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旅の記録と石川県の記憶② ~まだ弾は残ってる〜

21世紀美術館のエントランスを通ると、
それまでの暑さが強い冷房と瑞々しい館内の空気で
一気に僕を別の世界へと連れて行ってくれた。

パトリック・ブラン 「緑の橋」

 今回開催されていた企画展はアレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」。
非常に多くの人で賑わっていたが、
正直僕にはさっぱりわからないものが多く、少し疲れてしまった。

館内の常設展も見に行ったのだが、こちらはとても楽しめることができた。
特に、沢山の銃を使って組み立てられた「武装解除時計」。
全て本物の銃が使われている。

メキシコのペドロ・レイエスによって生まれたこの作品は
メキシコの銃社会を変えるために、
不法所持者から回収した銃を再利用して楽器にし、時計を組み込んだそうだ。

「武装解除時計」

15分に一回、その時計が鐘を鳴らすのだが(鐘といってもバチバチ、キンキンといったパーカッションのような音)
それがまた非常に陽気なのである。子供が鍋の底をおたまや箸で叩いてイタズラしてるようなサウンドなのだ。

そのギャップも相まってかこの時計の前ではじっと細部を観察していた。
これには今日も、今もこの瞬間にどこかで銃が使われていて
その暴力的なアイテムを平和的な形として生まれ変わらせたいという
作者の意図があるのだろう。
とても強いメッセージが感じられ、ユニークで強烈だった。

今までこのような現代アートの世界と触れ合うことはなかった
僕が今この空間にいることが不思議でしょうがなかった。
コンサートや映画を鑑賞するのとはまた一味も二味も違う。

過去の自分を思い返したり、行ったことのないメキシコはどんな国かと
思いを馳せたり、新たなメロディが浮かんだり。
色々な想像が湧いた。

その他も様々な作品を鑑賞したのだが
やはり最後に観るのは「スイミング・プール」にしようと決めていた。

=続く=


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