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掌編|ユリバラ

ユリ「死んだの?」
バラ「そう見えるね」
妹と兄が、陽光を背に横たわる黒い影を覗き込んでいる。妹のユリはやっぱりそれを「死んでいるな」と考え、可哀想だと感じたから、部屋の隅にあって薄汚れた毛布をばさりと影にかけてやった。毛布をかけられた影はほんの少しだけ膨らんで角を失くし、見た感じが少しばかり柔らかくなった。
ユリ「死んだよ」
バラ「うん。けれど生きていた時とあまり変わらない」
兄のバラにそう言われ、ユリは改めて大きく目を開き、影を見た。変わらないはずはないのに。影は死んだのだから。
ユリ「嫌なこと言わないで」
バラ「嘘の話がききたい?」
バラの言葉に、ユリは黙って頷く。
そのユリの唇を、バラが塞いだ。

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