にもカマキリの話、ウサギの話、様々な話を聞かせてもらい、その度に全く知らなかった自然界の新たな姿に毎回心躍っていた。

 滑舌もある程度良くなり、その教室に通う最後の日、その先生は2羽のカワセミが写った写真を私に手渡してくれたのを今でも覚えている。大変申し訳ないことに今ではその写真は無くしてしまったが、「鳥と空間を写真に閉じ込める」という写真にしか出来ないことを、この時はじめて知ったのではないだろうか。そして、その写真は今でもまぶたの裏に思い出されている。


つづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?