見出し画像

もしもし?その、ありがとう。

もしもし。起きてる?


いや、別に。届いてほしくはないけど、なんか伝えたくなって。さっき電話したからかな?といいつつ、特別伝えたいこともないんだけど。近状報告でも、ね?聞いてよ。


今日の夜ご飯はごはんと豚肉の炒め物と味噌汁と、ニラ玉的なやつだったなぁ。野菜食べてるかって?いや、うん、もちろん食べてるよ。ちょっとはね、ちょっとは。頑張ってんだから。

キミはいつも美味しそうに食べるよね。給食で出た私の苦手なサバの味噌煮。キミが食べてると食べれる気がしてたんだ。その瞬間だけはね。

それに私の2倍以上は食べるじゃん。前に家に遊びに来たときさ、うちの母ちゃん、キミが喜んで食べるからってずっと食べ物持って来たよね。なんかごめんね。ありがと。


テストお疲れ様。そこそこな順位おめでと。私がいなかったら物理なんてどうなっていたことやら。嘘だよ、キミならできるって知ってたもん。

知ってるよ。

キミのそこそこには、なみなみならぬ努力をしてるってこと。

わからない問題があっても答えを見ないで解き続けて。諦めが悪い笑。とばせばいいじゃんって言っても「いやだ!わかるまでやりたい!」って。夜中まで勉強しててさ、そのまま机でぐっすり。テストでも同じことするから結局間に合わないんだよね、最後まで解き終わらないんだよね。

「悔しい!もっとできたのに…」って涙目になって訴えてきてさ。部活でもそうだったけど本当に負けず嫌い。どれだけ泣いても、ボロボロになっても立ち上がる、そんなきみがかっこよくて心配でした。今も心配だよ。無理せず頼って。お願い。


あ、1個思い出した。

家の方向が真逆だけど、一緒に帰って。私がきみの家まで送っていったのに、話したりなくて私の家まで送ってもらってさ。それでも足りなくて住民センターに行ったことあったよね。2時間近く喋って外は暗くなってて。

形にならない、曖昧な未来だったよね。あの時の話。

夢というまで固まってなくて、こんなことがしてみたいなぁとか本当はこう思ってるだとか。何年も一緒にいたのに、あのとき初めて知ることいっぱいでさ。普段真面目な話なんてしないから新鮮で、私もきみも本当はクソ真面目な人間なのに笑。ドキドキしながら本音を言って。きっとキミもそうだったよね。

どう思われるか、怖かったよね。わかる。

2人ともキャーキャー騒ぐのは苦手だったし(騒ぐのに合わせたけど)、本音なんて話せる人がいなくて。それでも、キミがいたんだけどね。お互い様だった。

明日が怖かったよね、私たち。

渋谷で美容師になるだとか、生きておけばどうにでもなるだとか。そんなこと言ってる友達が見る明日とは、違ってたね。大人びてたというか、諦めてたというか。どうにもならない自分と向き合ってたというか、逃げていたのかもしれないけど。

自分に才能がないのもわかってて、乗り越える努力ができないのもわかってて。思い描く将来なんてどこにもないのにさ、あの時キミと描いた世界が今でも輝いているんだ。もう2人ともその通りにできないけれど。

漠然としてるからこそ焦ってて。周りと比べて悲しくなって。明日なんかこなきゃいいと思ってた、私はね。このまま止まればいいのにって。

それでもさ、キミは違った。たぶん。

不安でいっぱいだったのに、不安だからこそ動き続けて。がむしゃらで、まっすぐで。キミはさ、早く進んでくれって思ってたのかな。そんな気がする。


ずっとさ、憧れなんだよ。


キミは私のことを素っ気ないなんて言うけど。素っ気なくなってるのはキミだけなんだよ。ほかの人には伝えてるけど、きみには伝わっちゃうんだよ。だから、安心してるから、素っ気ないんだよ。

何気ない話を聞いてくれてありがとう。

キミの友達がとってくれたキミの写真を送ってくれてありがとう。

私に回ってこない女子の秘密教えてくれてありがとう。

あ、あの時。キミと友達が喧嘩になったとき、原因つくってごめんね。

給食の野菜食べてくれてありがと。キミがいないから頑張ってるんだ、私。

ハグしてくれてありがとう。嫌がってたけどさ、すごい嬉しかったんだよ?

こんなに、もっと、溢れてるんだ。


キミがボケで私がツッコミ。たまにキミがツッコミで私が天然ボケだけど。しっかりしてるのはどっちかなんて聞かれたらお互い様ですとしか言いようがないよね。(ドジしたとき助けてくれてありがと)

キミと私は正反対。でもすごく似てて。

それでも。

キミは、キミの道を歩きだした。

さっき電話しててさ、不安そうなキミの声を聴いて、私が不安になった。

不安の中に力強さが見えたんだ。私の中にはない、力強さ。

あの時、2人で描いた世界じゃないけど。キミが描く世界を歩くんだよね。進むんだよね。

だからさ、

私も、私の道を歩くよ。

怖いよ。みんなやキミと離れて知らない場所に一人ぼっち。自分から離れていったのに、寂しいよ。寂しくなんかないって言ってたけど、本当はめちゃくちゃ寂しい。

キミと話していると、甘えてしまいそうになるんだ。

笑い飛ばしてほしい失敗も、誰にも言えない話も、テストの悪い点数も。聞いてほしくて。キミしかいなくて。

でも、私も進むから。

きみの道とは方角が違うかもしれないけど、どこかで交わるかもね。そうだといいね。楽しいね、それ。そうなればいいなぁ。


不安だけど、進もう。私たち。


もしもし?

充電切れのスマホから返事はないけど、きっと気持ちは届いてるから。読んでほしくないなぁ。たぶん読まないだろうけど。ニヤニヤしながら連絡しないでね。知ってるだろうけど、そういうの苦手だから。照れて話せなくなるんだから。

夏休み、キミは部活で忙しいんだよね。私は長いし暇なのに。キミも隣町に引っ越しちゃったから会えるかわかんないけど。会いたいな。頑張れ。

いつも通り、キミから切ってよ、電話。

私、終わらせるのが嫌だからさ。一人になって寂しくなるから。キミが切って。うん、ありがと。

頑張ってね。いや、無理しないでよ。私も頑張るから。頑張るから。


したっけね。じゃあ、また。ありがとう。



                               KaiTO


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?