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「前例のない攻撃」イスラエル地上作戦と今後の展開


2023年10月7日早朝、パレスチナ自治区・ガザ地区を実効支配するイスラム主義組織・ハマスの軍事部門カッサーム部隊がイスラエル各地に向けてロケット弾を多数発射し、ガザ地区に隣接するイスラエル南部各地に戦闘員を侵入させて、イスラエル人多数を殺傷し、多数を拉致してガザ地区内へ連行した。ハマスはガザ地区からのロケット弾発射を続けている一方、イスラエル軍は戦闘機・ドローン・砲兵を用いてガザ地区を空爆・砲撃している。
現時点で、イスラエル軍は予備役30万人を招集した地上作戦実行に向けた準備を進めている。

前例のない攻撃

今回のハマスの攻撃は、イスラエル側に極めて多くの死者が出し現時点でイスラエル人の死者数は1千人を超えた。
1973年の第4次中東戦争以来、50年ぶりであり、ここまで民間人の被害が出たことは前例にないのだ。
イスラエル軍の連日の反撃により、ガザ地区のパレスチナ人の死者数も徐々に増えて900人を超えたとされるが、現時点で、イスラエル人とパレスチナ人の死者数を比較すると、イスラエル人死者数の方が多い。近年、イスラエルの軍事的優位が確立しているため、双方間の紛争ではイスラエル側の死者数が圧倒的に少ないことが一般的であり、例えば、2014年7月から8月にイスラエル軍がガザ地区のハマスと交戦した際の死者数は、イスラエル人約70人、パレスチナ人2千人以上だった 。敵対勢力よりイスラエルの方が死者数が多い事例は、おそらく今回が初めてである 。


ハマス側の意外な侵攻ルート

今回の侵入ルートは、従来の地下トンネルだけではなかく、、ブルドーザーで境界線上の金網フェンスを破壊、パラグライダーに乗って上空から、ボートに乗って海上から 、と陸海空あらゆるルートで多数の戦闘員が侵入した。こうしたルートと10月7日がユダヤ教の祝日シーズンの最後の土曜日「安息日」であった事により、軍人を含む多くの人々が休暇を過ごしていた。
これによりイスラエル側の初動対応が遅れ、民間人等の被害拡大に至った。50年前の1973年10月6日の第4次中東戦争開戦においても、ユダヤ教の祝日に合わせてエジプト軍とシリア軍がイスラエル軍を奇襲した。
当初、イスラエル軍は劣勢に陥ったとされる。今回ハマスは、それと似た手法を採用したと指摘されている 。
これがロケット弾による攻撃だけであれば対応できたが、これほどのハマス戦闘員の侵入は想定外であったであろう。

イスラエル軍の地上作戦と課題

現在、イスラエル軍はガサ地区に対する地上作戦の準備を進めており、着々と陸上部隊の準備、空軍による精密爆撃を強めている。
イスラエル国内でも「ハマス殲滅」という意見が大多数を占め、アメリカも弾薬の供給をすでに決定しており、本日10月13日にもイスラエルは国連に対して24時間以内にガサ地区北部から住民は退避するよう発表した。
しかし、同日ガサ地区を実効支配しているハマスはガサ地区北部地域の住民に対して避難しないよう発令し、民間人110万人の退避は不可能といえる状態となっている。
これにはハマス側が住民を盾に使い、イスラエル軍の作戦を妨害する狙いがあり、地上作戦を進めるイスラエルは厳しい戦いとなることは想像に難くない。
もう一つ問題なのがハマス側のゲリラ戦と都市部の制圧である。
地上作戦ともなると地上兵力をガサ地区に投入する必要があるが、都市部の制圧となるとハマス戦闘員によるゲリラ戦が展開され、進撃する上で大きな脅威となる。
空爆で発生した瓦礫はゲリラ戦や狙撃をするハマス戦闘員の絶好の隠れ場となり、地下トンネルと連携して使用されれば進撃は容易ではない。
そうした中で地上作戦を進めていくイスラエル軍は大きな人的損害を出すこととなるであろう。

アラブ諸国・西側の動き

イスラエルはアラブの有力国サウジアラビアと関係改善を進めており、2020年に、UAEなどアラブ諸国4国が一気にイスラエルと国交を樹立したため、イスラエルと国交を持つアラブ諸国はエジプトとヨルダンに加えて計6国に増えた。
今回アラブ諸国ではイスラエル・ハマス両方に対する反応はバラバラであり、意見が割れているのが現状であり、今後の動きに注目しなければならない。
アメリカはイスラエル支持を表明し、東地中海に空母2隻を投入、2個空母打撃群が展開する事となる。また、アメリカ海軍特殊部隊シールズが待機しているという情報もあり、イギリスも中東に部隊を派遣する。



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