#6 三浦しをん”愛なき世界”に見る味気ない研究生活の味

※ 画像引用: https://matsue-hana.com/hana/siroinunazuna.html (一番きれいなシロイヌナズナの画像を引用させていただきました．ありがとうございます．)

どうも，しげまです．

今日は日々研究をしている中で，かねてより共感してやまなかった本の話をさせていただきます．

タイトルにある通り，三浦しをんさんの”愛なき世界”．昨年の本屋大賞ノミネート作品です．まぁミーハーな僕なのでノミネートされていたのを知ってこの本にたどり着いた，そんなわけであったのですが，今日は皆さんにも内容と，僕が考えた（日々考えている）ことを知ってほしくてこうして共有します．

かなり長い間読書が嫌いだった僕が本の感想を綴ることなんて二度とないと思っていました．稚拙な内容になりますが，読んだうえで感想を教えてくれると嬉しいです．

日々の研究の鬱憤を晴らしたい，自己満足のための記事．結論言っちゃうと，研究って地味だけど楽しいよ．そんなことを言いたい今日の記事です．

1. 簡単なあらすじ

主人公はT大学博士課程（日本で言うところのドクター）に在籍する女性の大学院生本村さんと，T大学の近くの洋食屋で見習い料理人をしている藤丸くんの二人．本村さんは植物の研究をしていて，自分の研究対象である植物のプリントがされているTシャツを着てしまうような，研究一筋な女性．一方で藤丸くんもこれまで料理に打ち込んできて恋愛に関してまるで経験のない青年．しかし藤丸くんは本村さんの所属する研究室に昼ご飯のデリバリーを繰り返しするうちに，本村さんとよく顔を合わせるようになり，恋に落ちます．

ある日藤丸くんは告白するもの，返事はNo． ”自分は全てを植物に捧げると決めていて，人間を好きになることはできない”．彼女はそう告げて藤丸の告白を断ります．

料理の道で生きることを決断した藤丸くんは，本村さんの主張を無碍にはできない一方で，自分の膨らんでいく気持ちを抑えることができない．一方本村さんも生まれて初めて経験する告白に気持ちが動いていることに気づく．

そんな不器用な二人の気持ちの動きを描いた作品になっています．もし気になる人がいたら読んでみてくださいね．

2. 味気ない，だけど小さな幸せを沢山見つけられるそんな世界

この小説を読んだ感想は，”研究生活における人間の気持ちの動きの再現度が高い”ということです． 

研究生活って本当に地味だと僕は思います．一人で一つの問題に向き合うわけですから，常に自分と向き合うようなそんな気持ちになる．論文読んだり実験したり，植物や，実験器具と向き合い続ける味気ない日々．

だけどそんな日々の中にも喜びは多々あって，例えば実験で自分が仮定したような成果が得られる，仲間との議論の中でブレイクスルーを発見する，先生に褒められる，そんな小さな幸せが心の底から嬉しい．地味だけど幸せ．そんな気持ちになるんです．

その小さな幸せに至るまでの気持ちの動き，そして感情が見事に言葉で表現されていたのがこの小説だった．自分が感じていた感情はこのような形で言葉にできるのか，ということをこの本から学びました．

3. 小説家すごい．

そしてシンプルに小説家ってすごいなと感じました．きっと小説家になる人に理系の方は少ないでしょう．調べたところ三浦しをんさんも文学部卒業で，研究生活なんて経験したことないはずなんです．経験したことない人がこれだけ再現できるその表現力にただただ屈服してしまいました．実際の研究室がモデルになっているらしいのですが，どれほどのヒアリングを重ねたのか，想像することもできません．バックグラウンドも何もかも異なる世界を表現するその語彙力，表現力にただただ感服しました．自分が経験しているからこそ共感できる，という意味では万人に評価される話ではないのかもしれませんが．

4. 悩めるリケジョにみる，小さいだけど確かにそこにある幸せに気づける愛に溢れた物語

辛いな，大変だな，と思ったときにこそ日々の小さな出来事に向き合い，小さな幸せに気づくって大切な生き方だなと思います．

確かに生きていくことはそんなに楽なことばかりじゃない．しんどい時間の方が多いっていう人も中にはいますよね．

好きなことやっていればそれだけで幸せかというとそうでもないし，それでも辛い時間は必ずある．研究はそんな辛い時間の繰り返し．上手くいくことの方が少ないし．

でもそんな時間の中でも何か楽しいことは必ず落ちているし，一個一個小さな幸せに気づいて前向きに生きていく．傍から見たら地味かもしれないけれど幸せ，そんな生き方を胸張って出来たらいいなぁと思いました．

研究って地味だよねって思いながらもやっぱり楽しい，そう思って最近日々暮らしています，ということを言いたいだけの投稿でした．最後まで読んでくれてありがとうございます．