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クリスマスイブは絶対に家族と過ごさない

クリスマスイブは、そしてクリスマスも、二度と家族と過ごさないと誓っていた。

クリスマスはまだ許されることもあったが、クリスマスイブは絶対に家族で過ごしてきた。

特段クリスマスを大事にしているという訳ではないだろうけど、イベントごとは大事にする家庭だったらしい。

そんなこだわりがあるとは知らず、私が1度クリスマスイブに遊ぶ予定を入れたら、それはもう暴動のような怒られ方をした。

かなり拗ねた。そのことを根に持って生きている。

実家を出た後は、「クリスマスイブも、クリスマスも、意地でも家族と過ごさない」と誓った。

だから去年、実家を離れて最初のクリスマスは実家に帰らなかった。

特に予定はなかったので1人で過ごした。ダイエーでちょっと良さげな惣菜と、ちょっと良さげなチーズを買った。家族で過ごすよりかは全然よかった。

今年も、絶対に家族と過ごさないと心に決めていた。

そしたら12月23日。

朝スマホを見ると、母からLINEが来ていた。

内容は、「妹はクリスマスイブに好きな男の人とデートに行き、クリスマスは仲のいい友達と遊びに行くらしい。」

というものだった。

そういえば、この前実家に帰った時知って驚いたのだが、実家の制度が改正され「クリスマスイブも遊びに行っていい」ことになっていた。

妹はさっそくその新制度にあやかったらしい。

ええ、しかもクリスマスイブは好きな男の人と、クリスマスは仲のいいお友達と過ごすんですか。


勝ち組やないか。

わたしがしてこなかった青春が詰まっていて、クラクラした。

ゴミを捨てに行って、しばらくしても頭から抜けず、無意識のうちに独り言として声に出ていた。

「勝ち組やないか…まじか…勝ち組や」

急に道端でこんなセリフを吐くやつ、気が狂ったギャンブラーだとしか思えない。

仕事へ行くために電車に乗っている間、母から、妹と妹の好きな人に関する追加情報が送られてきた。

「コース料理を予約されてるみたいやで」

なっ……。

コース料理まで…。

てか「コース料理を予約されてる」てなんやねん。港区女子が惰性で男と会う時みたいな言い方すな。

だがしかし、この前妹がその「好きな人」と遊んだ時。昼から遊んで、夜はわざと友達と遊ぶ予定を入れ、一緒にいる時間が物足りないくらいで帰る。という作戦をしていたが、あれは効いたのかもしれない。おめでとう。


そして対する母は、クリスマスイブもクリスマスも1人で過ごすらしい。今年は父がたまたま仕事の関係で家に居ないのだ。

そうか。

じゃあ実家に帰ろうかな。と思った。

思えば産まれてこの方、母と2人のクリスマスイブやクリスマスはなかった。

かなりラブラブの両親だし、今回はたまたま過ごせないだけで来年からはベッタリだろう。

生きているうちに母と2人でクリスマスイブを過ごす機会はなさそうなので、この機会に過ごしておこうと思った。

「生きている間、もう起きない出来事」に弱い。例外になって飛びついてしまう。まあなんやかんや母のことは好きなのだろう。

それにクリスマスイブを各々1人で過ごすのは、さすがに意地を張りすぎな気もするし、母と2人なら「家族」というより、1人の「人」同士が過ごすという感覚に近い気もする。

いつもと同じ路線の電車を、そのままもう少し乗っていると実家には着く。

暴動が起きたあの年のクリスマスイブを思えば、今回の行動は考えられない。時間の経過は恐ろしい。

クリスマスイブ実家に帰るというと母は喜んでくれた。

今年いっぱいで終わる仕事場に着き、それにしても12月23日は普通の日になってしまったんだなあと思った。

たぶん若干マイナスの思考だったので浮かんだのだが、天皇誕生日だった12月23日って、本命ではない人の救いだったのでは。

クリスマスイブや、クリスマスを一緒に過ごせなくても、12月23日の天皇誕生日を一緒に過ごせたら、「とりあえず特別な日には一緒に居れた」と、気持ちを収めることができたんじゃないか。

そしてそれは、本命と遊びの相手が両方いる人にとっても好都合だったのでは。

というか12月23日は(クリスマス)イブイブとか言われていたけど、あれはもう無くなったのかな。

クリスマスの過ごし方って分からない。

どう過ごしていいのか分からなくて怖い。

そんな思い病むものではないはずなんだけど。

付き合っている人が居ても、クリスマスを一緒に過ごす自信がなくて別れるという訳分からん付き合いをしてきたなあ。

だから余計に妹がまぶしい。

職場で流れるラジオが急に大音量になって、Official髭男dismの「I LOVE…」が流れた。

だれや音量いじった人。



そしてクリスマスイブ。

急いで仕事を終わらせた。

クリスマスイブって感じはしないけど、パソコンの右下に12/24の日付を見た時だけはテンションが上がっていた。

クリスマス感を出したいので、家に着くまでに母が好きそうなお酒を2本買った。

良いように勘違いしてくれたかもしれないが、2本で1000円もしていない。澪とチャミスルの2本。あわよくばわたしも飲もう。

家に着いて、赤いチョッキを着たお母さんが迎えてくれたとき、なぜか胸がギュッとなった。

クリスマスイブのメニューは、納豆と、高野豆腐と、チキンだった。

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左の煮物は会話で触れられなかったのでなんとなく食べていない。

2人だからたっぷり時間はあるのに、母は話が終わらないうちにコロコロと話題を変えていた。

最初はお手製の炭酸水とお酢を割った飲み物だったが、しばらくして買ってきたお酒を飲むことになった。

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相変わらず母と父は仲が良く、話をしながら何回もLINEのやり取りをしている。

見せてくれた父からのLINEには「Yes We Do」と書かれていた。

最近の話や、前あった出来事を話しながらすぐに澪を飲み終わり、チャミスルを飲むことにした。

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盛り上がりは加速し、いままで言ってなかった話もした。

お母さんには言えない話もあるし、お母さんにしか言えない話もある。

よく言う表現だが、なんだか家族というより仲のいい女友達と過ごしている感覚だった。

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お菓子をもりもり食べ、お酒はチューハイに変わった。

会話の合間に、妹は全然帰ってこないと言いながら、いまの妹の状況を予測した。

母との会話は途切れることなく盛り上がり、ついに午前様に近づいた頃、妹から、家の最寄り駅に着いたと連絡があった。

わたしも帰らなければならない。どれだけ盛り上がったとしても、やっぱり家には帰ろうと思っていた。

妹が帰る前に家を出て、終電の電車に乗り込む。

あー、わたしはクリスマスイブがトラウマだったんだなと思った。

家族で集まって過ごすと、あのクリスマスイブを思い出す。

楽しいはずのクリスマスは崩れ、家族の存在と視線で、みんなに責め立てられているような気分になる。あのクリスマスイブがトラウマだった。

わたしだってイベントは大事にしていた。クリスマスイブも、クリスマスも、毎年楽しみにしていた。

あの年のクリスマスイブに予定を入れたのは、家族が嫌いだったからでも、家族を大事に思っていないからでもない。

仲が良いようでも、家族でも、伝わらないことはある。

やっぱりまだ、クリスマスイブは家族と過ごせないな。と思った。


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